アトピー性皮膚炎とOTC類似薬の保険給付見直し

Atopic Dermatitis / Policy Update 2026

アトピーのステロイド外用薬は自己負担が増える?OTC類似薬見直しを2026年9月時点で整理

2026年8月6日、厚生労働省の技術的検討会は、OTC医薬品との代替性が特に高いとした医療用医薬品について、薬剤費の一部を保険外の別途負担とする制度の中間とりまとめを公表しました。アトピー性皮膚炎では、ステロイド外用薬と、ヘパリン類似物質・尿素などの保湿関連薬で扱いが分かれる案です。 2026年9月3日には、日本皮膚科学会、日本臨床皮膚科医会、認定NPO法人日本アレルギー友の会が共同声明を出し、アトピーのステロイド外用薬を『急性増悪時の短期使用が中心』とする整理は診療実態と合わないとして再検討を求めました。この記事は、厚労省の制度案と学会側の意見を混ぜず、現時点で決まっていること、案として示されたこと、まだ決まっていないことを整理します。制度を理由に、いま処方されている薬を自己判断で中止・減量・市販薬へ変更しないでください。

監修: 吉井恭平 アトピー性皮膚炎とOTC類似薬の保険給付見直し 最終更新 2026-09-04

まず押さえたい、3つのポイント

01

対象候補は、OTC医薬品と成分・投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない医療用医薬品77成分

02

制度案は薬剤費の4分の1を保険外の別途負担とするもので、医療機関への受診を一律に市販薬へ置き換える制度ではない

03

中間とりまとめはアトピーのステロイド外用薬を別途負担の対象とする一方、学会等は慢性・再発性疾患の計画的外用と整合しないと反対

制度案を理由に、処方薬を自己判断で止めないでください

この記事は2026年9月4日時点の中間とりまとめと共同声明の解説です。最終的な対象製品、負担額、例外の確認方法などは今後変わる可能性があります。現在のステロイド外用薬や保湿剤は、処方医の指示どおり使用し、費用や継続が不安な場合は医療機関・薬局へ相談してください。

01 / Conclusion

結論:負担増が確定したわけではなく、2026年9月時点は制度設計の途中です

厚労省の中間とりまとめでは、対象となる医療用医薬品を使う場合、薬剤費の4分の1を保険外の別途負担とする基本案が示されています。アトピー性皮膚炎では、ステロイド外用薬は原則として別途負担の対象、ヘパリン類似物質と尿素は、通年かつ毎日の使用が医療上必要と確認できる場合に対象外とする整理です。

ただし、これは2026年8月6日の中間とりまとめです。対象となる個別製品、別途負担の具体的な計算や窓口対応、医療上必要な長期使用の確認方法など、患者さんが実際に支払う段階の詳細は最終的な通知・周知を待つ必要があります。

日本皮膚科学会等は9月3日の共同声明で、ステロイド外用薬を短期使用中心とする制度案に重大な懸念を示しました。今後の検討で内容が変わる可能性があるため、『アトピーの塗り薬はすべて保険から外れる』『今すぐ4分の1多く払う』とは受け取らないでください。

  • 現在は中間とりまとめで、最終運用ではない
  • 薬剤費の4分の1を別途負担とする基本案
  • ステロイド外用薬と一部保湿関連薬で扱いが分かれる
  • 制度を理由に現在の処方を自己変更しない
02 / System Outline

制度案:対象77成分の薬剤費4分の1を保険外で別途負担

2026年6月5日に公布された改正法では、費用の一部を保険給付の対象としない『一部保険外療養』が創設されました。中間とりまとめは、OTC医薬品と成分・投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない医療用医薬品77成分を対象候補として整理しています。

基本案は、対象薬の薬剤費の4分の1を保険外の別途負担として支払う仕組みです。ただし『薬代全体の自己負担が一律25%になる』という意味ではありません。通常の保険自己負担と別途負担の組み合わせは、最終的な制度説明で確認する必要があります。

中間とりまとめは、必要な受診を行い、結果として対象の医療用医薬品が処方される場合の負担を扱う制度だと説明しています。すべての患者さんに、市販薬を使ったセルフメディケーションを一律に求めるものではありません。

2026年8月の中間とりまとめの骨格
項目中間とりまとめの整理患者さんが注意する点
対象候補同一成分・投与経路・一日最大用量が異ならない77成分個別製品の最終一覧を待つ
別途負担対象薬の薬剤費の4分の1窓口での総支払額とは同じ意味ではない
受診必要な医療受診は引き続き確保市販薬への一律変更ではない
例外こども・低所得者・入院患者・医療上必要な長期使用等へ配慮最終的な確認方法を待つ
03 / Topical Steroids

アトピーのステロイド外用薬:中間案は別途負担の対象と整理

中間とりまとめは、外用薬の長期使用を検討したうえで、ステロイド外用薬について『慢性・再発性疾患に使用される場合があるが、急性増悪時の短期使用が中心』として、別途負担の対象と整理しました。

別紙では、医療用とOTCで使用目的が明らかに異なる一部の効能・効果は対象外とされています。しかし、湿疹・皮膚炎に対応するOTC効能があるため、アトピー性皮膚炎へのステロイド外用は別途負担の対象として残る、というのが中間案の読み方です。

この整理は、ステロイド外用薬の医学的な有効性を否定したものではありません。また、いまの処方が直ちに変わることを意味しません。薬の強さ、塗る部位、量、回数を費用だけで自己調整すると、炎症が残ったり再燃したりする可能性があります。

  • 中間案ではアトピーへのステロイド外用は別途負担の対象
  • 医学的な有効性や処方の必要性を否定する整理ではない
  • 現在の塗布量・回数を自己判断で減らさない
04 / Moisturizers

ヘパリン類似物質・尿素:アトピーの通年・毎日使用は対象外とする案

皮膚保湿剤・皮膚保護剤・角化症治療剤について、中間とりまとめは、診療ガイドラインで1年を通じた継続使用の有効性や必要性が明確に示されているものとして、アトピー性皮膚炎に対するヘパリン類似物質と尿素を挙げています。

そのうえで、これらを通年で使用し、医師が毎日継続して使うよう指示している場合は、別途負担の対象外と整理しました。『アトピーという診断があればすべて自動的に対象外』とまでは書かれておらず、継続使用の必要性をどう確認するかが重要です。

アトピー以外の皮膚疾患に対する保湿関連薬は原則として対象とする一方、通年使用に加え、症状・疾患活動性が十分に改善せず、全身療法の治療歴がある重症例などは、2028年度末までの経過措置として対象外とする案です。

アトピー外用薬の中間案での扱い
薬の種類中間案確認が必要な点
ステロイド外用薬原則として別途負担の対象学会等が再検討を要望
ヘパリン類似物質通年・毎日使用が医療上必要なら対象外個別製品と確認方法は最終通知待ち
尿素通年・毎日使用が医療上必要なら対象外刺激が出る部位など使用方法は診療上別に判断
その他の保湿関連薬疾患・使用目的・重症度で扱いが分かれる案一括して判断しない
05 / Exceptions

別途負担を求めない配慮:対象者と確認方法は分けて読みます

制度の基本方針では、こども、がん患者や難病患者など配慮が必要な慢性疾患の方、低所得者、入院患者、医師が長期使用等を医療上必要と考える方などに、別途負担を求めない配慮を行うとしています。

中間とりまとめは、がん治療に伴う副作用への対応、指定難病等の公費負担医療、入院中の処方、外来の侵襲的な処置後の急性期管理などを整理しています。一方、地方自治体独自の公費制度など、実務上の課題も明記されています。

患者さんが自分で『例外に当たる』と申告すれば確定するとは限りません。年齢、所得、公費制度、病名、処方目的、長期使用の必要性をどの書類・情報で確認するかは、最終通知と医療機関・薬局の運用案内を確認します。

  • 対象薬かどうかと、対象者の例外かどうかは別の判断
  • 医療上必要な長期使用には病名・使用目的・継続性の確認が関わる
  • 自治体制度を含む実務は最終案内を待つ
06 / Different Positions

厚労省の中間案と皮膚科学会等の共同声明は、立場を分けて確認します

厚労省の中間とりまとめは、保険制度を持続可能にし、医療用医薬品とOTC医薬品の利用者間の公平性を図る観点から、代替性が特に高い医薬品へ別途負担を設ける制度案です。必要な受診機会を失わせないこと、実施後も影響を検証し、必要に応じて見直すことも記載しています。

これに対し、日本皮膚科学会、日本臨床皮膚科医会、日本アレルギー友の会の共同声明は、アトピー性皮膚炎を含む慢性・重症疾患を軽症の自己治療と同じ枠で扱うこと、ステロイド外用薬を短期使用中心と捉えることに反対しています。

共同声明は、負担増が治療中断、再燃、受診抑制につながる懸念を挙げ、軽症と慢性・重症疾患の区別、ステロイド外用薬の負担増撤回、当事者参画を要望しています。これは学会・患者団体からの意見であり、現時点の最終政府決定ではありません。

一次資料ごとの位置づけ
資料示している内容記事での扱い
厚労省中間とりまとめ制度対象・別途負担・配慮の技術的整理現時点の政府検討案
三団体共同声明皮膚科診療と患者生活への懸念・要望専門学会・患者団体の意見
患者6団体提出資料保湿剤の整理を評価し、ステロイド等の対象外を要望当事者側の提出意見
今後の通知・周知個別製品・計算・確認実務公開後に記事を更新
07 / Treatment Continuity

治療は費用の情報だけで変えず、医学的必要性と制度を分けて相談します

アトピー性皮膚炎の治療は、炎症を抑える寛解導入と、再燃を防ぐ寛解維持を連続して考えます。診療ガイドラインは、適切なステロイド外用と、症状が落ち着いた後に間欠的な抗炎症外用を行うプロアクティブ療法を推奨しています。

今回の制度案が議論されているからといって、塗る量を減らす、赤みが残っているのに止める、処方薬を市販薬へ置き換える、次回受診を先延ばしにする、といった変更を自分だけで決めないでください。

費用負担が治療継続へ影響しそうな場合は、薬名、使用部位、1週間のおおよその使用量、残薬、効き方、副作用の心配を診察で共有します。医学的な治療選択と、制度上の負担確認は別々に行います。

外用薬、費用制度、長期治療を分けて皮膚科医と確認するAI生成の説明イラスト
AI生成による説明イメージです。実在の制度書類や薬剤ではありません。薬の医学的必要性、制度上の扱い、治療を続ける計画は分けて確認します。
  • 薬の強さ・量・回数を自己変更しない
  • 処方薬と市販薬は同じ成分でも使用目的や管理が同一とは限らない
  • 費用が継続へ影響する場合は処方前に相談する
08 / Visit Checklist

診察・薬局で確認するために、お薬手帳と使用状況を残します

制度の最終運用が公表された後も、商品名だけでは判断しにくいことがあります。お薬手帳、薬袋、外用薬の容器などから、商品名、成分名、濃度、剤形を確認できるようにします。

あわせて、どの病名に対して、どの部位へ、どれくらいの期間・頻度で使っているかを記録します。外用薬は内服薬のように処方日数だけで実際の使用期間を判断しにくいため、残量や使用量の共有も役立ちます。

最終的な負担額は、対象製品、保険自己負担割合、例外の適用、処方内容などで変わり得ます。記事中の『4分の1』だけから自分の支払額を計算せず、施行時の医療機関・薬局の説明を確認してください。

相談前にそろえる情報
確認するもの見る項目目的
お薬手帳・薬袋商品名、成分、濃度対象製品か確認する
外用薬の容器軟膏・クリーム等の剤形、残量実際の使用状況を共有する
症状記録部位、赤み、かゆみ、再燃医学的必要性を確認する
公費・受給者情報利用中の制度例外の確認方法を相談する
09 / Not Yet Known

まだ決まっていないこと:対象製品、計算、確認手続きは最終情報を待ちます

中間とりまとめは対象成分と例外の考え方を示していますが、患者さんが窓口で確認するための個別製品一覧、負担額の表示方法、処方箋・レセプト上の扱い、医療上必要な長期使用を確認する具体的な手順は、今後の制度設計と周知を待つ必要があります。

学会・患者団体から再検討要望が出ているため、ステロイド外用薬を含む扱いが今後修正される可能性もあります。反対に、要望が出たことだけをもって撤回されたと考えることもできません。

この記事は厚労省、専門学会などの一次情報が更新された時点で内容を見直します。SNSの断片的な投稿ではなく、資料名、発表主体、発表日を確認してください。

  • 最終的な個別製品一覧
  • 窓口での総支払額と計算方法
  • 長期使用・例外の確認書類と手続き
  • 施行日までの追加通知と制度変更
10 / Transparency

資料の性質と限界:研究論文ではなく、制度案と意見表明です

今回の中心資料は臨床研究ではありません。厚労省資料は技術的検討会の中間とりまとめ、日本皮膚科学会のページは三団体の共同声明、9月3日の提出資料は患者6団体から社会保障審議会へ示された意見です。患者数、介入、比較群、統計解析、研究資金・利益相反を評価する種類の資料ではありません。

そのため、制度導入によって実際に治療中断や重症化が何件増えるか、医療費全体がどう変わるかを、これらの資料だけから定量的に予測することはできません。共同声明が示す影響は、専門家・当事者が懸念として表明したものです。

記事では、厚労省が決定済みとした内容、中間案、学会等の要望、今後確認すべき実務を分けました。2026年9月4日以後に最終通知が出た場合は、その一次情報を優先します。

池袋でアトピーの処方薬と費用について相談したい方へ

池袋で皮膚科受診をご検討の方へ

池袋駅周辺や東池袋でアトピー性皮膚炎を治療中の方は、薬の名前が分かるお薬手帳、塗っている部位、使用回数、残量、これまでの処方期間を持参すると相談しやすくなります。今回の制度は中間とりまとめの段階であり、現時点の処方を自分で止めたり、市販薬へ置き換えたりする必要はありません。

池袋サンシャイン通り皮膚科では、一般皮膚科(保険診療)として皮疹の状態と現在の外用治療を確認します。制度施行後の具体的な負担や対象製品は、最終的な国の通知と医療機関・薬局の案内に基づいて確認します。費用だけで治療を中断しそうな場合は、自己調整する前に診察でお伝えください。

FAQ

よくある質問

アトピーのステロイド外用薬は、もう保険がきかなくなったのですか?

いいえ。2026年9月4日時点で確認できるのは、中間とりまとめで薬剤費の一部を保険外の別途負担とする案が示された段階です。すべての保険給付がなくなったという意味でも、現在の処方が直ちに変更されたという意味でもありません。

自己負担は薬代の25%になるのですか?

中間案は対象薬の薬剤費の4分の1を保険外の別途負担とするものです。通常の保険自己負担と組み合わさるため、窓口の総支払額が一律25%になるという意味ではありません。具体的な計算は最終案内を確認してください。

ヘパリン類似物質や尿素も追加負担になりますか?

中間とりまとめでは、アトピー性皮膚炎で通年かつ毎日の使用が医療上必要なヘパリン類似物質・尿素は、別途負担の対象外とする整理です。ただし個別製品や必要性の確認手順は最終通知を待つ必要があります。

子どものアトピーも同じですか?

制度の基本方針では、こどもには別途負担を求めない配慮を行うとされています。対象年齢や確認方法などの具体的運用は、最終的な国・自治体・医療機関の案内を確認してください。

市販のステロイドへ切り替えた方がよいですか?

制度案だけを理由に自己判断で切り替えないでください。同じ成分が含まれていても、強さ、濃度、剤形、使う部位・期間、診断後の管理は同一とは限りません。現在の処方医または薬剤師へ相談します。

皮膚科学会の共同声明が出たので、見直し案は撤回されましたか?

撤回されたとは確認できません。共同声明は専門学会・患者団体から政府への再検討要望です。最終決定や変更は、今後の厚労省の通知・審議会資料で確認します。

今のうちに何を準備すればよいですか?

現在の薬を指示どおり続け、お薬手帳、薬名・成分・剤形、塗る部位、頻度、残量、処方期間を確認できるようにします。費用が治療継続へ影響しそうな場合は、自己中止する前に診察や薬局で相談してください。

監修医師 吉井恭平 院長

この記事の監修医師

吉井恭平|池袋サンシャイン通り皮膚科 院長

OTC類似薬の見直しは、薬の医学的な必要性と費用制度を同時に考える必要がある重要なテーマです。2026年9月時点では中間とりまとめであり、学会からも再検討要望が出ています。
制度の断片的な情報だけで塗る量や頻度を変えず、現在の皮疹、これまでの再燃、必要な治療を確認したうえで、最終的な負担の案内と分けて相談してください。
参考文献
  1. 厚生労働省. 『OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ』について.
  2. 厚生労働省・技術的検討会. OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ. 2026年8月6日.
  3. 厚生労働省・技術的検討会. 中間とりまとめ概要. 2026年8月6日.
  4. 日本皮膚科学会・日本臨床皮膚科医会・日本アレルギー友の会. OTC類似薬の保険給付見直し案に関する共同声明. 2026年9月3日.
  5. 厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会提出資料. 中間とりまとめに関する6団体要望書. 2026年9月3日.
  6. 厚生労働省. OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会.
  7. 日本皮膚科学会・日本アレルギー学会. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024.