
ここからは患者さん向けの解説です
症状・受診の目安・治療の流れを、日常の言葉を先にして説明します。処方や診療実務の専門情報は、ページ後半に分けています。
まず押さえたい3つの結論
再発の仕方と皮膚の下の変化まで確認すると、治療の選択肢が変わります。
毛包を中心とした慢性炎症性疾患です。汗や細菌だけで説明せず、繰り返し方と部位を確認します。
切開排膿は急性の痛みを軽くしますが、瘻孔・瘢痕には薬物療法や外科治療の組み合わせが必要です。
ヒュミラとビンゼレックスは標的、用法、固有リスクが異なり、一律の優劣では選びません。
早めの受診:発熱、急速に広がる赤み、強い痛み、歩けないほどの腫れ、妊娠中・免疫抑制中の悪化は早めに医療機関へ。同じ部位に繰り返す、排膿が続く、皮膚の下に通り道を感じる場合も皮膚科で確認します。
化膿性汗腺炎を疑う症状と診断
典型部位・病変の種類・反復性の3点を軸に、似た疾患を除外します。
表は左右に動かして確認できます
| 確認軸 | 典型的な所見 | 診察で区別するもの |
|---|---|---|
| 部位 | 脇、鼠径部、陰部、肛囲・臀部、胸の下など | 粉瘤、毛嚢炎、せつ、毛巣洞、リンパ節病変 |
| 病変 | 痛い結節、膿瘍、排膿、瘻孔、索状硬結、瘢痕 | 単発の感染か、慢性炎症と構造変化か |
| 経過 | 同じ場所または間擦部に繰り返す | 6か月内の反復、治療後の再燃、家族歴 |
| 全身・併存 | 痛み・におい・滲出による生活の質低下 | 炎症性腸疾患、関節症状、代謝疾患、抑うつ等 |
診断は写真だけで確定しません。
症状が引いた時期でも、発症部位を示せる写真、再発日、膿・出血・痛み、使った薬、切開歴を持参すると経過を把握しやすくなります。
粉瘤(アテローム)と化膿性汗腺炎の違い
炎症性粉瘤は赤く腫れて膿が出るため、化膿性汗腺炎とよく似て見えることがあります。
1個の病変だけを見て決めず、袋状構造や中央の開口部、できる部位、繰り返し方、瘻孔・瘢痕の有無を合わせて確認します。
表は左右に動かして確認できます
| 確認点 | 粉瘤(アテローム・表皮嚢腫) | 化膿性汗腺炎 |
|---|---|---|
| 病変の構造 | 皮膚の下に角質などがたまる袋状の構造 | 毛包を中心に慢性炎症が起こる疾患 |
| 見た目・触れ方 | 境界の比較的わかりやすい半球状のしこり。中央に黒い点状の開口部が見えることがある | 深く痛い結節・膿瘍。中央の開口部がはっきりしないことも多い |
| 出てくるもの | 臭いのある粥状・チーズ状の角質が出ることがある | 膿や血液が出たり、排膿を繰り返したりすることがある |
| 部位・経過 | 全身にでき、単発で徐々に大きくなることが多い | 脇・鼠径部・臀部・胸の下などに繰り返し、複数部位に生じることがある |
| 慢性変化 | 袋状構造が残ると同じ場所で再び腫れることがある | 反復により皮膚の下の瘻孔、索状硬結、瘢痕を形成することがある |
| 治療の考え方 | 炎症への対応後、必要に応じて袋状構造の摘出を検討 | 外用・内服・生物学的製剤・外科治療を病変に応じて組み合わせる |
炎症性粉瘤と化膿性汗腺炎が併存することもあります。自己判断でつぶさず、部位・個数・再発回数・切開歴を伝えてください。必要に応じて超音波検査や、摘出した組織の病理検査なども検討します。
重症度は炎症と傷あとを分けて見る
Hurley分類は構造変化、病変数・疼痛・排膿は今の活動性を捉えます。

孤立した膿瘍・結節が中心で、瘻孔や広い瘢痕が目立たない段階。
再発する膿瘍に瘻孔・瘢痕を伴うが、病変同士が広範囲に連続していない段階。
複数の瘻孔・瘢痕が広くつながり、慢性的な炎症や排膿が続く段階。
炎症性結節・膿瘍・排膿性瘻孔、痛み、排膿回数、睡眠・仕事・通学への影響を記録します。
治療は1本の階段ではなく組み合わせ
急性炎症、二次感染、慢性炎症、瘻孔・瘢痕に対して役割の違う治療を組み合わせます。
摩擦・蒸れ・被覆を調整し、病変や二次感染に応じて外用治療を選びます。
症状・範囲・感染の有無に応じ、国内適応と個別状態に沿って抗菌薬などを検討します。
局所療法・抗菌薬後も症状が残る成人では、ヒュミラまたはビンゼレックスを検討します。
瘻孔・瘢痕・広範囲病変ではderoofingや切除を検討し、薬物療法と時期を調整します。
deroofing・手術の違いを見る →
抗菌薬は「細菌だけを治す薬」とは限りません。
化膿性汗腺炎では抗炎症作用を期待して使う場面と、二次感染を治療する場面を区別します。薬の種類・期間は病変と安全性を診察して決めます。
化膿性汗腺炎のderoofing(天井開放術)とは
同じ場所でしこりや排膿を繰り返すときに、皮膚の下の「トンネル」へ対応する治療です。
deroofing(デルーフィング/天井開放術)は、瘻孔や膿瘍の上を覆う皮膚を取り除き、病変を開放する手術です。unroofing(アンルーフィング)とも呼ばれます。瘻孔とは、皮膚の下にできたトンネル状の通り道のことです。病変の広がりを確認し、底面や周囲の健康な組織をできるだけ残すことを目指します。[外科治療のガイドライン]
腫れが引いてもトンネルが残ると、同じ場所で痛みや排膿を繰り返すことがあります。薬で炎症を抑える治療に加え、残った病変の構造に働きかける選択肢としてderoofingを検討します。
どのような病変で検討する?
- 同じ場所で腫れ・痛み・排膿を繰り返し、治療対象の範囲を確認できる病変。
- 皮膚の下に限局した瘻孔があり、薬物療法を行っても残っている病変。
- 周囲の皮膚をできるだけ温存しながら、局所の病変を治療したい場合。
特に限局した瘻孔を伴うHurley IIの病変などで検討されます。ただし、病期だけで手術方法は決まりません。病変の深さ・数・つながり、部位、炎症の強さ、過去の手術、術後に通院や創部ケアができるかを合わせて判断します。広い範囲につながる瘻孔や強い瘢痕がある場合は、切除や専門施設での治療が必要になることもあります。
切開排膿・deroofing・切除は何が違う?
いずれも外科的な処置ですが、目的と治療する範囲が異なります。
切開排膿

急に腫れて痛む膿瘍の膿を出し、圧を下げる処置です。
deroofing(天井開放術)

瘻孔の上を覆う皮膚を取り除き、底面や周囲の組織をできるだけ残します。
局所切除・広範囲切除

病変の広がりに応じて、切除する範囲を決めます。図は局所切除の一例です。広範囲切除では、病変に応じて切除する範囲が広くなります。
術式の違いを伝えるために簡略化したAI生成の模式図です。実際の患者さんの写真や治療効果を示すものではありません。病変の形・深さ・広がりに応じて、処置の範囲や手術方法は異なります。
表は左右に動かして確認できます
| 方法 | 主な目的・対象 | 違いと注意点 |
|---|---|---|
| 切開排膿 | 急に腫れて強く痛む膿瘍の膿を出し、圧を下げる。 | 急性期の苦痛を軽くする処置。瘻孔などが残る場合、同じ場所の再発に対する追加治療を検討します。 |
| deroofing (天井開放術) | 繰り返す限局した病変や瘻孔の「天井」を取り除いて開放する。 | 底面・周囲の組織をできるだけ温存します。通常は開いた傷を保護しながら治すため、術後ケアが必要です。 |
| 局所切除・広範囲切除 | 病変そのものを切り取る。広い慢性病変などでは切除範囲も広くなる。 | 範囲に応じ、縫合、開放創での治癒、植皮・皮弁などを検討します。回復期間や通院の負担も含めて選びます。 |
比較の出典:北米の化膿性汗腺炎診療ガイドライン(外科治療)
手術はどのように進む?
限局した病変では、局所麻酔による外来手術として行われることがあります。実際の方法や麻酔、外来で対応できる範囲は、診察と施設の体制により異なります。
- 01 病変の確認トンネルの広がりを調べる
診察で開口部やつながりを確認します。必要に応じて超音波検査などを用い、見た目より広がる病変がないか評価します。[原著]
- 02 病変の開放麻酔後に「天井」を取り除く
瘻孔の範囲を確認しながら、上を覆う皮膚を除去します。単に小さな穴を開けて膿を出す処置とは異なります。
- 03 創部の保護傷の回復を診察で確認する
止血後に傷を保護します。通常は縫い合わせず、傷が新しい皮膚で覆われる「上皮化」を待ちます。
術後の傷はいつ閉じる?自宅ではどんなケアが必要?
傷が皮膚で覆われるまで数週間以上かかり、範囲や部位、炎症の状態によっては、さらに長い期間が必要です。術後しばらくは浸出液が出ることがあり、傷の保護と経過観察を続けます。痛みが落ち着く時期、仕事に戻れる時期、傷が完全に閉じる時期は同じではありません。
- 洗浄・保護:担当医の指示に沿ってやさしく洗浄し、傷に付着しにくい被覆材などで保護します。被覆材の種類や交換回数は、排液量や部位に合わせます。
- 痛み・通院:必要な鎮痛薬と受診間隔を確認します。脇や鼠径部など、自分で処置しにくい場所では、ケアの方法も事前に相談してください。
- 仕事・入浴・運動:摩擦、汗、皮膚の引っ張り、仕事内容を踏まえて再開時期を決めます。外来手術であっても、翌日からすべての活動ができるとは限りません。
傷に使う軟膏や消毒薬、抗菌薬の必要性は個別に判断します。自己判断で強くこすったり、薬や処置を変更したりせず、担当医の説明に合わせてください。[創傷ケア]
研究で報告された治癒期間を確認する
2024年の前向き観察研究では平均4.4±1.9週、別の単施設270人の研究では中央値9.6週(範囲4〜22週)でした。対象や病変の条件が異なるため、これらを全員に共通する回復日数としては使えません。診察で個別の見通しを確認します。[原著1] [原著2]
期待できることと、再発・傷あとのリスク
治療した場所の繰り返す腫れや排膿を減らすことを目指します。一方で、その場所の再発や、別の場所に新しい病変ができる可能性は残ります。deroofingだけで、化膿性汗腺炎全体が必ず治るわけではありません。
術後の痛み、出血、感染、治癒の遅れ、傷あとなどが起こる可能性があります。病変の範囲によっては、段階的な手術や追加の治療を検討します。
術後、早めに連絡したい変化
出血が止まらない、痛みや腫れが強くなる、赤みが広がる、発熱がある場合は、予定の再診日を待たず、手術を受けた医療機関へ連絡してください。
再発についての研究を確認する
2010年の研究では、44人の88病変を治療し、15病変(17%)に再発を認めました。再発しなかった73病変の追跡期間は中央値34か月でした。比較群のない研究で、数字は「患者数」ではなく「治療した病変数」を基準にしています。当院の治療成績や、個人の再発率を示すものではありません。[原著]
抗菌薬や生物学的製剤は手術後も必要?
薬物療法は炎症を抑え、手術は残った瘻孔などの構造に対応します。役割が違うため、病変の状態に応じて組み合わせます。手術を受けることだけを理由に、抗菌薬や生物学的製剤が不要になるとは限りません。手術前後の継続・休薬は、処方医と手術担当医に確認し、自己判断で中止しないでください。
手術費用と、相談時に確認すること
費用は、診断、術式、病変の大きさや数、保険適用の可否、自己負担割合、検査、術後処置などで変わります。手術前に、手術自体の費用に加え、診察・薬・被覆材・通院を含む総額の見通しを確認してください。
受診時には「どの場所が、何回腫れたか」「切開しても再発したか」「薬でどこまで改善したか」を伝えると、選択肢を整理しやすくなります。当院では診断・重症度・治療歴を確認し、必要な治療や紹介を検討します。deroofingの実施可否や手術方法は、個別の病変と診療体制を確認してご案内します。
本節の医学的根拠:欧州S2kガイドライン、北米ガイドライン、deroofingの原著および創傷治癒に関する原著。
ヒュミラとビンゼレックスを比較
国内承認用法を簡略化しています。実際の投与は電子添文と処方指示を優先してください。
表は左右に動かして確認できます
| 薬剤 | 標的 | 成人化膿性汗腺炎の主な投与 | 自己注射 | 特に確認すること |
|---|---|---|---|---|
| ヒュミラ | TNFα | 初回160mg、2週後80mg、4週後以降40mg毎週または80mg隔週 | 適切な教育後に可 | 結核・B型肝炎、感染症、脱髄疾患、うっ血性心不全 |
| ビンゼレックス | IL-17A/IL-17F | 320mgを16週まで2週間隔、以後4週間隔。状態により2週/4週を選択 | 4週間隔以内で教育後に可 | カンジダ症、炎症性腸疾患、結核・感染症 |
直接の優劣表ではありません。日本皮膚科学会資料でも両剤の使い分け・優先順位は明確でないとされ、併存症と安全性を含めて選びます。
2026年9月 研究補足
化膿性汗腺炎と血栓症:研究から分かること
化膿性汗腺炎では、皮膚以外の病気や生活背景も含めた健康管理が大切です。2026年9月10日公表の米国の研究は、化膿性汗腺炎と、血の塊が肺の血管に詰まる「肺塞栓症」との関連を報告しました。一方、脚などの深い静脈に血の塊ができる「深部静脈血栓症」は、持病などを考慮した比較では明確な差が確認されませんでした。[研究の出典]
この研究だけで、化膿性汗腺炎が血栓の原因だとはいえません。日本人の発症率や、ヒュミラ・ビンゼレックスの副作用を比較した研究でもありません。研究の数字を理由に自己判断で薬を中止したり、予防薬を始めたりせず、血栓症の既往、動けない期間、服用中の薬などを診察で伝えてください。
研究の数値・限界と資金提供を確認する
米国の医療保険請求データを使い、成人の化膿性汗腺炎44,520人と対照3,792,627人を比較した観察研究です。持病などを考慮したハザード比は、肺塞栓症1.35(95%信頼区間1.14~1.60)、深部静脈血栓症1.12(0.97~1.31)でした。これは追跡中の起こりやすさを比較する統計指標で、個人の発症確率ではありません。深部静脈血栓症の区間は、差がないことを表す1を含みます。
年齢や持病の違いを補正する前の肺塞栓症の発生率は、化膿性汗腺炎群2.4、対照群2.2/1,000人年でした。「1,000人年」は1,000人を1年間観察するのに相当する合計観察期間で、日本の患者さんの年間発症率を示す値ではありません。
病名コードによる分類の誤りや、測定されていない背景要因の影響が残り得ます。皮膚症状の重症度・活動性、血栓が手術などをきっかけに起きたかは評価できず、補足資料の調整項目にも一部記載が不明瞭な点があります。すべての背景の違いを取り除いた比較ではなく、個人の予測や治療薬の選択にそのまま使うことはできません。
資金提供・利益相反:Incyte社が研究・出版等の費用を支援し、研究設計、解析、原稿作成、投稿の判断に関与しています。著者4人は同社の社員・株式保有者で、他の著者にも企業からの報酬等の申告があります。原著本文・表・補足資料(2026年9月13日確認)。
急な胸痛・息切れ、片脚の腫れや痛みがあるとき:皮膚科の定期受診を待たず、早急に医療機関へ。厚生労働省の資料も、こうした症状では早急な受診を案内しています。[血栓症が疑われる場合の対応]
池袋で相談するときの流れ
当院での評価と、生物学的製剤の実際の導入体制を区別して案内します。
部位、再発回数、写真、痛み、排膿、治療歴を確認。
似た疾患を除外し、Hurley分類と活動性を評価。
局所・内服・外科・生物学的製剤の役割を整理。
承認・届出、検査、緊急連携体制に応じて紹介。
受診時にあると役立つもの:お薬手帳、病変の写真、過去の検査結果、手術・切開歴、症状が出た日と部位のメモ。生物学的製剤を検討する場合は、開始施設・検査・紹介の流れを個別に確認します。
よくある質問
deroofing(天井開放術)は切開排膿と同じですか?
異なります。切開排膿は急性の膿瘍から膿を出して痛みを軽くする処置です。deroofingは繰り返す病変や瘻孔を覆う皮膚を取り除き、病変を開放する手術です。適した方法は病変の範囲や深さ、炎症の状態から判断します。
deroofingの傷が閉じるまで、どのくらいかかりますか?
通常は縫い合わせず、創部を保護しながら上皮化を待ちます。数週間以上かかり、範囲・部位・炎症の状態によって長引く場合があります。仕事や運動に戻れる時期は、傷が完全に閉じる時期とは分けて担当医に確認してください。
deroofingを受ければ、再発しなくなりますか?
治療した場所の症状を減らすことを目指しますが、その場所の再発や、別の場所の新しい病変は起こり得ます。薬物療法や継続的な診察を組み合わせて管理します。
deroofingの費用や、当院で手術できるかはどう確認しますか?
まず診察で病変と治療歴を確認します。実施可否や紹介の必要性は、病変の範囲と診療体制に応じて判断します。費用は術式・範囲・保険適用の可否・自己負担割合などで変わるため、検査や術後処置を含めた見通しを事前に確認してください。
粉瘤と化膿性汗腺炎はどう見分けますか?
粉瘤は皮膚の下の袋状構造、中央の開口部、臭いのある粥状の内容物が手がかりになります。化膿性汗腺炎は脇・鼠径部・臀部・胸の下などに痛いしこりや膿瘍を繰り返し、瘻孔や瘢痕を伴うことがあります。ただし、炎症性粉瘤はよく似て見え、両者が併存する場合もあるため、部位、個数、反復性、皮膚の下の構造を診察して判断します。
化膿性汗腺炎は抗菌薬だけで治りますか?
軽症や二次感染では外用・内服抗菌薬を使うことがありますが、慢性炎症、瘻孔、瘢痕がある場合は生物学的製剤や手術を含めて検討します。
日本で承認されている生物学的製剤は?
成人の化膿性汗腺炎にはヒュミラ(アダリムマブ)とビンゼレックス(ビメキズマブ)が承認されています。適応条件・投与間隔・注意点が異なります。
ヒュミラとビンゼレックスはどちらが強いですか?
一律の優劣では選べません。既治療、病変、感染症、炎症性腸疾患、脱髄疾患、心不全、カンジダ症、自己注射、施設体制を合わせて判断します。
切開して膿を出せば治りますか?
急性の痛い膿瘍には切開排膿が役立つことがありますが、慢性的な炎症や瘻孔の再発予防には別の治療が必要なことがあります。
どこで注射を始められますか?
対象薬に対応する承認・届出、導入前検査、緊急対応体制を確認します。当院で重症度と治療歴を整理し、必要に応じて適切な医療機関へ紹介します。
監修医師
診断名だけでなく、重症度・治療歴・安全性・連携方法まで確認しています。
監修医からのメッセージ
PMDA電子添文と患者向医薬品ガイドで照合。
受診判断と処方実務を読み分けやすく整理。
当院での評価と導入・連携体制を区別。
FOR PRESCRIBERS / MEDICAL PROFESSIONALS
処方医向け:化膿性汗腺炎の診断・治療・生物学的製剤
診断・重症度、局所・全身・外科治療、ヒュミラとビンゼレックスの差、安全管理、紹介体制を一続きで確認します。
最新の電子添文、患者向医薬品ガイド、適正使用資料、日本皮膚科学会の施設要件を優先し、患者背景と連携体制に応じて判断してください。
診断・重症度1. 診断、表現型、重症度を分ける
| 領域 | 確認 | 判断への反映 |
|---|---|---|
| 診断 | 典型部位、結節・膿瘍・瘻孔・瘢痕、6か月以内の反復 | せつ・粉瘤・毛巣洞・Crohn肛囲病変・腫瘍等を鑑別 |
| 損傷 | Hurley I〜III、瘻孔・瘢痕の範囲 | 外科治療を含む構造的対応 |
| 活動性 | IHS4、病変数、疼痛、排膿、DLQI | 薬物療法の強度と効果判定 |
治療設計2. 局所・全身・外科を組み合わせる
| 層 | 候補 | 確認 |
|---|---|---|
| 局所 | 摩擦・被覆調整、外用、急性膿瘍への切開排膿 | 切開排膿だけでは長期再発予防にならない |
| 全身 | 国内適応と個別状態に沿った抗菌薬等 | 抗炎症目的と二次感染治療を区別 |
| 生物学的製剤 | アダリムマブ、ビメキズマブ | 既治療、併存症、薬剤固有リスク、施設体制 |
| 外科 | deroofing、局所切除、広範囲切除 | 瘻孔・瘢痕・臀部広範囲病変、SCCリスク |
外科治療の補足deroofingの適応評価と術後管理
- 反復する限局性病変・残存トンネルを評価し、炎症活動性と不可逆的な構造変化を分けて治療計画を立てます。Hurley分類だけで術式を決めず、病変の深さ、交通、範囲、部位、既手術歴、創傷ケアの実行可能性を確認します。
- 単純切開排膿、deroofing、局所・広範囲切除の目的を区別します。deroofingは病変を覆う組織を除去して開放し、底面・周囲組織を可能な範囲で温存する方法です。複雑・広範な病変では専門施設との連携を検討します。
- 術後は通常、二次治癒を待ちます。被覆材は排液量、部位、周囲皮膚、疼痛、費用、患者の希望から選択し、治癒遅延、感染、出血、瘢痕などを経過観察します。周術期の薬物療法は疾患活動性・感染・予定術式を踏まえ、処方医と術者で調整します。
- 研究の再発率は病変単位/患者単位、術式、追跡期間が異なるため、単純に比較しません。局所再発と他部位の新規病変も分けて説明します。
2剤比較3. ヒュミラとビンゼレックスの処方差
| 薬剤 | 標的・用法 | 固有の確認 |
|---|---|---|
| ヒュミラ | TNFα。0週160mg、2週80mg、4週以降40mg毎週または80mg隔週 | 結核/HBV、脱髄疾患、心不全、感染、悪性腫瘍 |
| ビンゼレックス | IL-17A/F。320mgを16週までq2w、以後q4w。状態によりq2w/q4w | 口腔・外陰部カンジダ、IBD、結核、感染 |
| 共通 | 成人、局所療法・抗菌薬後も症状が残る場合に検討 | 軽度での有効性・安全性は未確立。自己注射は教育後 |
導入前検査4. 共通スクリーニング
| 領域 | 確認項目 | 対応 |
|---|---|---|
| 重症度・活動性 | Hurley分類、炎症性結節・膿瘍・排膿性瘻孔、IHS4、疼痛NRS、DLQI | 解剖学的損傷と炎症活動性を分けて記録 |
| 感染症 | 二次感染、結核歴・接触歴、胸部画像、IGRA/TST、必要時CT | 活動性感染・活動性結核を先に治療 |
| 肝炎等 | HBs抗原、HBc抗体、HBs抗体、HCV抗体、必要時HBV-DNA・HIV | 陽性時は専門医と再活性化対策 |
| 一般検査 | CBC、CRP、肝腎機能、妊娠可能性、ワクチン歴 | 薬剤固有リスクと比較できるベースライン |
| 併存症 | IBD、脊椎関節炎、代謝疾患、喫煙、抑うつ、悪性腫瘍歴 | 治療選択・支援・連携先に反映 |
効果判定5. HiSCR、IHS4、疼痛、排膿、QOL
- 病変数だけでなく、排膿性瘻孔、疼痛、排膿頻度、DLQI、就労・睡眠への影響を追跡します。
- ビメキズマブは通常16週以内に反応を評価し、反応がない場合は継続を慎重に再考します。
- アダリムマブは一定時点の一項目だけでなく、炎症性病変・排膿・疼痛・安全性を統合し、漫然投与を避けます。
- 長期臀部・肛囲病変ではSCC徴候を監視し、非典型的な潰瘍・腫瘤・出血・疼痛変化では生検を検討します。
施設・連携6. 開始施設、自己注射、紹介
アダリムマブの学会資料は承認施設での使用を示し、ビメキズマブの学会資料は乾癬生物学的製剤の医師・施設条件に準じるとしています。対象薬・適応に応じ、承認・届出、検査、緊急対応、外科・感染症連携を確認します。IL-17阻害薬の届出施設は公開承認施設一覧に掲載されない場合があるため、一覧だけで導入可否を断定しません。
本節は医療従事者の情報確認を目的とした一般的な整理です。実際の診断・処方・紹介は診察時点の最新資料、検査結果、施設体制に基づいて判断してください。
参考文献・一次資料
- 日本皮膚科学会 化膿性汗腺炎診療の手引き2020
- PMDA ヒュミラ医療用医薬品情報
- PMDA ビンゼレックス医療用医薬品情報
- 日本皮膚科学会 ビメキズマブ使用上の注意
- 日本皮膚科学会 乾癬分子標的薬使用承認施設
- Garg et al. Incidence of Deep Vein Thrombosis and Pulmonary Embolism in Patients with Hidradenitis Suppurativa. Dermatology and Therapy. 2026. doi:10.1007/s13555-026-01913-9.
- 厚生労働省 深部静脈血栓症/肺塞栓症について(疑われる場合の対応)
- Zouboulis CC, et al. European S2k guidelines for hidradenitis suppurativa/acne inversa part 2: Treatment. 2025.(外科治療・Deroofing)
- Alikhan A, et al. North American clinical management guidelines for hidradenitis suppurativa. Part I. J Am Acad Dermatol. 2019;81:76–90.(外科治療・創傷ケア)
- van der Zee HH, Prens EP, Boer J. Deroofing: a tissue-saving surgical technique for the treatment of mild to moderate hidradenitis suppurativa lesions. J Am Acad Dermatol. 2010;63:475–480.
- Krajewski PK, et al. Deroofing: A safe, effective and well-tolerated procedure in patients with hidradenitis suppurativa. 2024.
- Pham J, et al. Predictors of wound healing after surgical deroofing in Hidradenitis Suppurativa. 2024.
最終医学レビュー:2026年9月13日。掲載内容は一般的な医療情報です。実際の診断・処方・紹介は診察時点の最新資料と個々の状態をもとに判断します。
