診療前に知っておきたいこと

多汗症は、体温調節に必要な量を超えて汗が多く出る状態です。特に、明らかな原因疾患がないまま手のひら、足の裏、ワキ、顔など局所に汗が多い場合は「原発性局所多汗症」を考えます。症状が6か月以上続き、日常生活や仕事、学業、対人関係に支障がある場合は、皮膚科で重症度と治療選択肢を整理しましょう。

Symptoms

部位別に当院で提供している選択肢

汗が気になる部位ごとに、当院で相談できる治療を整理しています。保険診療で使える外用薬、自費診療の30%塩化アルミニウム軟膏、脇汗に対するワキボトックスの対象部位を分けて確認できます。

部位 よくある困りごと 保険診療で相談できる治療 自費診療で相談できる治療 当院での補足
ワキ汗(脇汗) 服の汗ジミ、においへの不安、人前で腕を上げにくい、季節を問わず汗が多い。
  • エクロックゲル
  • ラピフォートワイプ
  • 30%塩化アルミニウム軟膏
    50gあたり1,000円
  • ワキボトックス
    料金表参照
ボトックス注射はワキのみ対応しています。診察で適応と施術時期を確認します。
手汗 紙が濡れる、スマートフォンやPC操作がしづらい、握手や作業で気になる。
  • アポハイドローション
  • 30%塩化アルミニウム軟膏
    50gあたり1,000円
  • 30%軟膏のODT(密封療法)
手へのボトックス注射、イオントフォレーシスは当院では行っていません。
足汗 靴下や靴の中が蒸れる、においが気になる、皮膚がふやけやすい。 水虫、湿疹、かぶれなどの合併があれば保険診療で確認します。
  • 30%塩化アルミニウム軟膏
    50gあたり1,000円
  • 30%軟膏のODT(密封療法)
足へのボトックス注射、イオントフォレーシスは当院では行っていません。
顔・頭部、全身の発汗 急に汗が増えた、寝汗が強い、体重減少や動悸、発熱を伴う。 続発性多汗症の可能性を考え、経過や全身症状を確認します。 該当する定型の自費メニューは設けていません。 必要に応じて血液検査や専門科受診を検討します。まず原因確認を優先します。

ワキ汗(脇汗)

服の汗ジミ、においへの不安、人前で腕を上げにくい方。

保険診療
エクロックゲル、ラピフォートワイプ
自費診療
30%塩化アルミニウム軟膏(50gあたり1,000円)
ワキボトックス(料金表参照
補足
ボトックス注射はワキのみ対応しています。診察で適応と施術時期を確認します。

手汗

紙が濡れる、スマートフォンやPC操作、握手や作業で気になる方。

保険診療
アポハイドローション
自費診療
30%塩化アルミニウム軟膏(50gあたり1,000円)
30%軟膏のODT(密封療法)
補足
手へのボトックス注射、イオントフォレーシスは当院では行っていません。

足汗

靴下や靴の中が蒸れる、におい、皮膚のふやけが気になる方。

保険診療
水虫、湿疹、かぶれなどの合併があれば確認します。
自費診療
30%塩化アルミニウム軟膏(50gあたり1,000円)
30%軟膏のODT(密封療法)
補足
足へのボトックス注射、イオントフォレーシスは当院では行っていません。

顔・頭部、全身の発汗

急に汗が増えた、寝汗、体重減少、動悸、発熱を伴う方。

保険診療
続発性多汗症の可能性を考え、経過や全身症状を確認します。
自費診療
該当する定型の自費メニューは設けていません。
補足
必要に応じて血液検査や専門科受診を検討します。まず原因確認を優先します。

First Check

多汗症か、背景に別の原因があるかを確認します

汗の量が多いだけでなく、左右差、発症年齢、睡眠中の発汗、頻度、家族歴、生活への支障を確認します。甲状腺疾患、感染症、薬剤、全身疾患などによる続発性の発汗が疑われる場合は、必要に応じて検査や他科連携も検討します。

原発性局所多汗症が疑われる時

手のひら、足の裏、ワキ、顔など特定の部位に汗が多く、6か月以上続いている場合に考えます。25歳以下で始まった、左右対称、睡眠中は止まる、週1回以上ある、家族歴がある、生活に支障がある、という項目を確認します10

重症度も一緒に見ます

自覚症状はHDSSという指標で確認します。発汗が我慢できず日常生活に頻繁に支障がある、または常に支障がある場合は重症と判定され、一部の外用薬治療が保険適用となります9

Treatment

皮膚科で行う多汗症治療

当院では、症状の部位、重症度、生活への影響、費用負担を確認しながら、外用薬から注射療法まで段階的に検討します。イオントフォレーシス機器は導入していないため、手汗・足汗では外用薬による治療を中心にご提案します。

01

保険適用の外用薬

ワキ汗(脇汗)にはエクロックゲルやラピフォートワイプ、手汗にはアポハイドローションなどを症状に合わせて検討します。

02

30%塩化アルミニウム軟膏

提携薬局で独自に調合してもらう自費診療の外用薬です。手汗・足汗・ワキ汗(脇汗)で相談でき、費用は50gあたり1,000円です。

03

ワキのボトックス注射

汗腺への神経伝達を抑える治療です。当院ではワキ(腋窩)のみ、自費診療として対応しています。

当院でのボトックス注射はワキのみが対象です。手や足へのボトックス注射、イオントフォレーシスは行っていません。治療内容は診察で適応を確認してから決定します。

Medication

外用薬・注射治療の違い

多汗症治療では、毎日続けやすい治療か、汗が気になる季節に効果を期待する治療かなど、生活スタイルに合う方法を選ぶことが大切です。

治療 対象・特徴 ポイント
エクロックゲル 原発性腋窩多汗症に使う保険適用の外用薬です。汗腺のムスカリン受容体をブロックし、発汗を抑えます。 1日1回、両ワキに塗布します。
アポハイドローション 原発性手掌多汗症に使う保険適用の外用薬です。有効成分のオキシブチニン塩酸塩が発汗を抑えます3, 4 1日1回、就寝前に両手に塗布します。
ラピフォートワイプ 原発性腋窩多汗症に使うワイプ型の外用薬です。1回使い切りのシートでワキに塗布します6, 7 使い方や塗布後の手洗いなどを確認します。
30%塩化アルミニウム軟膏 ワキ、手、足などに使える自費診療の外用薬です。30%濃度を置いている医療機関は多くなく、当院では提携薬局に独自調合を依頼しています。費用は50gあたり1,000円です。 手汗・足汗では30%塩化アルミニウム軟膏にODT(密封療法)を併用することがあります。ボツリヌストキシンA注射とアルミニウム塩外用を比較した研究でも、有用性が報告されています13
ボトックス注射 ワキに細かく注射し、汗腺への情報伝達を抑える治療です1, 2 当院ではワキのみ、自費診療です。費用は料金表をご確認ください。効果は注射後2〜3日で出始め、約4〜9か月続きます。

Aluminum Chloride 30%

30%塩化アルミニウム軟膏とODT療法

当院では、提携薬局で独自に調合してもらう30%塩化アルミニウム軟膏を、多汗症治療の重要な選択肢として位置づけています。30%濃度を用意している医療機関は多くなく、費用は50gあたり1,000円です。手汗・足汗では就寝前に塗布した後に手袋・靴下などで密封するODT(密封療法)を併用することで、成分の浸透を高める方法があります12

使い方の基本

  • 1日1回、就寝前に汗の気になる部位へ薄く塗布します。
  • 手汗では、塗布後すぐに手袋で密封し、翌朝外します。
  • 刺激感や赤みを確認しながら、まず数週間続けて効果を見ます。
  • 効果が出た後は、週2〜3回の維持に調整することがあります。

当院が30%軟膏を重視する理由

30%塩化アルミニウム軟膏は、提携薬局に独自で調合してもらう当院ならではの外用選択肢です。20%塩化アルミニウム外用とボツリヌストキシンA注射を比較した研究では、塩化アルミニウム外用でもボツリヌストキシンA注射と同様に発汗量の低下が確認され、安全性と満足度も高いことが示されています。さらに長期効果の観点では、アルミニウム塩外用が有用な選択肢になりうると報告されています13

Flow

診察から治療開始までの流れ

多汗症では、汗の量だけでなく、生活への支障と治療の続けやすさを一緒に確認します。保険診療と自費診療の違いも診察時に説明します。

予約・来院

WEB予約システムから一般皮膚科をご予約ください。

問診

汗が気になる部位、期間、生活への影響、発症時期、家族歴を確認します。

診察・評価

原発性局所多汗症か、続発性の可能性があるか、HDSSを含めて確認します。

治療選択

外用薬、30%塩化アルミニウム軟膏、ワキボトックスなどから適した方法を提案します。

経過確認

効果、副作用、使い方、継続しやすさを見ながら治療を調整します。

Cost & Visit

保険診療・自費診療の考え方

多汗症治療は、部位や重症度によって保険適用となる治療と自費診療の治療があります。診察時に現在の症状が保険適用の対象になるか、費用や通院頻度を確認しながらご案内します。

区分 当院での相談内容 費用の見方
保険適用の外用薬 ワキ汗のエクロックゲル・ラピフォートワイプ、手汗のアポハイドローションなど。 診察料、処方内容、自己負担割合により窓口負担が変わります。院外処方の場合は薬局で薬剤費が別途かかります。
30%塩化アルミニウム軟膏 提携薬局で独自に調合してもらう自費診療の外用薬です。手汗・足汗・ワキ汗で相談できます。 50gあたり1,000円です。受け取り方法、塗布方法は診察時にご案内します。薬局での調合となるため、通常の院外処方と流れが異なります。
ワキボトックス 当院ではワキ(腋窩)のみ、自費診療で相談できます。 費用は料金表をご確認ください。診察で適応と施術時期を確認します。当日の施術枠によっては別日予約となります。
実施していない治療 手・足へのボトックス注射、イオントフォレーシス機器による治療。 必要に応じて、他の医療機関での選択肢も含めて説明します。

Daily Care

治療を続けやすくするセルフケア

多汗症は生活への影響が大きいため、薬の効果だけでなく、困る場面を減らす工夫も大切です。治療とセルフケアを組み合わせて、仕事、学校、対人場面での負担を下げていきます。

汗が増える場面を記録する

  • 緊張、暑さ、運動、食事、ストレスとの関係を確認する
  • 仕事や学校で困る場面をメモする
  • 治療前後で変化を比べる

皮膚トラブルを予防する

  • 汗でふやけやすい部位を清潔に保つ
  • 足汗が強い場合は靴下や靴の蒸れを減らす
  • 赤み、かゆみ、ただれがある場合は早めに相談する

受診時に伝えること

  • いつから汗が多いか、睡眠中はどうか
  • 使った薬や市販品、刺激感の有無
  • 持病、服薬、発熱、動悸、体重変化など

FAQ

よくある質問

診察前に確認されることが多い内容をまとめました。実際の治療方針は、汗が多い部位、重症度、既往歴、服薬状況によって変わります。

多汗症の治療は保険が適用されますか?

ワキ汗(脇汗・重度の原発性腋窩多汗症)に対するエクロックゲル・ラピフォートワイプ、手汗に対するアポハイドローションは保険適用となります。ワキのボトックス注射や30%塩化アルミニウム軟膏は自費診療です。

多汗症は何科を受診すればよいですか?

汗の量が多い、手汗で作業に支障がある、脇汗の汗ジミが気になる場合は皮膚科で相談できます。急な発汗増加、寝汗、動悸、体重減少などがある場合は、続発性多汗症の確認も行います。

手汗の治療は保険適用になりますか?

原発性手掌多汗症と診断され、重症度などの条件を満たす場合は、アポハイドローションなど保険適用の外用薬を相談できます。30%塩化アルミニウム軟膏は自費診療です。

ボトックス注射の効果はどのくらい続きますか?

個人差はありますが、通常は注射後2〜3日で効果が現れ始め、約4〜9か月持続します。汗の気になる春から初夏にかけて相談される方もいます。

手汗にもボトックス注射はできますか?

当院では手や足へのボトックス注射は行っていません。手汗ではアポハイドローション、30%塩化アルミニウム軟膏(必要に応じてODTを併用)、足汗では30%塩化アルミニウム軟膏(必要に応じてODTを併用)など外用薬を中心に相談します。

30%塩化アルミニウム軟膏はどのように使いますか?

1日1回、就寝前に汗の気になる部位へ薄く塗布します。手汗・足汗の場合は、30%塩化アルミニウム軟膏を塗布した後に手袋や靴下などで密封するODT(密封療法)を併用することで、効果を高める方法があります。費用は50gあたり1,000円です。刺激感や赤みが出る場合があるため、使い方は診察時に確認します。

30%塩化アルミニウム軟膏はどこで受け取りますか?

当院が提携する薬局で独自に調合してもらう外用薬です。受け取り方法や受け取りまでの流れは、診察時にご案内します。

ワキボトックスの料金はいくらですか?

ワキボトックスは自費診療です。費用は料金表をご確認ください。診察で適応、施術時期、当日施術の可否を確認します。

イオントフォレーシスは受けられますか?

当院ではイオントフォレーシスの機器を導入していないため実施していません。手汗・足汗でお悩みの方には、外用薬による治療を中心にご提案します。

急に汗が増えた場合も皮膚科で相談できますか?

相談できます。急な発汗増加、寝汗、発熱、動悸、体重減少、薬剤変更などがある場合は、続発性多汗症の可能性も考えて確認します。

受診時に準備しておくことはありますか?

汗が多い部位、いつから続いているか、睡眠中の発汗、生活への支障、使用した市販品や薬、持病や服薬内容が分かると診療がスムーズです。

池袋サンシャイン通り皮膚科 院長 吉井 恭平
院長 吉井 恭平

Medical Supervisor

監修医師からのメッセージ

多汗症は「汗の量」の問題だけではなく、仕事、学業、人間関係、服装の選び方まで影響することがあります。生活への支障を遠慮なく伝えていただくことが、治療選択の出発点です。

当院では、保険適用の外用薬に加え、提携薬局で独自に調合してもらう30%塩化アルミニウム軟膏、ワキのボトックス注射などを、部位と重症度に合わせて段階的に提案します。汗のお悩みが続く方は、一度ご相談ください。

監修 池袋サンシャイン通り皮膚科 院長 吉井 恭平 院長挨拶を見る →

References

参考文献

多汗症の診断基準、重症度判定、外用薬、ボトックス治療などについて、診療ガイドラインと臨床研究を参照しています。

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  3. Wolosker N, et al. A randomized placebo-controlled trial of oxybutynin for the initial treatment of palmar and axillary hyperhidrosis. J Vasc Surg. 2012. PubMed
  4. El-Samahy M, et al. Safety and efficacy of oxybutynin in patients with hyperhidrosis: systematic review and meta-analysis. Arch Dermatol Res. 2023. PubMed
  5. Kim DH, et al. Treatment of Palmar Hyperhidrosis with Tap Water Iontophoresis. Ann Dermatol. 2017. PMC
  6. Lamb YN. Topical Glycopyrronium Tosylate in Primary Axillary Hyperhidrosis. Clin Drug Investig. 2019. PubMed
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  11. Schlereth T, et al. Hyperhidrosis-causes and treatment of enhanced sweating. Dtsch Arztebl Int. 2009. PMC
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