
Daily Clinic Notes
顔のいぼ治療を比べる液体窒素か
CO2レーザーか
「顔のいぼも液体窒素で取れますか。それともレーザーの方がよいですか」と、診察でよく聞かれます。当院では顔面の良性病変はCO2レーザーを基本に提案していますが、どのいぼにも同じ方法が最適とは限りません。まず病名を分け、標準治療と顔ならではの整容性を一緒に考えます。
Key Points
最初に押さえたい3つのこと
「顔のいぼ」は一つの病気ではありません。
非感染性の脂漏性角化症と、HPVによる尋常性疣贅をまず分けます。
標準治療と顔での選び方は分けて考えます。
液体窒素は疣贅の標準治療ですが、顔では整容性も重要です。
CO2レーザーも色素沈着や瘢痕がゼロではありません。
診断、深さ、個数、肌質まで見て方法を決めます。
脂漏性角化症にも尋常性疣贅にも、液体窒素とCO2レーザーは治療候補になります。ただし、日本皮膚科学会の尋常性疣贅診療ガイドラインでは液体窒素療法が推奨度Aの標準治療で、CO2レーザーは主に通常治療で治りにくい場合の選択肢として推奨度Bです。一方、顔面は治療後の色や傷あとが目立ちやすいため、当院では良性と確認できた単発・限局性の病変では、照射範囲と深さを調整しやすいCO2レーザーを基本に提案しています。
- 「液体窒素は顔に使えない」「CO2なら色素沈着しない」という意味ではありません。
- 多発する扁平疣贅、ウイルス性疣贅、診断が不確かな病変では別の方法を選ぶことがあります。
- 急に大きくなった、自然に出血する、色や形が不規則な病変は、レーザーで蒸散する前に病理検査を検討します。
「顔なら液体窒素よりレーザーですか」と聞かれました
診察で、頬やこめかみの小さな盛り上がりを見せながら「近くの皮膚科では液体窒素と言われました。顔なので跡が心配です」と相談されることがあります。
当院では、顔面の脂漏性角化症や限局した尋常性疣贅について、良性と判断でき、整容性を重視する場合は、基本的にCO2レーザーでの除去を提案しています。液体窒素では凍結した範囲が周囲へ及び、炎症後色素沈着が長く残ることを診療上気にしているためです。
ただ、ここで大切なのは「CO2レーザーの方が医学的にいつでも上」という話ではないことです。液体窒素は長く使われてきた標準治療で、CO2レーザーにも赤み、色素沈着、色抜け、瘢痕、再発があります。顔で何を優先するかを一緒に考える、というのが実際のところです。
治療法を決める前に、脂漏性角化症と尋常性疣贅を分けます
患者さんが使う「いぼ」という言葉には、いくつかの病気が含まれています。よく似て見えても、脂漏性角化症は加齢や紫外線などと関係する良性腫瘍で、人にうつる病気ではありません。尋常性疣贅はヒトパピローマウイルス(HPV)による感染症です。
色の濃い脂漏性角化症は、色素性母斑や悪性黒色腫などとの区別が必要になることがあります。治療方法を先に決めず、視診とダーモスコピーで診断を確認します。判断が難しい場合は、組織を残せない蒸散治療ではなく、生検や切除による病理検査を優先します。
尋常性疣贅の標準治療は液体窒素です
日本皮膚科学会の尋常性疣贅診療ガイドライン2019では、液体窒素凍結療法は推奨度Aです。治療効果は研究ごとに大きく異なりますが、部位や病型に応じて凍結の強さを調整しながら行う、一般的な第一選択です。
同じガイドラインでレーザー治療は推奨度B、CO2レーザーは「通常の治療に反応しない難治性疣贅」に対する選択肢として示されています。報告上の治癒率には幅があり、液体窒素との十分な直接比較試験も多くありません。
したがって、尋常性疣贅全体について「CO2レーザーが標準」という表現は正確ではありません。当院の方針は、標準治療を否定するものではなく、顔面の限局した病変で、診断、整容性、通院回数、費用、術後管理を相談したうえでCO2レーザーを選びやすい、という部位別の判断です。
脂漏性角化症について
日本皮膚科学会の美容医療診療指針では、脂漏性角化症は液体窒素療法が第一選択とされる一方、短時間で整容的に除去しやすい方法としてCO2レーザーが選ばれることも多いと説明されています。
液体窒素とCO2レーザーを、顔で比べると
液体窒素の利点は、標準化された治療として広く行われ、麻酔を使わず短時間で受けやすいことです。CO2レーザーの利点は、病変の境界を見ながら小範囲ずつ除去し、深さを調整しやすいことです。
一方で、CO2レーザーは創傷管理が必要で、深く削りすぎれば瘢痕を残します。液体窒素でも、弱すぎれば病変が残り、強すぎれば水疱や色調変化が出ます。方法名だけでなく、病変の厚さと施術の強さが結果に関わります。
顔の脂漏性角化症を比べた小規模研究では、CO2の満足度が高い結果でした
30人の患者さんについて、顔面の似た4個の脂漏性角化症を、液体窒素、電気乾燥法、CO2レーザー、Er:YAGレーザーに一つずつ割り付けた比較研究があります。8週後の総合的な改善度はCO2レーザー、Er:YAGレーザー、電気乾燥法が液体窒素より良好で、患者満足度も液体窒素群で低い結果でした。
ただし、この研究では治療後の色素変化と皮膚の質感に、4つの治療間で統計学的な差はありませんでした。症例数も30人と小さく、観察期間は8週です。この結果だけで「CO2レーザーなら色素沈着が少ない」と断定はできません。
別の研究では、Er:YAGレーザーが液体窒素より脂漏性角化症の完全治癒率が高く、色素沈着が少ないと報告されています。ただし、Er:YAGとCO2は異なるレーザーです。CO2レーザーの色素沈着リスクを直接示す数字として置き換えることはできません。
研究から言える範囲
顔面の脂漏性角化症ではレーザー系治療の改善度や満足度が高い可能性がありますが、CO2レーザーが液体窒素より色素沈着を確実に減らすという直接根拠はまだ十分ではありません。
それでも当院が顔面でCO2レーザーを基本にする理由
顔は、人から見える部位です。治療後の色調変化や傷あとだけでなく、何回通院するか、いつからメイクできるかも治療選択に影響します。
当院が顔面の良性病変にCO2レーザーを提案しやすい理由は、病変の輪郭を見ながら小さく照射し、盛り上がりに合わせて深さを調整できるためです。液体窒素を繰り返した後の色素沈着を懸念し、局所麻酔と創傷管理を受け入れられる方には、CO2レーザーの方が治療計画を立てやすいと考えています。
これは当院の臨床方針であり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。肌の色、日焼け、ケロイド体質、病変の厚さと個数、診断、ダウンタイム、費用を確認します。薄く平らな病変を深く削れば、治療そのものが傷あとを作ってしまいます。
尋常性疣贅は「見える部分を取れば終わり」とは限りません
尋常性疣贅はHPVによる病変です。CO2レーザーで盛り上がりを除去しても、周囲にウイルスを含む細胞が残れば再発することがあります。液体窒素でも再発はあり、どちらを選んでも経過観察が必要です。
また、ウイルス性疣贅をレーザーで蒸散すると、煙にHPVのDNAが含まれることがあります。実際の感染リスクは研究上なお不確実な部分がありますが、日本皮膚科学会のガイドラインでも排煙装置と十分な換気が必要とされています。
顔に平らな小病変が多数ある場合は、扁平疣贅の可能性があります。一つずつCO2レーザーで削ると、照射跡の数が増えるため、個数、広がり、炎症の出やすさを見て別の治療を検討します。
治療後の色素沈着を減らすために、傷が閉じるまで無理をしない
CO2レーザー後は、病変の深さに応じて皮膚が再生するまで軟膏や被覆材で保護します。洗顔、入浴、メイクの再開時期は施術時の指示に従ってください。かさぶたを剥がす、強くこする、スクラブやピーリングを始めると炎症を長引かせます。
皮膚が閉じた後も、紫外線と摩擦を避けます。炎症後色素沈着はCO2レーザーでも起こり得るため、日焼け止め、帽子、刺激の少ない保湿を続けます。液体窒素後に水疱ができた場合も、自分でつぶさず、痛みや赤みが増すときは相談してください。
強い痛み、広がる赤み、熱感、膿、出血が続く場合は感染や治癒遅延の確認が必要です。傷が治った後も盛り上がりが残る、または再び大きくなる場合は再診します。
レーザーで取る前に、病理検査を考えたいサイン
急に大きくなった、左右非対称、色がまだら、輪郭が不規則、繰り返し自然出血する、潰瘍になっている病変は、見た目だけで良性と決めません。以前からある病変でも、最近変化した場合はその経過を教えてください。
CO2レーザーで完全に蒸散すると、後から顕微鏡で調べる組織が残りません。診断に迷う場合は、ダーモスコピーに加えて、生検や切除を行い病理検査へ提出する方が安全です。
「跡をきれいにしたい」という希望ほど、治療前の診断が大切です。美容目的の除去であっても、まず皮膚科で病変の正体を確認します。
今日のまとめ:顔では、病名と治療後の生活まで見て選ぶ
今日あらためて整理してみると、「液体窒素かCO2レーザーか」という二択の前に、脂漏性角化症なのか、ウイルス性疣贅なのかを決める必要があります。同じ見た目の盛り上がりでも、治療のゴールが違います。
尋常性疣贅全体の標準治療は液体窒素です。一方で顔面では、色素沈着、照射範囲、通院回数、創傷管理を含めて、CO2レーザーが合う方もいます。当院では、良性と確認できた顔面の単発・限局性病変ではCO2レーザーを基本にしていますが、レーザーにも色や傷あとのリスクがあることを必ず説明します。
方法名だけで勝ち負けを決めず、病変の種類とその方が大切にしたいことを合わせて選ぶ。顔のいぼ治療では、それが一番大事だと思います。
Related Reading
顔のいぼの診断と治療を続けて確認する
病変の種類、液体窒素、CO2レーザー、料金まで順に確認できます。
顔のいぼ治療でよくある質問
顔の脂漏性角化症に液体窒素は使えますか?
使えます。脂漏性角化症では一般的な治療の一つです。ただし、赤み、水疱、炎症後色素沈着、色素脱失が起こることがあります。顔では病変の厚さ、個数、肌質、整容性を考え、CO2レーザーなども比較します。
液体窒素とCO2レーザーでは、どちらが色素沈着しにくいですか?
どちらにも色素沈着の可能性があります。小規模な顔面脂漏性角化症の比較研究では、CO2レーザーの改善度と満足度は高かったものの、治療後の色素変化に統計学的な差はありませんでした。病変、照射の強さ、肌質、紫外線、摩擦も影響します。
CO2レーザーなら1回で完全に取れますか?
1回で除去を目指すことはありますが、厚い病変を傷あとが残らない深さにとどめる場合や、ウイルス性疣贅が再発した場合は追加治療が必要です。
尋常性疣贅をCO2レーザーで取っても再発しますか?
再発することがあります。尋常性疣贅はHPVによる感染症で、見える病変を除去しても周囲にウイルスを含む細胞が残る可能性があります。液体窒素でも再発はあり、治療後の経過観察が必要です。
顔に平らないぼがたくさんあります。全部CO2レーザーで取れますか?
多数の平らな病変は扁平疣贅の可能性があり、一つずつ蒸散すると照射跡が増えます。診断、数、分布、炎症の出やすさを確認し、別の治療も含めて検討します。
いぼをレーザーで取る前に病理検査は必要ですか?
典型的な良性病変では必ずしも必要ではありません。ただし、急に大きくなった、色や形が不規則、自然に出血する、潰瘍があるなど診断が不確かな病変では、生検や切除による病理検査を優先します。
監修:吉井 恭平
池袋サンシャイン通り皮膚科 院長
- 日本皮膚科学会. 尋常性疣贅診療ガイドライン2019.
- 日本皮膚科学会ほか. 美容医療診療指針 令和3年度改訂版.
- Zaresharifi S, et al. Comparison of cryotherapy, electrodesiccation, CO2 laser, and Er:YAG laser in facial seborrheic keratosis. Dermatol Ther. 2021.
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- Nguyen J, et al. Laser Treatment of Nongenital Verrucae: A Systematic Review. JAMA Dermatol. 2016.
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- Kwok CS, et al. Topical treatments for cutaneous warts. Cochrane Database Syst Rev. 2012.
本記事は一般的な医学情報です。実際の診断や治療は、病変の種類、部位、厚さ、個数、肌質、既往歴、希望を確認して個別に判断します。料金や保険適用は治療内容によって異なります。