池袋サンシャイン通り皮膚科の診察室

Skin Disease Basics

ナローバンドUVBと皮膚がん照射回数と長期安全性の研究

2026年9月、ナローバンドUVBの累積照射回数が多いほど、基底細胞がんのオッズが高かったとするフィンランドの研究が発表されました。ただし、観察研究であり、治療による発がんを証明したものではありません。『60回で危険になる』『ここまでなら安全』という回数の線引きもできません。現在治療中の方は自己判断で中断せず、得られている効果、過去の照射歴、皮膚の変化を主治医と確認してください。

監修: 吉井恭平 ナローバンドUVBの長期安全性 最終更新 2026-09-10

まず押さえたい、3つのポイント

01

フィンランドの治療患者4,815人の集団から、皮膚がんの症例と対照を比較した研究です

02

基底細胞がん38例の解析では、累積照射回数と発症のオッズに関連がありました

03

オッズ比は個人の発症確率ではなく、60回は中止基準でも安全限界でもありません

01 / Treatment

ナローバンドUVBは、波長を絞った紫外線を使う治療です

ナローバンドUVB(NB-UVB)は主に311nm付近の紫外線を使う光線療法で、乾癬やアトピー性皮膚炎などの治療で検討されます。炎症を抑える効果が期待される一方、皮膚の赤みなどの反応や、長期間にわたる安全性を確認しながら行います。

今回の研究対象はTL-01という光源によるナローバンドUVBです。薬剤とUVAを組み合わせるPUVA、308nmのエキシマ光・レーザー、美容目的のピコレーザーとは治療方法が異なり、結果をそのまま置き換えることはできません。

02 / Study

研究の対象は4,815人、詳しい比較は皮膚がんの種類ごとです

2026年9月にActa Dermato-Venereologicaに公表された研究は、フィンランドで1999~2019年にTL-01治療を受けた乾癬・アトピー性皮膚炎の患者4,815人の集団を基にしています。皮膚がんの登録情報は1999~2020年を確認しました。

この集団から皮膚がんを発症した人を選び、性別・疾患・出生年などを対応させた対照群と、それまでの照射回数を比較しています。こうした方法を『入れ子型症例対照研究』と呼びます。がんになるまで無作為に治療回数を割り付けた試験ではありません。

解析に含まれた症例と対照
皮膚がんの種類症例対照
基底細胞がん(BCC)38人148人
メラノーマ(悪性黒色腫)13人52人
有棘細胞がん(cSCC)9人35人

4,815人全員が皮膚がんになったわけではありません

4,815人は元になった治療患者集団の人数です。主な結果は、上記の症例と選ばれた対照を比較した解析から得られています。

03 / Results

基底細胞がんでは、累積照射回数との関連が報告されました

基底細胞がんの解析では、照射回数が20回増えるごとのオッズ比は1.36(95%信頼区間1.08~1.72)でした。研究内では、照射回数が多い人で基底細胞がんのオッズが高いという関連が見られたことを示します。

回数別の比較では、1~29回を基準にした60回以上の群のオッズ比は4.16でした。ただし、症例数が少なく信頼区間も広いため、数字の大きさだけで一人ひとりの危険度を決めることはできません。

基底細胞がんと累積照射回数の関連
比較オッズ比95%信頼区間
照射20回増加ごと1.361.08~1.72
30~59回 対 1~29回1.920.81~4.60
60回以上 対 1~29回4.161.49~11.6

補足解析でも同じ方向の関連でした

直近の光線療法から1年以内に診断された症例と対応する対照を除く解析では、基底細胞がん35例・対照136例となり、20回増加ごとのオッズ比は1.46(95%信頼区間1.13~1.88)でした。ただし、これだけで交絡や潜伏期間の問題が解消するわけではありません。

04 / Interpretation

オッズ比4.16は、個人の発症確率が4.16倍という意味ではありません

オッズ比は症例と対照の比較から得られる指標です。この研究の数値を、治療を受けた人の発症率や『自分が何%の確率で皮膚がんになるか』に換算することはできません。信頼区間は推定の不確かさを示し、特に60回以上の群では幅があります。

また、60回は解析のために設定された区分です。60回目で急に危険になることや、59回までなら安全なことを検証していません。治療を止める回数、診察や検査の一律の間隔を決める根拠にはできません。

メラノーマと有棘細胞がんでは照射回数との統計的に明確な関連は示されませんでしたが、それぞれ13例と9例です。『関連を検出できなかった』ことを『リスクがないと証明された』と受け取らないことが大切です。

05 / Limitations

日常の日光、肌質、薬の影響を十分に切り分けられていません

紫外線治療以外の日光曝露や日焼け、肌のタイプ、全身性の免疫抑制治療などを十分に調整できていません。照射1回当たりの線量にも違いがあり、回数だけでは皮膚が受けた紫外線の総量を正確に表せません。

皮膚科で頻繁に診察を受ける人ほど病変が見つかりやすい可能性や、治療からがん診断までの時間の影響も残ります。観察研究からは、ナローバンドUVBが基底細胞がんの原因だったと断定できません。

対象はフィンランドの患者で、アトピー性皮膚炎に限った基底細胞がんは3例でした。日本人、小児、アトピー患者全体の危険度を、この結果だけで決めることもできません。

研究はEADV、フィンランド皮膚科学会、Finnish Cultural Foundationの支援を受け、著者らは利益相反なしと申告しています。

06 / Guidance

国内指針と治療の利益を踏まえて、継続を個別に相談します

日本皮膚科学会の乾癬Q&Aでは、ナローバンドUVBを乾癬の光線療法の一つとして説明しています。アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024のCQ23でも、標準的な治療で十分改善しない中等症以上の患者などに、光線療法を検討する位置づけが示されています。

同ガイドラインは、ナローバンドUVBの小児での長期安全性に十分なデータがないことなどにも注意を促しています。今回の研究は長期安全性を考える新しい材料ですが、国内指針をそのまま取り消したり、全員に治療中止を勧めたりするものではありません。

皮膚がんの既往、光に過敏な病気、併用薬などによって判断は変わります。主治医と、症状や生活への効果、今後の照射計画、他の治療の選択肢、皮膚の観察方法を確認しましょう。薬や照射予定を自己判断で変更しないでください。

07 / Consultation

受診時は、照射歴と新しい皮膚の変化を伝えてください

別の医療機関で受けたものも含め、光線療法の種類、時期、分かる範囲の回数をまとめると役立ちます。回数が分からない場合も、そのまま主治医へ伝えて構いません。記録がそろうまで受診を遅らせる必要はありません。

新しいしこり、繰り返し出血する部分、治りにくいただれ、色や形が変わる病変などは、照射との因果関係を自分で決めず診察で見せてください。写真は経過を伝える補助になりますが、写真だけで皮膚がんかどうかを診断することはできません。

  • これまでの光線療法の種類・時期・回数
  • 皮膚がんの既往と内服薬・外用薬
  • 症状の改善や生活上の利益
  • 新しく現れた、または変化している皮膚の病変

池袋で紫外線治療中の皮膚の変化を相談したい方へ

池袋で皮膚科受診をご検討の方へ

受診時は、乾癬やアトピーの症状に加え、過去に受けた光線療法の種類、医療機関、回数が分かる記録、内服薬・外用薬、皮膚がんの既往をお持ちください。他院で治療中の場合も、処方や照射予定の変更は治療を担当する医師と相談します。

当院へ皮膚症状を相談する際は、いつから・どの部位に・どのような変化があるかをお伝えください。光線療法の継続や機器の選択は、実際の診察と治療施設での判断が必要です。

FAQ

よくある質問

ナローバンドUVBを60回受けたら中止すべきですか?

60回は研究の解析区分であり、中止基準ではありません。59回までの安全性も証明していません。治療効果、累積照射歴、既往歴などを主治医と確認し、自己判断で中止しないでください。

オッズ比4.16は、自分の発症確率が4.16倍ということですか?

この数値を個人の発症確率や発症率に置き換えることはできません。症例と対照を比較したオッズ比で、推定には大きな幅があり、他の紫外線曝露などの影響も残っています。

メラノーマとの関連がなければ安心ですか?

今回のメラノーマは13例で、照射回数との明確な関連を検出できなかったという結果です。リスクがないことを証明した研究ではありません。

PUVAやエキシマ、美容レーザーにも同じ数字が当てはまりますか?

当てはまりません。研究対象はTL-01ナローバンドUVBです。波長や照射方法の異なるPUVA、308nmエキシマ、美容レーザーに同じオッズ比を使うことはできません。

日本人や子どものアトピーでも同じリスクですか?

この研究だけでは判断できません。対象はフィンランドの患者で、アトピーに限った基底細胞がんは3例でした。国内指針も、小児の長期安全性に十分なデータがない点に注意を促しています。

参考文献
  1. Åkerla P, et al. 2026年のTL-01ナローバンドUVB累積照射回数と皮膚がんに関する入れ子型症例対照研究. Acta Dermato-Venereologica. doi:10.2340/actadv.v106.adv-2025-0274(本文・表I/II・図1).
  2. 同研究の補足表SI:直近の光線療法から1年以内の診断を除外した感度分析.
  3. 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 乾癬Q16:光線療法について.
  4. 日本皮膚科学会ほか. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024. CQ23:紫外線療法.