- ✓ 秋冬の乾燥肌は、空気の乾燥と皮膚バリア機能の低下が主な原因です。
- ✓ 保湿ケアは、皮膚の水分保持能力を高め、バリア機能を維持するために不可欠です。
- ✓ 症状が改善しない場合は、皮膚科での専門的な診断と治療が重要です。
秋冬は空気が乾燥し、肌の乾燥に悩む方が増える季節です。皮膚のバリア機能が低下すると、かゆみや炎症などのトラブルを引き起こしやすくなります。適切な保湿ケアと、必要に応じた皮膚科での治療が、健康な肌を保つために重要です。
秋冬に肌が乾燥する原因とは?

秋冬に肌が乾燥する主な原因は、空気の乾燥と皮膚のバリア機能の低下です。これらの要因が複合的に作用し、肌の水分が失われやすくなります。
秋冬は湿度が低下し、特に暖房を使用する室内ではさらに空気が乾燥します。この乾燥した環境が、皮膚の表面から水分を奪い、乾燥を加速させます。また、気温の低下により皮脂の分泌が減少し、皮膚のバリア機能が弱まることも大きな要因です。バリア機能が低下すると、外部からの刺激を受けやすくなり、肌荒れやかゆみが生じやすくなります[1]。当院の診察では、初診時に「毎年冬になると肌が粉を吹いたようになり、かゆくて夜も眠れない」と相談される患者さまも少なくありません。
皮膚のバリア機能とは?
皮膚のバリア機能は、外部からの刺激(アレルゲン、細菌、化学物質など)の侵入を防ぎ、体内の水分が蒸発するのを抑制する重要な役割を担っています。この機能は、角質層の細胞間脂質(セラミドなど)と天然保湿因子(NMF)によって維持されています。
- 角質層(かくしつそう)
- 皮膚の一番外側にある層で、死んだ細胞(角質細胞)がレンガのように積み重なり、その間を細胞間脂質が埋めています。この構造が皮膚のバリア機能の主要な部分を形成します。
- 細胞間脂質(さいぼうかんししつ)
- 角質細胞の間を埋める脂質で、主にセラミド、コレステロール、脂肪酸から構成されます。水分を保持し、外部からの刺激を防ぐ役割があります。
- 天然保湿因子(てんねんほしついんし、NMF: Natural Moisturizing Factor)
- 角質細胞内に存在するアミノ酸や乳酸、尿素などの水溶性成分の総称で、自らの重さの何倍もの水分を吸着し、保持する働きがあります。
乾燥肌の症状と放置するリスク
乾燥肌は、単に肌がつっぱるだけでなく、さまざまな症状を引き起こし、放置するとさらに深刻な皮膚トラブルにつながる可能性があります。
乾燥肌の主な症状としては、肌のかさつき、粉吹き、つっぱり感、かゆみ、赤み、ひび割れなどがあります。特に、かゆみは日常生活に大きな影響を及ぼし、掻きむしることで皮膚に傷がつき、細菌感染のリスクを高めることがあります。また、乾燥によって皮膚のバリア機能が損なわれると、アレルゲンが侵入しやすくなり、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を悪化させる可能性もあります[3]。当院では、乾燥肌が原因で湿疹化し、さらにかゆみが強まる悪循環に陥っているケースをよく経験します。特に高齢者の患者さまでは、皮膚の水分保持能力が低下しているため、乾燥による皮膚トラブルがより顕著になる傾向があります[4]。
自宅でできる秋冬の乾燥肌対策:効果的な保湿ケア

秋冬の乾燥肌対策の基本は、日々の適切な保湿ケアです。保湿剤の選び方や正しい使用方法を実践することで、肌のバリア機能をサポートし、乾燥によるトラブルを予防できます。
保湿ケアの目的は、皮膚に水分を与え、その水分が蒸発しないように蓋をすることです。入浴後や洗顔後は、肌が最も乾燥しやすい状態にあるため、5分以内に保湿剤を塗布することが推奨されます。保湿剤の種類には、水分を補給する「化粧水」、油分で蓋をする「乳液」や「クリーム」、そして両方の機能を併せ持つものがあります。ご自身の肌質や乾燥の程度に合わせて選びましょう。当院の患者さまには、保湿剤を塗る際に「肌に優しく、摩擦を避けるように」と指導しています。特に、乾燥がひどい部位には重ね塗りを勧め、治療を始めて1ヶ月ほどで「肌のつっぱり感が減った」「かゆみが和らいだ」とおっしゃる方が多いです。
保湿剤の種類と選び方
保湿剤は、その成分や機能によって大きく分類されます。肌の状態に合わせて適切なものを選ぶことが大切です[2]。
| 種類 | 主な成分 | 特徴 | 適した肌状態 |
|---|---|---|---|
| エモリエント | ワセリン、ミネラルオイル、スクワラン、セラミド、ヒアルロン酸 | 皮膚表面に油膜を形成し、水分の蒸発を防ぐ。皮膚を柔らかくする。 | 乾燥がひどい肌、バリア機能が低下している肌 |
| モイスチャライザー | グリセリン、尿素、乳酸、ヒアルロン酸、コラーゲン | 皮膚に水分を供給し、保持する。 | 軽度〜中程度の乾燥肌、日常的な保湿 |
| セラミド配合 | セラミド1, 2, 3, 6IIなど | 皮膚の細胞間脂質を補い、バリア機能を直接的に強化する。 | アトピー性皮膚炎などバリア機能障害のある肌、敏感肌 |
保湿剤を選ぶ際は、香料、着色料、アルコールなどの刺激成分が少ないものを選ぶと良いでしょう。特に敏感肌の方は、パッチテストを行ってから使用することをおすすめします。
日常生活での乾燥対策
- 室内の湿度管理:加湿器を使用し、室内の湿度を50〜60%に保つようにしましょう。
- 入浴方法の見直し:熱すぎるお湯は皮脂を奪いやすいため、ぬるめのお湯(38〜40℃)に浸かり、長時間の入浴は避けましょう。洗浄力の強いボディソープの使用も控え、泡で優しく洗うことが大切です。
- 衣類の選択:ウールなどの刺激になりやすい素材は避け、綿や絹などの肌に優しい素材を選びましょう。
- 十分な水分補給:体の内側からも水分を補給することが重要です。
皮膚科での乾燥肌治療:どんな時に受診すべき?
自宅での保湿ケアを続けても乾燥肌の症状が改善しない場合や、かゆみ、赤み、湿疹などの症状が悪化する場合は、皮膚科の受診を検討しましょう。専門医による診断と適切な治療が、症状の改善につながります。
皮膚科では、患者さまの肌の状態や症状の重症度に応じて、適切な治療法を提案します。問診の際に患者さまの生活習慣やアレルギー歴、家族歴を詳しく伺うようにしています。乾燥肌が原因で発生する「皮脂欠乏性湿疹」や、アトピー性皮膚炎の症状悪化など、病態に応じた治療を行います。当院では、患者さまの肌の状態を直接確認し、適切な保湿剤の選択や、必要に応じて炎症を抑える外用薬(ステロイド外用薬、非ステロイド性抗炎症薬など)を処方します。また、かゆみが強い場合には、抗ヒスタミン薬の内服を併用することもあります。処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。
皮膚科で処方される主な薬
皮膚科では、市販薬では対応しきれない症状に対して、より効果の高い医療用医薬品を処方します。
- 保湿剤:ヘパリン類似物質、尿素製剤、ワセリンなど。これらは皮膚の水分保持能力を高めたり、バリア機能を補強したりする効果があります。特にヘパリン類似物質は、保湿効果に加え、血行促進作用や抗炎症作用も期待できます。
- ステロイド外用薬:炎症が強い場合や湿疹を伴う場合に処方されます。炎症を速やかに抑える効果がありますが、医師の指示に従って適切に使用することが重要です。
- 非ステロイド性抗炎症薬(タクロリムス軟膏、ピメクロリムスクリームなど):ステロイド外用薬が使いにくい部位や、長期的な管理が必要な場合に用いられることがあります。
- 抗ヒスタミン薬:かゆみが強い場合に、内服薬として処方されることがあります。かゆみを抑え、睡眠の質を改善する効果が期待できます。
自己判断で市販薬を使い続けたり、症状を放置したりすると、悪化する可能性があります。特に、かゆみが強く、睡眠が妨げられる、皮膚に亀裂が入る、赤みや腫れが広がるなどの症状がある場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
皮膚科での受診の流れとオンライン診療の活用

皮膚科を受診する際の流れを知っておくことで、スムーズに診療を受けられます。また、最近ではオンライン診療も選択肢の一つとなっています。
一般的な皮膚科の受診では、まず問診で症状や既往歴、アレルギーの有無などを詳しく伺います。次に、患部の視診や触診を行い、必要に応じて皮膚の一部を採取して検査(皮膚生検)を行うこともあります。これらの情報に基づいて診断し、治療方針を決定します。当院では、オンライン診療も導入しており、初診からオンラインでご相談いただくことが可能です。オンライン診療では、まずウェブサイトから予約をしていただき、事前に問診票にご記入いただきます。診察時には、カメラを通して患部の状態を拝見し、患者さまの訴えを詳しく伺います。その上で、適切な診断を行い、必要に応じて処方箋を発行したり、対面診療への移行を提案したりします。これにより、忙しい方や遠方にお住まいの方でも、気軽に専門医の診察を受けられるようになりました。
オンライン診療のメリット・デメリット
オンライン診療は、利便性が高い一方で、対面診療とは異なる特徴があります。
- メリット:
- 自宅や職場から受診できるため、移動時間や待ち時間を削減できる。
- 感染症のリスクを低減できる。
- 遠隔地からの受診が可能。
- デメリット:
- 視診や触診が限定されるため、診断が難しい場合がある。
- 検査や処置が必要な場合は、対面診療への移行が必要となる。
- 通信環境によっては、診察がスムーズに進まないことがある。
乾燥肌の症状が軽度で、すでに診断がついている場合の継続的な治療や、保湿剤の相談などにはオンライン診療が有効な選択肢となり得ます。しかし、症状が重度であったり、診断が不明確であったりする場合は、対面での詳細な診察が推奨されます。
まとめ
秋冬の乾燥肌は、空気の乾燥と皮膚のバリア機能の低下が主な原因で発生します。肌のかさつき、かゆみ、赤みなどの症状が現れ、放置すると湿疹や感染症のリスクを高めることがあります。自宅での保湿ケアとしては、適切な保湿剤の選択と正しい使用方法、そして室内の湿度管理や入浴方法の見直しが重要です。これらの対策を講じても症状が改善しない場合や、悪化する場合は、皮膚科を受診し、専門医による診断と治療を受けることをおすすめします。皮膚科では、症状に応じた医療用保湿剤やステロイド外用薬などが処方され、オンライン診療も活用することで、より手軽に専門的なアドバイスを得ることが可能です。適切なケアと治療を通じて、秋冬も健やかな肌を保ちましょう。
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よくある質問(FAQ)
- Hachiro Tagami, Hiromi Kobayashi, Kenichiro O’goshi et al.. Atopic xerosis: employment of noninvasive biophysical instrumentation for the functional analyses of the mildly abnormal stratum corneum and for the efficacy assessment of skin care products.. Journal of cosmetic dermatology. 2008. PMID: 17173589. DOI: 10.1111/j.1473-2165.2006.00241.x
- Marie Lodén. Role of topical emollients and moisturizers in the treatment of dry skin barrier disorders.. American journal of clinical dermatology. 2004. PMID: 14572299. DOI: 10.2165/00128071-200304110-00005
- Matthias Augustin, Enzo Berardesca, Ulrike Blume-Peytavi et al.. Managing dry skin in patients with comorbidities or with advanced age: unmet needs and roles for products containing potential emollient-plus ingredients.. The Journal of dermatological treatment. 2024. PMID: 38565198. DOI: 10.1080/09546634.2024.2326171
- Ann Davies. Management of dry skin conditions in older people.. British journal of community nursing. 2008. PMID: 18773757. DOI: 10.12968/bjcn.2008.13.6.29456
- プロトピック(タクロリムス)添付文書(JAPIC)
- アレグラ(フェキソフェナジン)添付文書(JAPIC)
- ビラノア(ビラスチン)添付文書(JAPIC)
- デザレックス(デスロラタジン)添付文書(JAPIC)
- リンデロン-V(ベタメタゾン)添付文書(JAPIC)
- ロコイド(ヒドロコルチゾン)添付文書(JAPIC)