
Skin Disease Basics
水虫・たむしの薬が効かない?耐性白癬と検査の考え方
水虫やたむしの薬を使っているのに広がる、いったんよくなっても繰り返すと不安になります。原因は薬剤耐性だけでなく、別の病気、塗る量や期間、足・爪からの再感染、ステロイド配合薬の影響などさまざまです。2026年には、治療しにくい白癬で注目されるTrichophyton indotineae(トリコフィトン・インドティネアエ)を迅速に見分ける分子検査の研究が報告されました。研究の意味と限界、日本の状況、受診時に確認したいことを整理します。
Key Points
まず押さえたい、3つのポイント
水虫・たむしが治らない原因は、耐性以外にも誤診、塗り方、爪や足からの再感染などがある
T. indotineaeは通常の検査だけでは近縁菌と区別しにくく、菌種同定や耐性評価が必要になることがある
2026年の迅速検査研究は高い精度を示したが、日常診療へ広く実装済みという意味ではない
効かない薬を自己判断で重ねたり、内服薬を個人輸入したりしないでください
見た目だけでは白癬と湿疹などを区別できず、薬を重ねるとかぶれや肝障害、相互作用の危険があります。塗り薬・飲み薬を自己変更せず、個人輸入も避け、製品名、使った期間、改善と悪化の経過を医療機関へ伝えてください。
薬が効かない白癬を、すべて耐性菌とは判断できません
白癬は皮膚糸状菌という真菌が皮膚、爪、毛に感染して起こります。足では水虫、体や股ではたむしと呼ばれます。赤み、かゆみ、皮むけ、輪のような発疹は湿疹、接触皮膚炎、乾癬などでも起こるため、見た目だけで診断することはできません。
治りにくいときは、①そもそも白癬ではなく別の病気である、②薬が感染部位へ十分届いていない、③足や爪など未治療の部位から再感染している、④家族や競技・生活環境で再び感染する、⑤真菌が薬に効きにくい、という順に幅広く考えます。市販薬が効かなかったという事実だけでは耐性を証明できません。
T. indotineaeは、体部白癬や股部白癬など広い皮疹を起こし、テルビナフィンに耐性を示す株が問題になっている皮膚糸状菌です。近縁のT. mentagrophytes–interdigitale複合体と通常の形態だけで区別しにくく、必要に応じて分子生物学的な菌種同定を行います。
耐性を含めた再評価を考えるのは、診断どおりに治療しても改善しないときです
医師が白癬と確認し、指示された薬を適切な量・期間使っても改善しない、いったん縮小してもすぐ再燃する、体や股の広い範囲へ拡大する場合は、菌種や薬剤感受性を含めた再評価が必要になることがあります。最近の海外滞在、家族や同居人の同様の発疹、格闘技など密接な皮膚接触も診察時の情報になります。
一方、自己判断で数日だけ塗った、症状が消えてすぐ中止した、爪白癬や足白癬が残っている、同じタオルやマットを共有している場合は、耐性がなくても再燃し得ます。塗り薬による接触皮膚炎が重なり、赤みやかゆみだけが続くこともあります。
ステロイドを含む薬を白癬へ単独または長期間使うと、典型的な輪郭が不明瞭になり、範囲が広がることがあります。これを白癬の薬剤耐性と混同せず、現在までに使った薬をすべて医師へ見せることが重要です。
治らない理由を、診断・使い方・感染源・耐性の4方向から確認します
まず、患部の角質や爪を顕微鏡で調べ、真菌が見えるか確認します。薬を塗った直後は検出しにくくなることがあるため、自己判断で中止期間を設けず、検査前の薬の扱いを医療機関へ確認してください。
次に、薬の剤形、塗った範囲、回数、期間を確認します。見えている発疹だけに少量を塗ると周囲の感染部位が残ることがあります。爪白癬、足白癬、頭部白癬では感染部位へ薬が届きにくく、体部白癬と同じ治療でよいとは限りません。
最後に、十分な治療でも改善しない場合や集団発生が疑われる場合に、培養、菌種同定、薬剤感受性、耐性に関連する遺伝子変異の確認を検討します。検査法と依頼先は施設によって異なり、結果が出るまで時間がかかる場合があります。
- 白癬かどうかを再確認
- 使った薬・量・期間を確認
- 足・爪・家族内などの感染源を確認
- 必要時に菌種・感受性・耐性変異を評価
2026年研究:T. indotineaeを迅速に見分ける2つの分子検査
Lancet Microbeに2026年7月掲載された研究では、公開データベースのITS配列5,584件を調べ、品質基準を満たす4,744件からT. indotineaeに特異的な候補領域を探索しました。その後、全ゲノム比較でOG7443という標的を選び、duplex endpoint PCRとTaqManリアルタイムPCRを設計しました。
培養株を用いたduplex PCRでは、T. indotineae 57株をすべて検出し、近縁菌など105株をすべて陰性と判定しました。報告された感度は100%(95%信頼区間93.7~100)、特異度は100%(96.5~100)でした。TaqMan法も培養株と皮膚掻爬検体を合わせたT. indotineae 53件をすべて検出し、対照160件をすべて陰性としました。
試薬などの消耗品費は、研究環境で1検体あたりduplex PCR 0.39米ドル、TaqMan法4.24米ドルと試算されました。ただし装置、人件費、品質管理、輸送などは別です。この数字は日本の診療費や患者負担を示すものではありません。
高い精度は有望ですが、対象数は限られ、中国2施設とオランダ1施設の検体が中心です。著者らも、特に培養を介さない直接検体について、より大規模な前向き検証が必要としています。日本の一般皮膚科でこの検査が標準実装済みという意味ではありません。
- 配列4,744件から特異的標的を探索
- duplex PCR:57/57陽性、105/105陰性
- TaqMan法:53/53陽性、160/160陰性
- 日本の日常診療での普及や費用を示す研究ではない
日本の耐性状況:2020年以降の1,019株で26株にテルビナフィン耐性
2026年に日本医真菌学会誌で公表された国内サーベイランスでは、2020年以降に日本で分離された皮膚糸状菌1,019株を解析しました。菌種はT. rubrum 62.4%、T. interdigitale 37.4%、T. indotineae 0.2%で、26株がテルビナフィン耐性でした。耐性株ではすべて、薬の標的であるスクアレンエポキシダーゼ(SQLE)遺伝子に変異が確認されました。
年別の耐性率は2020年2.3%、2022年1.4%、2023年3.2%、2024年3.3%と報告されています。ただし、全国の患者を無作為に抽出した有病率調査ではなく、研究へ集められた分離株の解析です。『日本の水虫患者の3.3%が耐性』と読み替えることはできません。
同じ2026年には、SQLE遺伝子変異を伴うT. indotineaeの日本初症例も報告されました。国内でも存在を考える必要はありますが、T. indotineae自体はサーベイランスで0.2%でした。珍しい菌を恐れるより、治療反応が悪い場合に正確な診断と検査へつなぐことが大切です。
皮膚科での検査:まず真菌を確認し、必要時に菌種・感受性を調べます
日本皮膚科学会の一般向けQ&Aも、足白癬は症状だけで診断できず、皮膚の一部を採取して顕微鏡で真菌を確認することが重要と説明しています。採取部位や直前の治療で結果が変わることがあるため、陰性でも臨床経過に応じて再検査や別の病気の検討が必要です。
菌が確認され、治療しにくい経過がある場合は培養や菌種同定を検討します。T. indotineaeは近縁菌と形態が似ているため、ITS配列解析や種特異的PCRなどの分子法が必要になることがあります。テルビナフィン耐性では、薬剤感受性試験やSQLE遺伝子変異の確認が手がかりになります。
これらの検査はすべての医療機関で当日にできるものではありません。症状、既往の治療、検査結果を踏まえ、必要なら大学病院や検査可能な施設と連携します。迅速PCR研究の結果だけから、個々の患者さんの菌種や効く薬を自己判断することはできません。
治療は部位・菌種・感受性・持病・併用薬を合わせて選びます
体や足の限局した白癬では外用抗真菌薬が基本ですが、広範囲、毛や爪への感染、再発、治療抵抗性などでは内服薬を検討することがあります。耐性が疑われても、薬剤感受性の結果だけでなく、感染部位、重症度、年齢、肝機能、妊娠の可能性、併用薬を合わせて治療を決めます。
国内のテルビナフィンとイトラコナゾールの添付文書には、肝機能障害や血液障害などの注意があります。イトラコナゾールは相互作用が多く、併用できない薬もあります。『別の薬なら効くかもしれない』と個人輸入したり、家族の薬を使ったりしないでください。
治療開始後は、皮疹の広がり、かゆみ、痛み、薬による発疹や体調変化を記録します。急速に広がる、化膿や強い痛みがある、発熱する、顔や頭へ拡大する、基礎疾患や免疫を抑える治療がある場合は、早めに相談してください。
受診時は、使った薬と時間経過を具体的に伝えてください
持参したい情報は、薬の箱や写真、塗った回数と期間、飲み薬の開始日、いったん改善したか、どこからどこへ広がったか、同居人に同じ症状があるかです。発疹は日によって見え方が変わるため、全体と近接の写真を日付つきで残すと経過を共有しやすくなります。
受診前に薬を勝手に中断したり、新しい薬を追加したりする必要はありません。検査への影響も含め、予約時または診察時に指示を確認してください。タオルや衣類を共有しない、患部を触った後に手を洗うなど、無理のない範囲で感染拡大を減らします。
薬が効かない白癬では、耐性菌の有無だけを追うのではなく、診断、感染部位、治療の届き方、再感染源を一つずつ確認することが近道です。T. indotineaeの迅速検査は有望な研究成果ですが、実際の検査と治療は医療機関で個別に判断します。
Ikebukuro Local Care
池袋で治りにくい水虫・たむしを相談したい方へ
池袋で皮膚科受診をご検討の方へ
池袋駅周辺や東池袋で、水虫・たむしの薬を使っても改善しない、範囲が広がる、何度も再発する場合は、使った薬の名前や写真、使用期間を持って皮膚科へご相談ください。まず本当に白癬か、足・爪・股・体など複数部位に病変がないかを確認します。
池袋サンシャイン通り皮膚科では、症状と治療歴を確認し、必要に応じて角質の顕微鏡検査などを行います。菌種同定や薬剤感受性評価が必要と判断した場合は、検査可能な施設との連携を検討します。すべての受診者へ同じ検査を行うわけではありません。
よくある質問
市販の水虫薬が効かなければ、耐性菌ですか?
耐性菌とは限りません。湿疹など別の病気、塗る量・期間、爪や足からの再感染、薬によるかぶれなども考えます。見た目だけで判断せず、使った薬を持って皮膚科で真菌検査を相談してください。
T. indotineaeは日本にもいますか?
います。2026年にSQLE遺伝子変異を伴う日本初症例が報告され、国内サーベイランスでも検出されています。ただし同サーベイランスで占めた割合は0.2%で、治りにくい白癬がすべてT. indotineaeという意味ではありません。
普通の顕微鏡検査でT. indotineaeと分かりますか?
顕微鏡検査は真菌の存在確認に重要ですが、通常は菌種まで確定できません。培養後の形態でも近縁菌と区別しにくいため、必要に応じてITS配列解析や種特異的PCRなどを検討します。
記事の迅速PCRは日本の皮膚科ですぐ受けられますか?
研究で高い精度が示されましたが、日本の一般診療で広く標準実装済みという報告ではありません。検査の必要性と依頼先は、症状やこれまでの治療を確認したうえで医療機関が判断します。
テルビナフィンが効かなければイトラコナゾールへ変えてよいですか?
自己変更しないでください。診断や感染部位の再確認が必要で、内服薬には肝機能障害や薬物相互作用などの注意があります。医師が検査結果、持病、併用薬を確認して治療を選びます。
家族にうつさないために何ができますか?
タオルや衣類、足拭きマットの共有を避け、患部を触った後は手を洗います。足や爪など別の感染部位、同居人の症状、ペットとの接触も診察時に伝えてください。過度な消毒や薬の共用は避けます。
この記事の監修医師
吉井恭平|池袋サンシャイン通り皮膚科 院長
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医療法人御照会を中心とした医療グループ
- Jin L, et al. Development and validation of two rapid molecular assays for differentiating Trichophyton indotineae from closely related species. Lancet Microbe. 2026. PMID: 42537682.
- Jin L, et al. Lancet Microbe. 2026. doi:10.1016/j.lanmic.2026.101462.
- 日本で分離されたテルビナフィン(TBF)耐性皮膚糸状菌の動向. 日本医真菌学会雑誌. 2026;67(2):41-48. doi:10.11534/ishinkin.26.004.
- Terbinafine-Resistant Trichophyton indotineae: First Japanese Case with SQLE Gene Mutation. Med Mycol J. 2026;67(2):151-156. doi:10.3314/mmj.25-00030.
- 日本皮膚科学会 皮膚真菌症診療ガイドライン2019.
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 水虫 Q11『水虫は見ただけで診断できますか?』.
- PMDA テルビナフィン塩酸塩錠125mg 添付文書(2024年改訂).
- PMDA イトラコナゾールカプセル50mg 添付文書.