
Daily Clinic Notes
ヒルドイドで赤くなる人はどれくらい?「肌に合わない」を調べてみた
外来では、ときどき「ヒルドイドを塗ると赤くなります」「ヘパリン類似物質は肌に合いません」と言われます。よく使う保湿剤なので、一定数いることは実感していました。ただ、本当にヘパリン類似物質そのものが合わないのか、クリームやローションの基剤が原因なのか、元の湿疹がまだ赤いだけなのかは別の話です。どれくらいの人に起こるのか気になり、添付文書と接触皮膚炎の研究を調べ直してみました。
Key Points
まず押さえたい3つの要点
ヒルドイドクリームの国内データでは、何らかの副作用は2,471例中23例、0.93%に報告されています。
1985年の国内報告では、乾燥性皮膚病変581例中10例、1.7%に接触皮膚炎が生じましたが、全例が真のアレルギーとは確認されていません。
赤みの原因には、荒れた皮膚への刺激、元の湿疹、基剤・添加物への接触アレルギー、有効成分への反応が含まれます。
現在確認できる国内データでは、ヒルドイドクリームで皮膚炎、かゆみ、発赤などを含む副作用が報告された人は約0.9%、古い国内研究で接触皮膚炎を生じた人は約1.7%でした。したがって、塗った後に何らかの赤みやかゆみが問題になる人は、目安として100人に1人前後から、研究によっては60人に1人ほどです。ただし、これらはヘパリン類似物質そのものへのアレルギー率ではありません。荒れた皮膚への刺激、元の湿疹、クリームやローションの基剤・添加物への反応も含まれます。ヘパリン類似物質を含む全製剤が本当に使えない人の割合を示した信頼できる大規模研究は、現時点では見当たりません。
- 0.93%は『有効成分アレルギー』ではなく、皮膚炎・かゆみ・発赤などをまとめた副作用発現率です。
- 塗布部位に一致して繰り返す、かゆい湿疹が数時間から数日で悪化する場合は接触皮膚炎を疑います。
- 剤形やメーカーで添加物が異なるため、薬のチューブ・容器・お薬手帳を持参すると切り分けやすくなります。
塗るたびに悪化する赤み、腫れ、水ぶくれ、じゅくじゅくは使用を続けず相談してください
塗布後に赤みとかゆみが増える、範囲が広がる、腫れ、水ぶくれ、びらん、じゅくじゅくが出る場合は、我慢して塗り続けず、いったん使用を止めて皮膚科へ相談してください。呼吸苦、顔面や口唇の急な腫れ、全身のじんましんがある場合は速やかな受診が必要です。自宅で広い範囲へ塗り直して反応を確かめることは避けてください。
「ヒルドイドが合わない」と言われた時、何が合わないのかを考えます
ヒルドイドや後発品のヘパリン類似物質は、乾燥肌や湿疹治療後の保湿でよく使います。その一方で、塗ると赤くなる、ヒリヒリする、かゆくなるという患者さんも一定数います。
診察室で大切なのは、『赤くなった』という経験を否定しないことと、その時点で『有効成分アレルギーだから一生使えない』と決めないことです。赤みが出た時期、塗った場所、元の皮疹、剤形、製品名、塗った量、ほかの外用薬を一つずつ確認します。
ヘパリン類似物質の効果や一般的な使い方は別の記事にまとめています。今回は、合わない人の頻度と、赤くなった時の切り分けだけに焦点を当てます。
研究上は約0.9〜1.7%ですが、『本当に全製剤が使えない人』の割合ではありません
ヒルドイドクリームの国内臨床データでは、総投与2,471例中23例、0.93%に副作用が認められました。内訳は皮膚炎0.36%、かゆみ0.32%、発赤0.20%、発疹0.16%、潮紅0.12%などです。大まかには100人に1人前後です。
もう一つ、1985年の国内報告では、乾燥性皮膚病変581例へヒルドイドを外用し、10例、1.7%に接触皮膚炎が生じました。約60人に1人です。ただし、研究者自身が10例すべてをアレルギー性とは断定できないと記載しています。古い製剤と研究であり、現在のすべての剤形へそのまま当てはめることもできません。
2021年の系統的レビューでは、赤み、灼熱感、ピリピリ感などの皮膚反応は少数で、多くは軽度でした。ただし研究の質や観察期間に限界があり、パッチテストが行われていないため、刺激とアレルギーを区別できませんでした。
赤くなる理由は、有効成分アレルギーだけではありません
一つ目は、もともとの湿疹や炎症です。ヘパリン類似物質は保湿剤であり、強い赤みやかゆみを直接抑える主薬ではありません。炎症が残っている部位を保湿だけでみていると、薬が合わないように見えることがあります。
二つ目は刺激性接触皮膚炎です。ひび割れ、掻き壊し、びらんがある皮膚では、普段は問題ない基剤やアルコール類でもしみることがあります。塗り込む時の摩擦や、洗浄・消毒の重なりも刺激になります。
三つ目はアレルギー性接触皮膚炎です。有効成分、乳化剤、防腐剤、油性成分などのどれかに感作されると、以前は使えていても、ある時から塗布部位に一致してかゆい湿疹が出ることがあります。四つ目として、同じ時期に使ったステロイド外用薬、化粧品、洗浄料など別の製品が原因のこともあります。
接触皮膚炎の報告では、基剤・添加物が原因だった例があります
1987年には、ヒルドイドクリームにアレルギーがあると判断された31人を成分別にパッチテストした報告があります。29人がクリーム基剤に反応し、16人は一つ以上の成分に反応しました。よく見つかったのはミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール、パラベンでした。これは反応した人だけを集めた古い海外研究なので、一般患者の発生率を示す数字ではありません。
国内でも、ヒルドイドソフトを塗った部位にかゆい紅斑が出た症例で、成分パッチテストによりグリセリン脂肪酸エステルが原因と診断された報告があります。
つまり、『ヒルドイドで赤くなった』という経験は本物でも、その原因がヘパリン類似物質そのものとは限りません。有効成分が同じ別製剤へ変えると使える可能性もありますが、自己判断で試し塗りを繰り返さず、添加物を比較して判断します。
クリーム、ソフト軟膏、ローション、フォームは同じ中身ではありません
現在の先発品は、どの剤形もヘパリン類似物質0.3%を含みますが、基剤・添加物は異なります。クリームにはラノリンアルコール、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、パラベンなど、ソフト軟膏にはグリセリン脂肪酸エステル、ワックス類、パラベンなどが含まれます。
ローションやフォームにも、それぞれ異なる乳化剤や防腐剤が使われています。また、後発品は先発品と有効成分が同じでも、添加物が同一とは限りません。そのため、『ヘパリン類似物質』という一般名だけでは原因を追えないことがあります。
診察では、クリームかソフト軟膏か、ローションか、先発品か後発品か、メーカー名は何かまで確認します。薬の容器、お薬手帳、薬局でもらった説明書を持参してもらえると助かります。
塗ってすぐしみるのか、数時間から数日後にかゆい湿疹が出るのかを聞きます
刺激性接触皮膚炎は、傷んだ皮膚へ塗った直後からヒリヒリ、灼熱感、痛みとして出やすい傾向があります。傷、ひび割れ、掻き壊しがある場所だけしみる場合は、皮膚バリアの低下も考えます。
アレルギー性接触皮膚炎は遅れて出る反応で、塗布後すぐとは限らず、数時間から数日後にかゆい赤み、細かいぶつぶつ、腫れ、じゅくじゅくとして目立つことがあります。以前は平気でも、繰り返し使ううちに反応することがあります。
ただし、時間だけで診断することはできません。湿疹の状態、塗った範囲との一致、使用を止めた後の変化、別の製品、再使用時の経過を合わせて判断します。自宅で反応を確認する目的の再塗布は勧めません。
- 塗ってから何分・何時間・何日で赤くなったか
- ヒリヒリ・痛みが中心か、かゆみが中心か
- 塗った場所に一致するか、周囲へ広がったか
- 同じ製品を使うたびに再現するか
- 傷、掻き壊し、湿疹、感染が塗る前からあったか
パッチテストは診断の選択肢ですが、当院では実施していません
日本皮膚科学会の接触皮膚炎診療ガイドラインでは、原因検索と確定診断にパッチテストが重要です。外用薬によるアレルギー性接触皮膚炎を疑う場合は、製品そのものだけでなく、標準的なアレルゲンや、可能であれば成分を分けて調べます。
当院ではパッチテストを実施していません。まずは症状の出方、塗布範囲、反応した製品と剤形、添加物、元の湿疹を診察で整理します。そのうえで詳しい原因検査が必要と考えられる場合は、パッチテストを実施できる医療機関へ相談していただく必要があります。
2025年の日本皮膚科学会の総説でも、外用薬の有効成分だけでなく、ラノリンなどの基剤、防腐剤、色素などが原因になり得るため、製品と成分の両方を確認する重要性が示されています。パッチテストは背中などへ試料を貼り、時間をおいて反応を判定する検査ですが、陰性でも完全には否定できないため、経過と合わせて判断します。
赤くなったら、製品を持参して『いつ・どこに・どう出たか』を確認します
新たな赤みやかゆみが塗るたびに悪化する場合は、我慢して使い続けず、いったん使用を止めて相談してください。赤みが出た直後の写真、塗る前の写真、使った範囲が分かる写真があると役立ちます。
診察では、元の湿疹へ抗炎症治療が必要なのか、刺激の少ない剤形へ変えるのか、基剤が異なる別製品を試せるのか、ワセリンなど別の保湿剤を選ぶのかを検討します。一つの製剤で反応したからといって、すべての保湿剤を避ける必要はありません。
受診時は、薬の現物、お薬手帳、メーカー名、使用開始日、塗った場所と回数、ほかに使った薬や化粧品を持参してください。自己判断で複数の製品を短期間に切り替えると、原因が分からなくなることがあります。
- 赤みが出た製品の容器、薬袋、お薬手帳を持参する
- 塗る前、悪化時、中止後の写真を残す
- 使用開始日、塗布回数、塗布部位、症状が出るまでの時間をメモする
- 同時期に変えた化粧品、洗浄料、外用薬も伝える
- 広い範囲への自己再試験はしない
今日の学びは、『合わない』を薬の名前だけで終わらせないことです
調べてみると、赤みやかゆみが問題になる人は、おおまかに100人に1人前後、古い国内報告では60人に1人ほどいました。珍しすぎる話ではなく、外来で一定数出会う実感とも大きく離れていません。
ただし、その数字はヘパリン類似物質そのものへのアレルギー率ではありません。基剤や添加物への反応、荒れた皮膚への刺激、元の湿疹が混ざっています。『ヒルドイドがダメ』ではなく、『どの製品の、何が、どの状態の皮膚に合わなかったのか』まで考える必要があります。
患者さんが一度赤くなった経験を軽く扱わず、それでも選択肢を必要以上に狭めない。製品名と剤形を確認し、検査が必要な場合はパッチテストを実施できる医療機関への相談も考えながら、使える保湿剤を一緒に探すことが大切だと改めて感じました。
- 赤み・かゆみを含む副作用は国内データで約0.9%
- 接触皮膚炎の古い国内報告では約1.7%
- 真の有効成分アレルギー率は分かっていない
- 製剤・添加物・元の湿疹まで分けて考える
池袋でヒルドイド・ヘパリン類似物質による赤みを相談したい方へ
池袋駅・東池袋周辺で、ヒルドイドやヘパリン類似物質を塗ると赤くなる、かゆくなる、ヒリヒリする、別の剤形へ変えてよいか分からない場合は、薬の現物、お薬手帳、症状写真、使用開始日を整理して相談すると原因を切り分けやすくなります。
池袋サンシャイン通り皮膚科では、一般皮膚科として、保湿剤による刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、もともとの湿疹やアトピー性皮膚炎の悪化が混じっていないかを診察し、剤形や保湿剤の変更、炎症治療を検討します。当院ではパッチテストを実施していません。詳しい原因検査が必要な場合は、実施可能な医療機関への相談をご案内します。
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よくある質問
ヒルドイドで赤くなる人は何%くらいですか?
ヒルドイドクリームの国内データでは、皮膚炎、かゆみ、発赤などを含む副作用は2,471例中23例、0.93%でした。1985年の国内報告では581例中10例、1.7%に接触皮膚炎が生じています。ただし、これらは有効成分そのものへのアレルギー率ではありません。
赤くなったらヘパリン類似物質アレルギーですか?
赤くなっただけでは断定できません。元の湿疹、荒れた皮膚への刺激、塗る時の摩擦、クリームやローションの基剤・添加物への接触アレルギー、有効成分への反応などを分けて考えます。
塗った直後にヒリヒリするのもアレルギーですか?
直後のヒリヒリは、ひび割れや掻き壊しがある皮膚への刺激でも起こります。一方、アレルギー性接触皮膚炎は数時間から数日後にかゆい湿疹として出ることがあります。ただし時間だけでは区別できないため、症状と塗布範囲を診察で確認します。
クリームが合わなくてもローションやソフト軟膏は使えますか?
使える可能性はあります。剤形ごとに基剤・添加物が異なるためです。ただし共通する添加物もあり、有効成分への反応も否定できません。自己判断で広い範囲へ試さず、反応した製品を持参して相談してください。
先発品と後発品は同じですか?
有効成分と濃度が同じでも、基剤・添加物、使用感は同一とは限りません。どのメーカーの、どの剤形で反応したかを確認することが大切です。薬の容器やお薬手帳を持参してください。
ヒルドイドが合わないか検査できますか?
当院ではパッチテストを実施していません。まず診察で、元の湿疹、刺激反応、反応した製品と剤形、添加物を整理します。詳しい原因検査が必要な場合は、製品や基剤・添加物を調べられる実施可能な医療機関へ相談していただく必要があります。
監修医師メッセージ
吉井恭平 池袋サンシャイン通り皮膚科 院長
- PMDA. ヒルドイドクリーム0.3%・ソフト軟膏0.3%・ローション0.3%・フォーム0.3% 添付文書(2025年7月改訂).
- マルホ. ヒルドイドクリーム0.3%の有効性及び安全性の検討試験.
- 渡辺加代子, 須貝哲郎. ヒルドイドによる接触皮膚炎. 皮膚. 1985;27:804-808.
- Pecegueiro M, et al. Contact dermatitis to Hirudoid cream. Contact Dermatitis. 1987;17:290-293.
- 永尾圭介ほか. ヒルドイドソフトによる接触皮膚炎の1例. 皮膚の科学. 2007;6:89-92.
- 日本皮膚科学会. 接触皮膚炎診療ガイドライン2020.
- 日本皮膚科学会. 医薬品によるアレルギー性接触皮膚炎アップデート. 2025.
- Li M, et al. Efficacy and Safety of Mucopolysaccharide Polysulfate Cream for Non-Exudative Eczema: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Med. 2021;8:788324.