
アドトラーザ(トラロキヌマブ)とは|アトピーへの効果・注射方法・副作用
アドトラーザはIL-13を選択的に抑える注射薬です。外用治療で十分な効果が得られないアトピー性皮膚炎に、皮疹・かゆみ・生活への支障を評価して検討します。
アドトラーザ(トラロキヌマブ)の位置づけ
2型炎症に関わるIL-13を標的とする生物学的製剤です。開始後も保湿と抗炎症外用薬を組み合わせ、皮疹の変化と目の症状を定期的に確認します。

薬のしくみ
IL-13に結合して受容体との相互作用を阻害し、皮膚の炎症とバリア障害に関わるシグナルを抑えます。
アドトラーザの処方を検討するときに確認すること
薬を選ぶ前の確認点と、治療を見直す目安をお伝えします。

FROM THE CLINIC
- 処方を考える場面
- 既存治療で効果が不十分な成人のアトピー性皮膚炎で、注射治療を検討します。塗り薬の種類と使い方も見直します。
- 処方前に確認すること
- 目の症状、感染症、ワクチン予定、妊娠・授乳、注射の予定と保管・手技を確認します。
- 処方後に確認すること
- 湿疹、かゆみ、睡眠、外用薬の使用状況に加え、目の赤み・痛み、注射部位の反応を確認します。
- 治療を見直す目安
- 通常16週までに反応がなければ中止を検討します。目の痛み、まぶしさ、視力の変化は早めに眼科で評価します。
公的資料や文献を踏まえた一般的な確認事項です。個別の処方は診察所見と患者さんの背景に応じて判断します。主な確認資料:PMDA:アドトラーザ皮下注 電子添文、Wollenberg A, et al. ECZTRA 1/2:トラロキヌマブの第III相RCT(2021)。参考資料確認日:2026年9月8日
使い方と治療の組み立て
初回導入後は定期的に皮下注射します。皮疹が安定した後の投与間隔は、添付文書と個別の反応に沿って判断します。
既存の外用治療で十分にコントロールできない中等症以上のアトピー性皮膚炎に合うか、既治療・持病・併用薬を確認します。
初回導入後は定期的に皮下注射します。皮疹が安定した後の投与間隔は、添付文書と個別の反応に沿って判断します。
症状が改善したかだけでなく、続けやすさ、検査値、副作用を再診で確認します。
診察での使い分け
同じ薬名で検索していても、症状・治療段階・持病によって適した方法は変わります。
表は左右に動かして確認できます
| 確認項目 | 診療で見るポイント | 注意点 |
|---|---|---|
| 適応 | 中等症以上、外用最適化後もEASI・掻痒・睡眠障害が残るか確認します。 | 軽症や外用不足を全身療法だけで補いません。 |
| 投与間隔 | 導入期と維持期を分け、反応良好例では条件を満たす場合の間隔調整を検討します。 | 自己判断で注射間隔を変更しません。 |
| 眼症状 | 結膜炎・角結膜炎の既往と症状を確認します。 | 眼痛や視力変化では眼科評価を優先します。 |
| 併用 | 保湿・TCS/TCI等を継続し、感染や接触皮膚炎も評価します。 | 外用中止による再燃に注意します。 |
手のアトピーの研究から、注射薬の優劣は決められる?
手のアトピーに対する注射薬の比較研究が公表されました。ただし、この研究だけで「アドトラーザのほうがデュピクセントよりよい」とは決められません。
2026年10月の研究は、別々に行われた2つの試験のデータを、参加者の年齢や症状の程度が近くなるよう調整して比べたものです。一部の評価ではアドトラーザに有利な結果でしたが、同じ試験の中で2つの薬を直接比べた結果ではありません6。
薬を選ぶときは、手以外の症状や、これまでの治療も確認します。
アドトラーザは、国内では適切な治療で十分な効果が得られない成人のアトピー性皮膚炎に用いる薬です。手荒れ全般を対象にした薬ではありません。手の症状が続くときは、かぶれなど別の原因も含めて相談し、保湿や塗り薬は指示に沿って続けましょう5。
治療全体の選び方は、アトピーの生物学的製剤の解説もご覧ください。
研究の数字と、まだ分からないこと
アドトラーザの試験235人と、デュピクセントの試験133人のデータを使った、統計的な間接比較です。両試験の偽薬群を共通の基準にし、年齢・性別・人種・開始時の手の症状を調整しています。調整後の「実効サンプルサイズ99人」は、計算上の情報量を人数に換算した値で、新たに99人が参加したという意味ではありません。
16週後に手湿疹の重症度スコアが90%以上改善した割合の差は、調整後で17.5ポイント(95%信頼区間0.8〜34.2)と、アドトラーザに有利でした。一方、かゆみや痛みなどでは、統計的にはっきりした差はありませんでした。差がはっきりしないことは、同じ効果だと証明した意味でもありません6。
症状が悪化したときに追加治療を使える時期、未成年の参加、足の症状を含むか、かぶれの検査など、試験の条件には違いが残ります。計算ではそろえられない違いもあり、結果をそのまま個人の薬選びに当てはめることはできません。副作用の比較をした研究でもありません。
研究と企業の関係:LEO Pharmaが解析・出版費を負担し、著者には同社の現職・元社員3人が含まれます。元のアドトラーザ試験には英国の公的研究支援(NIHR)もあり、ほかの著者も企業との関係を開示しています。
この研究の補足・資料確認:2026年10月3日
副作用・受診の目安
薬の副作用と、もとの病気の悪化を分けて確認します。
注射部位反応、結膜炎、上気道症状などが報告されています。寄生虫感染、生ワクチン、妊娠・授乳について事前に確認します。
呼吸困難、顔や喉の腫れ、強い眼痛・視力低下、発熱を伴う広範囲の発疹があれば早急に受診してください。
自己判断で開始・増量・休薬・中止せず、処方元の指示に従ってください。
PATIENT GUIDE
本文に出てくる医療用語
このページで使う専門用語を、患者さん向けに短く言い換えました。
- TCS
- ステロイド外用薬です。
- TCI
- カルシニューリン阻害外用薬です。
処方・鑑別・安全管理を確認するための情報です。患者さんは上部の患者向け説明をご覧いただき、薬の開始・変更・中止は自己判断せず診察時にご相談ください。
患者さん向け情報へ戻る ↑FOR PRESCRIBERS / MEDICAL PROFESSIONALS
処方医向け:アドトラーザの成人適応・導入用量・眼症状管理
トラロキヌマブは成人ADに対する抗IL-13抗体です。600mg導入、300mg隔週、16週判定、結膜炎・角膜炎、寄生虫感染、生ワクチン、自己注射を整理します。
現行電子添文のAD適応は成人です。小児等を対象とした臨床試験は実施されていません。
最初の要点を開いています。見出しから「適応」「処方設計」「安全性」「再評価」「一次資料」を必要な順に確認できます。
適応判定1. 診断・重症度・既治療の確認
抗炎症外用薬による適切な治療でも不十分で、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ成人ADが対象です。
疾患活動性
EASI、IGA、BSA、顔面・頭頸部・手足などの難治部位、皮膚写真をベースライン化します。
症状とQOL
PP-NRS、睡眠障害、DLQI/CDLQI、POEM、欠勤・欠席、治療負担を皮疹とは別に評価します。
治療最適化
抗炎症外用薬の強さ・部位・使用量、保湿、塗布手技、アドヒアランス、接触皮膚炎・感染症の鑑別を確認します。
用量・評価2. 承認用法と効果判定
年齢・体重・腎肝機能・相互作用による条件を処方前に固定し、添付文書の評価時期を一律の16週に置き換えません。
| 項目 | 承認情報 | 処方実務 |
|---|---|---|
| 対象 | 成人の既存治療で効果不十分なAD | 年齢、診断、外用治療の内容と期間を確認 |
| 導入 | 初回600mgを皮下投与 | 300mgペン2本を異なる部位へ投与 |
| 維持 | 1回300mgを2週間隔 | 外用抗炎症薬・保湿剤を継続 |
| 効果判定 | 通常16週までに反応。無反応なら中止を考慮 | EASI/IGA/BSA、PP-NRS、DLQIで判断 |
導入前3. 導入前の問診・検査
IL-13阻害による眼・寄生虫感染リスク、過敏症、長期経口ステロイド、妊娠・授乳を確認します。
| 領域 | 確認項目 | 判断・対応 |
|---|---|---|
| 眼 | 結膜炎、角膜炎、眼乾燥、コンタクト、眼科治療歴 | 症状が強い場合は導入前から眼科連携 |
| 感染 | 寄生虫感染・曝露、活動性感染、生ワクチン予定 | 寄生虫は開始前治療。治療中の生ワクチンは避ける |
| 一般 | 既治療、CBC分画、必要時肝腎機能、過敏症歴 | 好酸球のベースラインと併存症を記録 |
| 背景 | 妊娠・授乳、長期経口ステロイド | 妊娠は利益が危険性を上回る場合。ステロイドは急減しない |
経過観察4. 開始後モニタリング
結膜炎・角膜炎、注射部位反応、好酸球増加を能動的に確認します。
| 時期・場面 | 評価項目 | 対応 |
|---|---|---|
| 投与直後 | 過敏症、注射部位反応 | アナフィラキシー等では中止し適切に対応 |
| 早期〜定期 | 結膜充血、そう痒、眼痛、羞明、視力変化、好酸球 | 角膜炎疑い・視機能異常は眼科へ |
| 16週 | EASI/IGA/BSA、PP-NRS、DLQI、外用量 | 無反応では診断・遵守を再評価し中止を考慮 |
| 自己注射 | 保管、投与45分前の室温化、手技、部位、廃棄 | 確実に投与できることを確認して自己投与へ |
処方の要点5. IL-13阻害薬としての安全管理
眼障害
結膜炎、アレルギー性結膜炎、角膜炎を区別し、疼痛・羞明・視力変化を赤旗症状として説明します。
寄生虫
感染がある場合は開始前治療。投与中に発症し治療無効なら治癒まで一時中止します。
外用継続
全身治療開始後も病変に応じた抗炎症外用薬と保湿剤を継続し、塗布量を追跡します。
中断・切替6. 中断・切替・緊急対応
- アナフィラキシー等の重篤な過敏症では中止する
- 抗寄生虫薬で制御できない寄生虫感染では治癒まで一時中止する
- 角膜炎を疑う眼痛・羞明・視力変化では速やかに眼科評価する
- 16週までに治療反応が得られない場合は投与中止を考慮する
- 経口ステロイドの急な中止を避ける
診療録7. 診療録に残す項目
- 確定診断、EASI・IGA・BSA、PP-NRS、DLQI/CDLQI・POEM、難治部位、写真
- 抗炎症外用薬・保湿剤の種類、使用量、期間、最大反応、不耐容、アドヒアランス
- 適応年齢・体重、禁忌、妊娠希望、感染症・結核・肝炎、ワクチン、併用薬、悪性腫瘍・血栓症歴
- 選択理由、代替治療、説明と同意、自己注射教育、緊急連絡の基準
- 再診日、薬剤固有の効果判定時期、中止・休薬・切替の判断とその根拠
臨床判断ECZTRA 1/2の単剤試験と維持期解析の読み方
ECZTRA 1/2は成人の中等症~重症アトピー性皮膚炎を対象とした単剤の第III相RCTです。16週のEASI75達成率はトラロキヌマブ対プラセボで25.0%対12.7%、33.2%対11.4%でした。外用薬併用試験とは背景治療が異なるため、他剤の数字を横に並べて順位づけしません。国内診療では必要な抗炎症外用薬と保湿を併用し、外用をやめられるかだけを治療の成功指標にしないようにします。 Wollenberg A, et al. ECZTRA 1/2:トラロキヌマブの第III相RCT(2021)、PMDA:アドトラーザ皮下注 電子添文
52週の維持期解析では、16週で反応した患者が再無作為化されています。維持率を治療開始者全員の1年後の達成率として説明しないことが重要です。また、試験の4週間隔群を国内の承認用法と混同せず、初回600mg、以降300mgを2週間隔という現行用法に沿って処方します。通常16週までに反応がない場合は中止を考慮し、部分反応では残存部位や外用の実行状況を再評価します。 Wollenberg A, et al. ECZTRA 1/2:トラロキヌマブの第III相RCT(2021)、PMDA:アドトラーザ皮下注 電子添文
眼症状は開始前の状態を記録し、結膜炎だけでなく角膜炎を疑う痛み・羞明・視力変化を区別して眼科連携を判断します。皮疹と睡眠の改善が得られていても眼症状を軽視しません。寄生虫感染がある場合の導入前治療、生ワクチンの回避も確認します。IL-13を標的とする薬同士でも、直接比較試験なしに効果や眼症状の優劣を断定しないよう説明します。 PMDA:アドトラーザ皮下注 電子添文
参考資料確認日:2026年9月8日
本節は医療従事者の情報確認を目的とした一般的な整理です。実際の処方は診察時点の最新電子添文、最適使用推進ガイドライン、学会ガイダンス、患者背景および施設要件に基づいて判断してください。学会ガイダンス作成後に適応・用量が更新された薬剤では、現行電子添文を優先してください。
池袋でアドトラーザ(トラロキヌマブ)を相談したい方へ
池袋駅東口・サンシャイン通り周辺でアドトラーザ(トラロキヌマブ)を相談したい方に、診断・重症度・既治療・安全性を確認して適応を判断します。
症状、経過、検査、これまでの治療を確認します。
持病、妊娠・授乳、併用薬、必要な検査を確認します。
効果判定と副作用確認の時期を決めます。
診察の結果、別の治療が適切と判断する場合があります。予約は処方を保証するものではありません。
監修医師
薬の基本情報だけでなく、選ぶ条件・避ける条件・改善後の出口まで確認しています。
監修医からのメッセージ
承認適応、重症度、既治療と開始前確認
感染症、検査、併用薬、有害事象
効果目標、中止・変更条件と維持治療
よくある質問
アドトラーザ(トラロキヌマブ)は希望すれば処方されますか?
希望する薬は診察で相談できますが、診断、重症度、既治療、持病、妊娠・授乳、併用薬を確認して適応を判断します。受診した場合でも必ず処方になるわけではありません。
効果はいつ判断しますか?
薬ごとに評価時期が異なります。自己判断で増量・中止せず、初回に決めた再診時期に症状、副作用、続けやすさを確認します。
副作用が心配な時はどうすればよいですか?
軽い変化でも気になる時は処方元へ相談してください。呼吸困難、顔や喉の腫れ、強い眼痛・視力低下、発熱を伴う広範囲の発疹があれば早急に受診してください。
手のアトピーには、アドトラーザのほうがデュピクセントより効きますか?
今回の研究だけでは、どちらがより適しているかは決められません。別々の試験を計算で比較した研究で、同じ試験の中で2つの薬を直接比べたものではないためです。手の症状だけでなく、全身のアトピー、これまでの治療、副作用などを主治医と確認して選びます。
参考文献
- アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024
- ECZTRA 1/2 phase 3 trials
- PMDA 最適使用推進ガイドライン
- アドトラーザ くすりのしおり
- PMDA:アドトラーザ皮下注 電子添文
- Armstrong AW, et al. Tralokinumab Versus Dupilumab for the Treatment of Atopic Dermatitis with Moderate-to-Severe Hand Involvement: A Matching-Adjusted Indirect Comparison. Dermatology and Therapy. 2026. DOI: 10.1007/s13555-026-01922-8(2026年10月2日公表)
掲載内容は一般的な医療情報です。診断・処方・検査の要否は診察で判断します。