
Daily Clinic Notes
ピコスポット1か月後に淡いシミが残る炎症後色素沈着をどう見るか
「照射から1か月たったのに、照射部位に淡いシミがあります」とお問い合わせをいただきました。1か月はまだ経過の途中です。ただし、色だけでは炎症後色素沈着、元のシミの残存、赤み、色素脱失を区別できません。診療で何を確認するかを整理します。
Key Points
最初に押さえたい3つのこと
1か月は最終結果ではありません。
ピコ秒レーザーの研究でも4週と12週など複数時点で評価されています。
ピコ秒でも色素沈着は起こり得ます。
ただし頻度は機器、波長、出力、病変、肌状態で変わります。
色と症状を分けて見ます。
茶色、赤色、白色、痛みや水疱の有無で次の対応が変わります。
ピコスポットから1か月後に照射部位へ淡い茶色が残っていても、直ちに治療失敗やシミの再発とは言えません。炎症後色素沈着、元のシミの残存、照射後の赤みなどが候補です。一方、周囲より白い、痛み・水疱・ただれがある、色が広がる場合は別の対応が必要です。照射前後の写真を同じ明るさで比べ、施術先へ相談してください。
- 自己判断でスクラブ、ピーリング、高濃度レチノールなどを追加しない。
- 日焼け止め、帽子、摩擦を避けるケアを続ける。
- 次のスポット照射は、残存か色素沈着かを確認してから判断する。
「1か月たっても薄いシミがある」というお問い合わせ
先日、ピコスポットを受けた方から「1か月たっても照射部位に淡いシミが残っています」とお問い合わせがありました。
こういうとき、電話や文章だけで「炎症後色素沈着なので大丈夫です」と言い切るのは少し早いと思っています。同じような淡い色でも、照射で一度薄くなったあとに茶色くなったのか、最初から少し残っていたのか、赤みが茶色っぽく見えているのかで意味が違うからです。
まず、照射前、かさぶたが取れた直後、現在の3時点を写真で比べます。写真は加工せず、できれば同じ場所、同じ照明、同じ角度で撮っていただくと判断しやすくなります。
1か月は「結果を確認し始める時期」で、最終判定の時期ではありません
ピコスポットでは、照射後に赤みや薄いかさぶたが出て、かさぶたが自然に取れたあとに色が変化していきます。見た目が一度きれいになったあと、数週間して茶色が目立ってくることもあります。
アジア人の顔面日光黒子を対象にした532nmピコ秒Nd:YAGレーザーの前向き研究では、治療結果を4週と12週に評価しています。別の研究でも1か月と3か月で評価されました。つまり、1か月は重要な確認時点ですが、その時点だけで最終結果を決める設計にはなっていません。
照射から1か月で淡い色があると不安になるのは自然なことです。まず「治療前より濃いか」「一度薄くなったあとに出たか」「毎週少しずつ薄くなっているか」を確認します。
淡い色を4つに分けると、次の対応が見えやすくなります
「薄いシミ」という言葉だけでは色が分かりません。診療では、周囲の皮膚と比べた色、表面の状態、痛みやかゆみを分けて確認します。
もともとの病変が日光黒子ではなく、肝斑、ADM、脂漏性角化症などを含んでいる場合も、経過や治療回数が変わります。次の照射を考える前に、シミの種類をもう一度確認することが大切です。
ピコ秒レーザーでも炎症後色素沈着はゼロではありません
ピコ秒レーザーは、ナノ秒のQスイッチレーザーより熱の広がりを抑えやすいと考えられています。ただし、皮膚へ刺激を加える治療である以上、炎症後色素沈着を完全にはなくせません。
アジア人20人の顔面日光黒子を対象にした前向き研究では、532nmピコ秒レーザー137照射のうち14照射、10.2%で炎症後色素沈着が報告されました。別の20人を対象にした左右比較試験では、4週時点の炎症後色素沈着がピコ秒側5%、Qスイッチ側30%でした。ただし後者の差は統計学的に有意ではなく、どちらも小規模研究です。
これらは「この患者さんが10%の確率で起きた」という意味ではありません。波長、出力、照射径、病変、肌状態、術後の炎症が異なるためです。研究から言えるのは、ピコ秒でも色素沈着は起こり得ることと、4週だけでなく12週まで経過を見る価値があることです。
数字の読み方
機器名だけで安全性を決めることはできません。診断、照射設定、治療終点、肌状態、術後ケアを合わせて評価します。
炎症後色素沈着なら、薄くなるまで数か月単位で見ます
レーザー治療後の炎症後色素沈着について、日本レーザー医学会誌の総説では通常3〜4か月で自然に消退すると説明されています。一方、炎症後色素沈着全般の経過は深さや炎症の強さで異なり、より長く続くこともあります。
大切なのは、1か月の一点だけでなく、同じ条件の写真で2〜4週間ごとの変化を見ることです。少しずつ薄くなっているなら経過を追いやすくなります。反対に、濃くなる、範囲が広がる、白くなる、表面が変化する場合は再評価します。
色素沈着と判断する前に、元のシミが残っているだけではないか、別の色素斑ではないかも確認します。残存であっても、1か月で急いで同じ場所へ高出力照射を重ねるのではなく、皮膚の回復と診断を確認して次の時期を決めます。
今できることは、紫外線と摩擦を増やさないことです
炎症後色素沈着の治療研究では、広範囲を守る日焼け止めが繰り返し推奨されています。照射部位には、施術先から指示された保湿と日焼け止めを続け、帽子や日陰も組み合わせます。
洗顔時にこする、かさぶたを剥がす、スクラブを使う、強いピーリングやレチノールを一度に足すと、刺激が炎症を長引かせることがあります。色を早く消したい気持ちが、かえって遠回りになることがあります。
外用治療には選択肢がありますが、炎症が残っているか、色が表皮性か、何をすでに使っているかで選び方が変わります。自己判断で複数の美白剤を重ねず、施術先で相談してください。
待たずに連絡したい症状と、通常再診で確認したい変化
早めに施術先へ連絡したい症状は、強い痛み、熱感、水疱、ただれ、膿、出血、広がる赤みや腫れです。単なる色素沈着とは別の処置が必要なことがあります。
通常の再診で確認したい変化は、周囲より白い、2〜3か月たっても全く変化がない、徐々に濃くなる、照射範囲を越えて広がる、触ると盛り上がっている場合です。
画像相談では、照射日、機器・モード、部位、かさぶたが取れた日、一度薄くなったか、痛みやかゆみ、日焼け、現在の外用を添えてください。正面だけでなく、少し斜めからの写真もあると表面の変化が分かりやすくなります。
今日のまとめ:1か月後の色は、名前をつける前に経過を並べる
今回のお問い合わせで改めて感じたのは、「薄いシミが残った」という一言の中に、いくつもの状態が含まれているということです。
炎症後色素沈着なら時間とともに薄くなることが期待できます。しかし、元のシミの残存、赤み、色素脱失、治癒の遅れであれば考え方は変わります。だからこそ、1枚の写真だけで安心させすぎず、怖がらせすぎず、照射前からの時間軸を一緒に見ることが大切です。
1か月は「まだ治っていない」と決める時期ではなく、「ここまでの経過を整理する」時期。焦って刺激を足す前に、写真を残し、肌を守り、必要なら診察で確認しましょう。
Related Reading
ピコスポット後の経過とシミ治療を続けて確認する
施術後の一般的な経過、シミの種類、治療ページへ進めます。
ピコスポット1か月後の色素沈着でよくある質問
ピコスポットから1か月後に薄いシミが残るのは失敗ですか?
1か月だけでは失敗と判断できません。炎症後色素沈着、元のシミの残存、赤みなどが考えられます。照射前後の写真と色の変化を施術先で確認します。
炎症後色素沈着なら、いつ頃までに薄くなりますか?
レーザー後の炎症後色素沈着は数か月単位で薄くなることがあります。日本レーザー医学会誌の総説では通常3〜4か月で自然に消退すると説明されていますが、深さや炎症、紫外線などで長引くこともあります。
1か月後にもう一度ピコスポットを照射してよいですか?
色素沈着なのか元のシミの残存なのかを確認せず、同じ場所へ追加照射することは勧められません。皮膚の回復、診断、前回の設定を確認して施術時期を決めます。
市販の美白剤やピーリングを始めてもよいですか?
刺激で炎症が続くと色素沈着が悪化することがあります。施術後の肌状態と現在のスキンケアを確認し、施術先に相談してから始めてください。
茶色ではなく白っぽく見える場合も経過観察でよいですか?
周囲より白い場合は色素脱失など、茶色い炎症後色素沈着とは異なる可能性があります。美白剤は塗らず、対面で確認することを勧めます。
どのような症状なら早めに連絡した方がよいですか?
強い痛み、熱感、水疱、ただれ、膿、出血、広がる赤みや腫れがある場合は早めに施術先へ連絡してください。
監修:吉井 恭平
池袋サンシャイン通り皮膚科 院長
- Negishi K, et al. Prospective study of removing solar lentigines in Asians using a picosecond laser. Lasers Surg Med. 2018.
- Chan MWM, et al. A Prospective Study in the Treatment of Lentigines in Asian Skin Using 532 nm Picosecond Nd:YAG Laser. Lasers Surg Med. 2019.
- Kim JY, et al. 532 nm picosecond versus Q-switched Nd:YAG laser for solar lentigines. Ann Dermatol. 2020.
- Kang HJ, et al. Postinflammatory hyperpigmentation after Q-switched 532-nm Nd:YAG laser. J Dermatolog Treat. 2017.
- 渡辺晋一. 皮膚科におけるレーザー治療の基本原理. 日本レーザー医学会誌. 2006.
- Tan MG, et al. Topical treatment for postinflammatory hyperpigmentation: a systematic review. J Dermatolog Treat. 2022.
- Grimes PE, et al. Postinflammatory hyperpigmentation: treatment options and prevention. J Am Acad Dermatol. 2017.
- Fatima S, et al. The Role of Sunscreen in Melasma and Postinflammatory Hyperpigmentation. Indian J Dermatol. 2020.
- Davis EC, Callender VD. Postinflammatory Hyperpigmentation in Skin of Color. J Clin Aesthet Dermatol. 2010.
本記事は一般的な医学情報です。実際の診断や治療は、照射した機器・設定、治療前の病変、現在の皮膚所見を確認して個別に判断します。