
ステロイド外用薬は皮疹と部位で選びます
薬名だけで強弱を判断せず、診断、炎症の強さ、皮膚の厚さ、塗る面積、期間を合わせて決めます。
同じ湿疹でも、赤み、腫れ、苔癬化、びらん、掻破の程度で必要な強さが変わります。
皮疹を確認約0.5gで成人の手のひら約2枚分が目安です。薄く伸ばし過ぎると効きにくくなります。
量を確認強い薬を漫然と続けず、再診で減量、間欠使用、保湿・非ステロイド外用への移行を判断します。
出口を確認強さ・役割から薬を確認する
掲載する13薬を国内ランクと配合剤に分けています。同じランクでも剤形、部位、処方目的が異なります。
ストロンゲスト(I群)
最も強いランク。厚い難治性皮疹に部位と期間を限定して使います。
ベリーストロング(II群)
重症の炎症や苔癬化で寛解導入に使い、改善後は速やかに見直します。
モメタゾンフランカルボン酸エステル。強い赤み、腫れ、苔癬化を伴う湿疹・皮膚炎や乾癬などで検討されます。
詳しく見るベリーストロングアンテベート(ベタメタゾン)ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル。炎症や厚みが強い湿疹・皮膚炎、乾癬などで短期間検討される外用薬です。
詳しく見るベリーストロングマイザー(ジフルプレドナート)ジフルプレドナート。苔癬化や強い赤みを伴う湿疹・皮膚炎、乾癬などで検討します。
詳しく見るベリーストロングビスダーム(アムシノニド)アムシノニド。炎症が強い湿疹・皮膚炎、乾癬などで、部位を選んで使うステロイド外用薬です。
詳しく見るストロング(III群)
中等症の体幹・四肢などで使われることが多いランクです。
デキサメタゾン吉草酸エステル。中等度以上の赤み、かゆみ、掻破を伴う湿疹・皮膚炎などで使います。
詳しく見るストロングリンデロンV(ベタメタゾン吉草酸)ベタメタゾン吉草酸エステル。湿疹・皮膚炎や乾癬など、中等度以上の炎症を短期間で抑える目的で使います。
詳しく見るミディアム(IV群)
軽症から中等症で使い、顔・首・小児では期間を短く管理します。
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル。軽症から中等症の湿疹・皮膚炎で、部位と年齢を見ながら使います。
詳しく見るミディアムアルメタ(アルクロメタゾン)アルクロメタゾンプロピオン酸エステル。軽症から中等症の湿疹・皮膚炎で、顔や首を含め部位に配慮して使います。
詳しく見るミディアムキンダベート(クロベタゾン)クロベタゾン酪酸エステル。軽症から中等症の湿疹・皮膚炎で、顔や小児を含め部位を見ながら使います。
詳しく見るミディアムロコイド(ヒドロコルチゾン酪酸)ヒドロコルチゾン酪酸エステル。軽症から中等症の湿疹・皮膚炎で、顔や小児を含め部位に配慮して使います。
詳しく見る抗菌薬配合剤
感染徴候の有無を確認して短期間使い、通常の強さ順とは分けて考えます。
皮疹の重症度と強さの考え方
日本皮膚科学会ガイドラインは、皮疹の重症度に見合うランクを必要な量・期間で使うことを重視しています。
| 皮疹・場面 | 選択の目安 | 診察で確認すること |
|---|---|---|
| 高度の腫脹・苔癬化・びらん・多数の掻破 | ベリーストロングを第一選択とし、不十分なら限定部位でストロンゲストを検討 | 面積、感染、塗布量、再診日、ステップダウン先 |
| 中等度の紅斑・鱗屑・丘疹・掻破 | ストロングないしミディアム | 体幹・四肢・顔など部位別の吸収差 |
| 乾燥と軽い紅斑・鱗屑 | ミディアム以下 | 保湿剤の量、接触皮膚炎、刺激因子 |
| 乾燥のみで炎症が乏しい | ステロイドを含まない外用薬 | 保湿、バリアケア、再燃時の対応 |
| 膿・黄色い痂皮・滲出 | 配合剤を自動的に選ばず、感染症を鑑別 | 細菌・真菌・ウイルス、培養や内服の必要性 |
海外では分類段階が異なるため、英語論文のpotency分類を国内5段階へそのまま置き換えないよう注意します。
塗る量と部位をそろえる
薬が効かない原因には、ランク不足だけでなく塗布量不足があります。部位ごとの吸収差も同時に確認します。
診断した皮疹の範囲だけに使い、以前の残薬を別部位へ転用しません。
成人の人差し指の先から第1関節まで、約0.5gが手のひら約2枚分です。
急性期と改善後で回数が変わります。製品の電子添文と処方指示に従います。
赤み・かゆみ・厚みが落ち着いたら、回数やランク、維持薬を調整します。
ガイドラインでは前腕伸側を1とした場合、頬13、頭部3.5、頸部6、陰囊42とされます。顔、首、陰部、間擦部は局所副作用に特に注意し、長期連用を避けます。
小児は体重に対する体表面積が大きく、皮膚からの曝露が相対的に増えます。年齢だけで一律に弱めるのではなく、必要な強さを短期間使い、早めに反応を確認します。
軟膏・クリーム・ローションを使い分ける
同じ成分でも剤形が変わると、塗りやすさ、刺激、適する部位が変わります。
刺激が比較的少なく、乾燥を基盤とする湿疹で基本になります。べたつきが継続の妨げになる場合は調整します。
乾燥病変夏季や露出部で使いやすい一方、びらんや亀裂では刺激を感じることがあります。
使用感を確認髪のある部位へ届きやすい剤形です。液だれや刺激、塗布範囲を確認します。
頭皮・有毛部副作用と効かないときの見直し
短期・適正使用では有用性が高い一方、部位、量、期間、感染症を確認せず続けると問題が生じます。
皮膚萎縮、毛細血管拡張、ステロイドざ瘡、酒さ様皮膚炎、口囲皮膚炎、多毛、色素変化、感染のマスクに注意します。眼周囲の長期・大量使用では眼圧や白内障も確認します。
輪状に広がる、片側性の水疱、膿や痛み、急速な悪化、塗ると一時的に消えて再発する場合は、白癬、ヘルペス、細菌感染、接触皮膚炎などを再評価します。
- 強い薬を大量・長期・広範囲・密封で使うほど、局所および全身性副作用のリスクが上がります。
- 中止後に強い紅斑、灼熱感、丘疹・膿疱が出る場合は、自己判断で再開と中止を繰り返さず皮膚科へ相談してください。
- 妊娠・授乳、乳幼児、眼周囲、既往の緑内障、免疫抑制治療中では、塗布面積と期間を個別に確認します。
処方を検討する医師向け情報
国内ランク、塗布量、部位別曝露、寛解導入と維持、安全性のエビデンスを処方設計へ落とし込みます。
疾患名ではなく個々の皮疹の紅斑、浸潤、丘疹、苔癬化、びらん、掻破を評価し、JDA 5段階で必要十分なpotencyを選びます。過少塗布を防ぐためFTUと週当たり必要量を具体化します。
顔面、頸部、眼周囲、間擦部、陰部は吸収と局所副作用を考慮します。小児は短期間で反応を確認し、広範囲・ODT・バリア破綻例ではHPA系抑制リスクも評価します。
十分な寛解導入後、連日塗布から漸減・間欠使用へ移行します。頻回再燃部位では週2回程度のプロアクティブ療法を検討し、保湿と非ステロイド抗炎症外用薬を組み合わせます。
処方量不足、塗布量不足、steroid phobia、接触アレルギー、白癬・疥癬・ヘルペス、膿痂疹化、酒さ、乾癬、治療抵抗性ADと全身治療適応を再点検します。
皮膚萎縮、紫斑、毛細血管拡張、ざ瘡様皮疹、酒さ様皮膚炎、感染のマスク、眼症状を部位ごとに記録します。長期・大量・高potencyでは全身性副作用も確認します。
抗菌薬配合剤は感染徴候のある限定した場面で短期間使い、通常湿疹の維持療法にしません。改善不十分なら培養、KOH、抗菌薬感受性、別診断を検討します。
| エビデンス | 主な結果 | 実務への反映 |
|---|---|---|
| JDA 2024 | 重症度別の5段階選択、FTU、部位別吸収、漸減・間欠投与を提示 | 初回からランク、量、部位、終了条件を処方指示へ明記 |
| AAD 2023 | 成人ADのTCSを強く推奨し、局所抗菌薬の一律使用には否定的 | 抗炎症外用を治療の軸にし、配合抗菌薬は感染徴候で選別 |
| Cochrane 2024 | 291試験・45,846例。potent TCSは有効性上位。短期では皮膚菲薄化増加を示さず、長期使用では6/2,044例(0.3%)に報告 | 短期適正使用の利益を説明しつつ、長期曝露は定期評価 |
| プロアクティブ療法メタ解析 | 寛解後の間欠的抗炎症外用で再燃予防効果を評価 | 頻回再燃例では寛解導入後の週2回前後の維持を個別検討 |
ネットワークメタ解析は試験の異質性とバイアスを含み、国内ランクと海外potency分類も一致しません。個別製品の優劣ではなく、クラス全体の位置づけとして解釈します。
よくある質問
ステロイド外用薬は強いほどよく効きますか?
強い薬ほど適しているわけではありません。皮疹の重症度、塗る部位、年齢、面積に合うランクを選び、改善後は減量や切り替えを行います。
顔にはどの強さを使いますか?
顔は薬の吸収が高く、副作用が出やすい部位です。原則としてミディアム以下を短期間使い、重症時は皮膚科でランクと期間を細かく調整します。
FTUとは何ですか?
finger-tip unitの略で、口径5mmのチューブから成人の人差し指の先端から第1関節まで出した量、約0.5gを指します。成人の手のひら約2枚分に塗る目安です。
良くなったら急に中止してよいですか?
皮疹の経過によっては、回数を減らす、下位ランクへ替える、週2回程度の間欠使用へ移るなどの方法があります。処方時の終了条件を確認してください。
ステロイドを塗って悪化したらどうしますか?
白癬、カンジダ、ヘルペス、細菌感染、接触皮膚炎などでは悪化することがあります。塗る量を増やさず、早めに皮膚科で診断を確認してください。
市販のステロイド外用薬と処方薬は同じですか?
成分、強さ、濃度、抗菌薬などの配合成分が異なります。市販薬を使う場合も、顔・陰部・小児・広範囲・長引く皮疹では医師または薬剤師へ相談し、製品の説明書に沿って使用してください。
池袋で使用中のステロイドを見直せますか?
お薬手帳やチューブ、薬袋、塗っている部位の経過が分かる写真をご持参ください。成分、ランク、塗布量、期間を確認して処方を調整します。
監修医師

ステロイド外用薬は、薬の名前だけでなく、皮疹の重症度、部位、面積、年齢、感染徴候、剤形、これまでの反応を合わせて選びます。必要な強さを必要な量・期間で使い、落ち着いた後の減らし方や維持療法まで初回から共有することが、効果と安全性の両方につながります。
本記事では、日本皮膚科学会の診療ガイドライン、各製品の電子添文、国内外のガイドラインと系統的レビューを照合しています。見た目が似る白癬、ヘルペス、接触皮膚炎などでは治療が変わるため、自己判断で残薬を使わず、改善しない場合は診断から見直してください。
参考文献
- 日本皮膚科学会・日本アレルギー学会:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024
- AAD Guidelines of care for adult atopic dermatitis with topical therapies
- Cochrane 2024: Topical anti-inflammatory treatments for eczema
- Proactive treatment systematic review and meta-analysis
- The finger-tip unit: a practical measure
- Strategies for using topical corticosteroids in children and adults with eczema
- PMDA 医療用医薬品情報検索
掲載内容は一般的な医療情報です。個別の診断、処方、開始・中止は診察で判断します。