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Skin Disease Basics

限局性強皮症モルフェア|2026年版診療ガイドライン

限局性強皮症(モルフェア)は、境界のはっきりした皮膚の硬化が現れ、ときに皮下組織、筋膜、筋肉、骨まで及ぶ自己免疫性疾患です。名前は似ていますが、レイノー現象や内臓の線維化を特徴とする全身性強皮症とは別の病気です。2026年版ガイドラインから、どの変化を活動性として捉えるか、診断・画像評価、治療の選び方、推奨の確かさを整理します。

監修: 吉井恭平 限局性強皮症(モルフェア) 最終更新 2026-08-23

まず押さえたい、3つのポイント

01

限局性強皮症は皮膚とその下の組織に限局する硬化性疾患で、全身性強皮症とは別の病気

02

活動性は新しい病変、拡大、紅斑・紫色の縁、硬化の進行などを経時的に評価する

03

診断は皮膚所見、病理組織、全身性強皮症などの除外を組み合わせ、深さはMRI・超音波も検討する

けいれん、急な手足の動かしにくさ、意識の変化がある場合は通常予約を待ちません

顔・頭部の線状病変に新しいけいれん、急な片側の脱力、意識の変化、激しい頭痛や急な視力変化を伴う場合は、限局性強皮症だけと自己判断せず、119番通報を含め直ちに救急対応につなげてください。関節をまたぐ病変、手足の成長差、開口・咀嚼のしにくさ、進行する顔面の左右差は、救急症状がなくても早めの専門評価が必要です。

01 / Overview

まず結論:限局性強皮症は全身性強皮症とは別の病気です

限局性強皮症(localized scleroderma、モルフェア)は、皮膚と、その下にある脂肪組織・筋膜などの限られた場所に炎症と線維化が起こる病気です。典型例では、境界のはっきりした硬い局面が現れ、初期には中央が象牙色で周囲にライラックリングと呼ばれる紫がかった赤みを伴うことがあります。

全身性強皮症は、レイノー現象や肺・心臓・腎臓・消化管などの病変を伴い得る全身疾患です。限局性強皮症は通常、レイノー現象や内臓の線維化を特徴としません。また、全身性強皮症の分類にある『限局皮膚硬化型』とも別の意味です。

一方で、限局性という名前でも、深部へ進むと筋・腱・骨、関節機能に影響することがあります。頭や顔の線状型では、まれに神経・眼・顎顔面の合併症が報告されるため、皮膚の広さだけで軽いとは決めません。

  • 皮膚と下床組織の自己免疫性疾患
  • 全身性強皮症とは別
  • 深さと部位で機能への影響が変わる
  • 小児にも成人にも発症
02 / Patterns & Activity

病型と活動性:新しく出る・広がる・硬さが進む変化を見ます

2026年版はPadua分類を採用し、斑状型、線状型、汎発型、全身硬化型、複数病型が混在する混合型に分けています。成人では斑状型が多く、小児では線状型が多いとされます。線状型は四肢や頭部に生じ、深部の萎縮、関節拘縮、小児の患肢の成長障害につながることがあります。

活動性のある病変では、新しい局面の出現、既存病変の拡大、赤みや紫色の縁、硬化の進行などを確認します。活動性が落ち着いた後も、萎縮、色素変化、関節可動域制限、整容面の問題が残ることがあります。活動性と、残ったダメージを分けて考えることが治療選択に重要です。

同じ照明・距離・角度で撮った写真は広がりの比較に役立ちますが、硬さ、深さ、熱感、関節の動きは写真だけでは評価できません。病変の縁と全体、関節を含む位置関係を記録し、診察所見と組み合わせます。

  • 斑状・線状・汎発型など5病型
  • 新規病変と拡大は活動性の手がかり
  • 活動性と後遺するダメージを分ける
  • 写真は補助であり診断そのものではない
03 / Diagnosis

診断基準:皮膚所見・病理組織・他疾患の除外を組み合わせます

ガイドラインの診断基準は、①境界明瞭な皮膚硬化局面、②病理組織で真皮の膠原線維の膨化・増生、③全身性強皮症、好酸球性筋膜炎、硬化性萎縮性苔癬、ケロイド・肥厚性瘢痕、硬化性脂肪織炎などを除外できること、の3項目をすべて満たす構成です。

血液検査には抗核抗体などの異常がみられることがありますが、限局性強皮症に特異的な検査はなく、血液検査だけで診断できません。診断が難しい場合や病期を確認する場合は、臨床所見に合わせて皮膚生検を検討します。

湿疹やかぶれ、瘢痕など見た目が近い状態もあります。硬い、へこむ、色が変わるという印象だけで自己診断せず、発症時期、外傷・注射・放射線治療などとの時間関係、広がり方、他の症状を一緒に確認します。

  • 境界明瞭な硬化局面
  • 病理組織で膠原線維の変化
  • 全身性強皮症などを除外
  • 血液検査だけでは診断できない
04 / Depth & Severity

深さと重症度:MRI・超音波、関節機能、神経・眼・顔面への影響を確認します

脂肪組織、筋膜、筋、腱、骨への広がりを調べる際は、造影MRIや超音波検査が検討されます。MRIは早期の深部病変や骨病変、頭部線状型の脳病変評価に有用ですが、造影剤、腎機能、小児の撮影条件などを考慮します。超音波は繰り返しやすい一方、評価には技術が必要です。

ガイドラインは国内向けにLoS-JSS(0~12点)とLoS-ADLを暫定提案しました。深部病変、関節拘縮、成長障害、神経・眼・顎顔面の合併症、病変の広がり・活動性と、日常生活への支障を組み合わせて評価します。

ただし、これらは外的妥当性が十分に確立しておらず、今後の前向き研究で検証が必要な尺度です。点数表を自己採点して治療を決めるものではなく、年齢、病型、活動期か非活動期か、画像、生活への影響を医師が総合判断します。

  • 深部病変はMRI・超音波を検討
  • 関節・成長・神経・眼・顔面も評価
  • LoS-JSSとLoS-ADLは暫定尺度
  • 自己採点で治療を決めない
05 / 2026 Guideline

2026年版の作り方:推奨の強さとエビデンスの確かさは別に読みます

今回の第2版は2016年版を改訂し、原則としてPubMedの1966~2023年文献とハンドサーチを用いて20のクリニカルクエスチョンを評価しました。Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020を参考に、修正Delphi法で合意形成しています。

推奨度1は『推奨する』、2は『選択肢として提案する』です。一方、エビデンスAは効果推定への確信が高く、Dは症例報告や専門家意見などで確信が低いことを示します。『1D』は強い推奨でも根拠の確実性が低いという意味で、数字だけを切り離して読みません。

希少疾患のため、大規模な比較試験が少なく、多くのCQが症例集積・症例報告に依存します。推奨は利益と不利益、患者の価値観、国内での実行可能性も含めた作成時点の判断であり、個別診療を一律に決める命令ではありません。

  • 20 CQ
  • 推奨度1・2
  • エビデンスA~D
  • 希少疾患で低確実性のCQが多い
06 / Treatment Strategy

治療の入口:活動性、深さ、関節をまたぐかで局所療法と全身療法を分けます

CQ1は、活動性のある皮膚病変には局所療法または全身療法を行うことを1Dで推奨し、活動性のある関節病変には全身療法を1Dで推奨しています。活動性のない皮膚病変では機能障害・整容面に理学療法や外科治療を2Dで提案し、活動性のない関節病変では理学療法を2Dで提案します。

限られた表在性の活動病変では、副腎皮質ステロイド外用薬が1D、タクロリムス外用薬が1Cです。副腎皮質ステロイドはランクや期間の確かな根拠がなく、長期使用による皮膚萎縮に注意します。外用薬だけを漫然と続け、必要な全身療法の開始を遅らせないことも明記されています。

病変が深い、急速に広がる、線状型・汎発型、関節をまたぐ、機能障害がある場合は全身療法が検討されます。治療選択は病型名だけではなく、現在の活動性と将来の機能障害リスクを合わせて判断します。

  • 活動性病変を早期に治療
  • 局所療法は限られた表在性病変
  • 関節病変は全身療法を検討
  • 非活動期は機能・整容面への対応
07 / Systemic & Light Therapy

全身療法・光線療法:推奨度だけでなく適応外使用と副作用を確認します

全身療法の適応がある皮膚病変には、グルココルチコイド全身療法が1Cです。メトトレキサートとの併用は1Bで推奨され、メトトレキサート単独は2Cで提案されています。全身性ステロイド単独は中止後の再燃が報告され、感染、内分泌異常、小児の成長などの管理が必要です。

ミコフェノール酸モフェチルは1Dで、主にセカンドラインとして位置づけられています。全身JAK阻害薬は2Dで、根拠は症例集積・症例報告です。シクロスポリンや生物学的製剤も低確実性の選択肢が中心で、標準治療として一律に勧められる段階ではありません。

UVA1、UVA、PUVA、NB-UVB、エキシマ光線はそれぞれ2Cですが、限局性強皮症には保険適用がなく、光毒性皮膚炎や長期的な皮膚がんリスクに注意します。関節を越えるなど合併症リスクが高い病変では、光線療法よりメトトレキサート主体の全身療法が示唆されています。

  • MTX+全身性ステロイドは1B
  • MMFは低確実性の第二選択
  • JAK阻害薬は症例報告中心
  • 光線療法は適応・安全性を個別判断
08 / Limits & Safety

行わない推奨と限界:新しい治療名があっても有効性を断定しません

全身カルシトリオールは1C、インターフェロンγ全身投与は1A、局所光線力学療法は1Bで、治療に用いないことが推奨されています。症例報告で改善例があっても、比較試験で効果が確認されない、またはより確かな否定的根拠がある場合は、個々の成功例だけで一般化しません。

一方、JAK阻害薬や生物学的製剤などは『選択肢として提案』されても、エビデンスDが多く、少数例の結果です。推奨度の数字、薬の新しさ、SNSや症例報告だけで自己選択・個人輸入・手持ち薬の転用をしないでください。

改訂作業は厚生労働省難治性疾患政策研究事業23FC1018の一環です。委員は過去3年の利益相反を自己申告し、関連CQでは必要に応じ投票を棄権する規定でした。ガイドライン自体も、今後の研究で内容が変わり得るとしています。

  • カルシトリオール全身投与は行わない
  • インターフェロンγ全身投与は行わない
  • 局所PDTは行わない
  • 新規薬の多くは低確実性
09 / Before Your Visit

診察で伝えること:部位・広がり・日付・深部症状を一緒に記録します

病変に気づいた日、どこからどの方向へ広がったか、色と硬さの変化、新しい病変、痛み・かゆみ、熱感を記録します。写真は同じ明るさ・距離で、全体、周囲との位置関係、縁が分かる写真を残します。皮膚へ線を引いたり強く押したりして確認する必要はありません。

関節をまたぐか、手足を曲げ伸ばししにくいか、左右の長さや太さに差が出ていないか、顔・頭部、口の開けにくさ、噛みにくさ、目の症状、頭痛やけいれんの有無を伝えます。小児では成長とともに差が目立つこともあるため、過去の写真や健診記録も参考になります。

使用中の外用薬・内服薬、お薬手帳、治療歴と反応、副作用も持参します。受診後は、活動性の評価方法、深部画像が必要か、治療目標、適応外使用の有無、必要な血液モニタリング、再診時期を確認してください。

限局性強皮症の部位、広がり、経過を親子で記録して診察へ備える生成イメージ
病変の部位、広がり、日付、動かしにくさを記録する場面の生成イメージです。実在患者さんの写真・診療記録・診断用画像ではありません。
  • 病変の出現日と拡大方向
  • 色・硬さ・深さの変化
  • 関節可動域と左右差
  • 神経・眼・口腔症状
  • 薬・治療反応・副作用

池袋で皮膚の硬い局面やモルフェアを相談したい方へ

池袋で皮膚科受診をご検討の方へ

池袋駅・東池袋周辺で、皮膚の一部が白っぽい、紫色の縁がある、徐々に硬くなる、へこむ、動かしにくいと感じる場合は、いつから・どの方向へ広がったかが分かる写真とメモをご持参ください。触った硬さは写真だけでは判断できないため、診察で皮膚所見と深さを確認します。

池袋サンシャイン通り皮膚科では一般皮膚科として診察し、必要に応じて皮膚生検、画像検査、血液検査、専門施設・小児科・整形外科・眼科などとの連携を検討します。顔・頭部、関節をまたぐ病変、小児の四肢、神経症状がある場合は早めにお伝えください。

FAQ

よくある質問

限局性強皮症は全身性強皮症へ進行しますか?

限局性強皮症と全身性強皮症は別の病気です。限局性強皮症は通常、レイノー現象や内臓の線維化を特徴としません。ただし診断時には全身性強皮症などを除外し、症状に応じて評価します。

白く硬い皮膚があればモルフェアですか?

見た目だけでは診断できません。ガイドラインの診断基準は、境界明瞭な硬化局面、病理組織所見、全身性強皮症などの除外を組み合わせます。瘢痕、ケロイド、硬化性萎縮性苔癬なども鑑別します。

血液検査で限局性強皮症と分かりますか?

抗核抗体などが陽性になることはありますが、限局性強皮症に特異的な血液検査はなく、血液検査だけで診断できません。皮膚所見、必要に応じた生検や画像を合わせます。

限局性強皮症は塗り薬だけで治療できますか?

限られた表在性の活動病変では外用療法が候補ですが、深い病変、線状型・汎発型、急速な拡大、関節や機能への影響がある場合は全身療法を検討します。外用薬だけを漫然と続けないことが重要です。

JAK阻害薬は限局性強皮症の標準治療ですか?

2026年版では全身JAK阻害薬は2Dで、症例集積・症例報告が中心です。標準治療として一律に勧められる根拠ではなく、適応外使用や感染症などを含め専門的な判断が必要です。

早めに受診した方がよい限局性強皮症の変化はありますか?

新しい病変、拡大、硬さの進行、関節をまたぐ病変、手足の動かしにくさや成長差、顔・頭部の病変、口・目・神経症状がある場合は早めに相談してください。けいれん、急な脱力、意識変化は救急対応が必要です。

池袋サンシャイン通り皮膚科 院長 吉井恭平

この記事の監修医師

吉井恭平|池袋サンシャイン通り皮膚科 院長

限局性強皮症は、見えている面積だけでなく、いま広がっているか、皮下や筋膜へ及んでいないか、関節・成長・顔面・神経への影響がないかを確認する病気です。診察時に変化が分かる写真と日付があると、活動性を判断する助けになります。
2026年版には多くの治療名が並びますが、推奨度と根拠の確実性、保険適用は同じではありません。外用薬や免疫抑制薬を自己判断で始めたり転用したりせず、病型と活動性に合う治療目標を共有しましょう。
参考文献
  1. 日本皮膚科学会. 限局性強皮症診療ガイドライン2026(第2版). 日本皮膚科学会雑誌 136巻9号, 1533-1584.
  2. 限局性強皮症診療ガイドライン2026(第2版)本文PDF(52ページ).
  3. DOI: 10.14924/dermatol.136.1533.
  4. 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A:限局性強皮症の治療.
  5. 厚生労働省 令和8年4月時点の指定難病:全身性強皮症(告示番号51).