スキンブースターとヒアルロン酸の違いを医師が解説
- ✓ スキンブースターは肌全体の質を改善する目的で、ヒアルロン酸はボリュームアップやしわの充填が主な目的です。
- ✓ スキンブースターには非架橋ヒアルロン酸の他、様々な有効成分が配合され、肌の再生を促します。
- ✓ 治療目的や期待する効果に応じて、適切な製剤と治療法を選択することが重要です。
スキンブースターとヒアルロン酸は、どちらも肌の若返りや改善を目的とした美容医療で用いられる注入治療ですが、その目的、成分、作用機序、適応部位、期待できる効果に明確な違いがあります。これらの違いを理解することは、ご自身の肌の悩みに最適な治療を選択するために非常に重要です。
スキンブースターとは?その定義と主な成分

スキンブースターとは、肌の真皮層に直接有効成分を注入することで、肌の水分量、弾力、ハリ、輝きといった肌質そのものの改善を目指す治療法の総称です[2]。単にボリュームを補うだけでなく、肌細胞の活性化や再生を促すことに重点を置いています。
スキンブースターの主な成分と作用機序
スキンブースターには様々な種類がありますが、共通して非架橋ヒアルロン酸(架橋されていない、比較的分子の小さいヒアルロン酸)が主成分として配合されていることが多いです。この非架橋ヒアルロン酸は、皮膚の水分保持能力を高め、内側から潤いとハリをもたらします。さらに、非架橋ヒアルロン酸は線維芽細胞(コラーゲンやエラスチンを生成する細胞)の活性化を促し、肌の自己再生能力を高めることが報告されています[3]。当院では、肌の乾燥や小じわを気にされる患者さまが多くいらっしゃいますが、スキンブースター治療を始めて数ヶ月ほどで「肌の潤いが全然違う」「化粧ノリが良くなった」とおっしゃる方が多いです。
ヒアルロン酸以外にも、スキンブースターには以下のような様々な有効成分が配合されることがあります[3]。
- アミノ酸、ビタミン、ミネラル:これらは肌細胞の代謝をサポートし、コラーゲンやエラスチンの生成に必要な栄養素です。特にビタミンCは抗酸化作用やコラーゲン生成促進作用が期待されます。
- ペプチド:細胞間の情報伝達を担い、コラーゲンやエラスチンの生成を促進したり、肌の修復を助けたりする作用があります。
- 核酸(DNA/RNA):細胞の再生能力を高め、損傷した肌の修復を促すことが期待されます。
- 成長因子:細胞の増殖や分化を促進し、肌の若返りをサポートします。近年では、間葉系幹細胞由来のエクソソーム(細胞外小胞)に含まれるマイクロRNAがスキンブースターとして注目されており、肌の再生能力を高める可能性が示唆されています[4]。
これらの成分が複合的に作用することで、肌の真皮層から健康的な状態へと導き、小じわの改善、毛穴の引き締め、肌のトーンアップ、弾力性の向上など、肌全体の若返り効果が期待できます。
ヒアルロン酸とは?その定義と主な成分
ヒアルロン酸注入治療とは、主に架橋された(分子同士が結合して安定化された)ヒアルロン酸製剤を皮膚の特定の部位に注入し、ボリュームを補ったり、しわやたるみを物理的に持ち上げたりすることを目的とした治療です[5]。美容医療で「ヒアルロン酸」という場合、一般的にはこの架橋ヒアルロン酸フィラーを指します。
- 架橋ヒアルロン酸
- ヒアルロン酸分子が化学的に結合され、ゲル状の安定した構造を持つように加工された製剤です。これにより、体内で分解されにくく、注入部位での形状維持能力が高まります。しわの充填やボリュームアップに適しています。
ヒアルロン酸の主な成分と作用機序
ヒアルロン酸は、もともと人間の体内、特に皮膚や関節、眼などに存在する天然の多糖類の一種です。自身の約6,000倍もの水分を保持できる高い保水力を持っています。美容医療で使用されるヒアルロン酸製剤は、このヒアルロン酸を人工的に合成し、安定性を高めるために架橋処理を施したものが主流です[5]。架橋の程度や分子量によって、製剤の硬さや持続期間が異なり、用途に応じて使い分けられます。
- ボリュームアップ:加齢によって失われた顔のボリューム(頬のこけ、こめかみのへこみなど)を補い、若々しい印象を取り戻します。
- しわの充填:ほうれい線、マリオネットライン、額や眉間の深いしわなどに注入することで、しわの溝を内側から持ち上げ、目立たなくします。
- 輪郭形成:鼻筋を高くしたり、顎のラインを整えたり、唇をふっくらさせたりするなど、顔のパーツの形を整える目的でも使用されます。
ヒアルロン酸は注入後、周囲の水分を引き寄せてさらにボリュームを増し、物理的に皮膚を持ち上げることで効果を発揮します。効果の持続期間は製剤の種類や注入部位、個人の代謝によって異なりますが、一般的に数ヶ月から1年半程度です。当院では、初診時に「鏡を見るたびにほうれい線が気になる」「以前より顔が疲れて見える」と相談される患者さまも少なくありません。ヒアルロン酸注入によって、即効性のある変化を実感され、表情が明るくなる様子を診察の中で実感しています。
スキンブースターとヒアルロン酸、主な違いは?

スキンブースターとヒアルロン酸は、どちらも注入治療ですが、その目的、成分、作用機序、期待できる効果、適応部位において明確な違いがあります。これらの違いを理解することが、ご自身の肌の悩みに最適な治療を選択するための鍵となります。
目的と作用機序の違い
- スキンブースター:肌の真皮層に有効成分を広範囲に注入し、肌細胞の活性化、コラーゲン・エラスチン生成の促進、水分保持能力の向上を通じて、肌質そのものの改善を目指します。肌の「土台」を整え、内側から輝くような健康的な肌へと導くことが主な目的です。
- ヒアルロン酸:主に架橋ヒアルロン酸を特定の部位に注入し、失われたボリュームを補ったり、しわの溝を物理的に埋めたり、顔の輪郭を形成したりすることが目的です。即効性のある「形」の改善に特化しています。
成分の違い
- スキンブースター:非架橋ヒアルロン酸を主成分とし、さらにアミノ酸、ビタミン、ミネラル、ペプチド、核酸、成長因子など、肌の再生や代謝を促す多様な美容成分が複合的に配合されています[3]。
- ヒアルロン酸:主に架橋されたヒアルロン酸が主成分です[5]。製剤によっては麻酔薬が配合されていることもありますが、基本的にはヒアルロン酸単体で構成されています。
適応部位と期待できる効果の違い
- スキンブースター:顔全体、首、デコルテ、手の甲など、肌質改善を希望する広範囲に適用されます。小じわ、乾燥、ハリの低下、くすみ、毛穴の開きなどの肌悩みに効果が期待できます。
- ヒアルロン酸:ほうれい線、マリオネットライン、額のしわ、眉間のしわ、涙袋、唇、鼻、顎、頬のこけなど、特定の部位のボリュームアップやしわの充填、輪郭形成に特化しています。
| 項目 | スキンブースター | ヒアルロン酸(フィラー) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 肌質改善、肌の再生、潤い・ハリ・弾力アップ | ボリュームアップ、しわの充填、輪郭形成 |
| 主な成分 | 非架橋ヒアルロン酸、アミノ酸、ビタミン、ペプチド、核酸、成長因子など | 架橋ヒアルロン酸 |
| 作用機序 | 肌細胞の活性化、コラーゲン生成促進、水分保持 | 物理的なボリューム補填、しわの持ち上げ |
| 適応部位 | 顔全体、首、デコルテ、手の甲など広範囲 | ほうれい線、唇、鼻、顎、頬など特定の部位 |
| 期待できる効果 | 小じわ改善、ハリ・弾力アップ、潤い、毛穴改善、トーンアップ | 深いしわの改善、顔のボリューム回復、輪郭形成 |
| 効果の即効性 | 徐々に現れる(数週間〜数ヶ月) | 比較的即効性がある |
| 持続期間 | 数ヶ月〜半年程度(複数回治療推奨) | 数ヶ月〜1年半程度(製剤による) |
どちらを選ぶべき?スキンブースターとヒアルロン酸の使い分け
スキンブースターとヒアルロン酸は、それぞれ異なる目的と効果を持つため、ご自身の肌の悩みや理想とする結果に応じて使い分けることが重要です。また、両者を組み合わせることで、より高い相乗効果が期待できる場合もあります。
肌質全体の改善を目指すならスキンブースター
「肌全体の潤いやハリが欲しい」「小じわや毛穴が気になる」「肌のキメを整えたい」「肌のトーンを明るくしたい」といった、肌質そのものの改善や若返りを目的とする場合は、スキンブースターが適しています。スキンブースターは、肌の奥から細胞レベルで働きかけ、肌本来の再生能力を引き出すことで、自然で健康的な美しさを目指します。当院では、肌のくすみやごわつきを訴える患者さまにスキンブースターをおすすめすることが多く、治療を継続することで「肌の透明感が上がった」「ファンデーションの厚塗りが不要になった」といった嬉しいお声をいただいています。
スキンブースターは即効性よりも、徐々に肌質が改善していくタイプの治療です。複数回の治療を継続することで、より効果を実感しやすくなります。治療間隔や回数については、医師と相談して計画を立てることが重要です。
特定の部位のボリュームアップやしわの改善ならヒアルロン酸
「深いほうれい線が気になる」「頬がこけて老けて見える」「鼻筋を高くしたい」「唇をふっくらさせたい」など、特定の部位のボリューム不足や深いしわ、顔の輪郭形成を目的とする場合は、ヒアルロン酸注入が適しています。ヒアルロン酸は、注入直後から効果を実感しやすく、即効性のある変化を期待できます。当院では、ヒアルロン酸注入後のフォローアップで、副作用の有無だけでなく、注入部位の仕上がりが患者さまのイメージ通りであるか、日常生活で不便がないかを確認するようにしています。
両者を組み合わせるメリットは?
スキンブースターとヒアルロン酸は、それぞれ異なるアプローチで肌の悩みに対応するため、両者を組み合わせることで、より包括的な若返り効果が期待できます。例えば、深いしわやボリューム不足をヒアルロン酸で改善しつつ、肌全体のハリや潤いをスキンブースターで底上げするといった治療計画が考えられます。これにより、表面的な改善だけでなく、肌本来の健康的な美しさを引き出すことが可能になります。
実際の診療では、患者さまの肌の状態、加齢による変化の程度、そしてご希望に応じて、最適な治療プランを提案しています。例えば、顔全体の小じわやハリの低下にはスキンブースターを、同時に目立つほうれい線にはヒアルロン酸を併用することで、より自然でバランスの取れた若返り効果を目指します。
施術の流れとダウンタイム、副作用について

スキンブースターとヒアルロン酸注入は、いずれも医療行為であり、適切な知識と技術を持った医師によって行われる必要があります。施術の流れ、ダウンタイム、起こりうる副作用についても理解しておくことが重要です。
一般的な施術の流れ
- カウンセリング・診察:医師が患者さまの肌の状態、悩み、希望を詳しく伺い、最適な治療法を提案します。既往歴やアレルギーについても確認します。当院では、問診の際に患者さまの家族歴や過去の美容医療経験を詳しく伺うようにしています。
- 麻酔:痛みを軽減するため、表面麻酔クリームを塗布することが一般的です。製剤によっては麻酔薬が配合されているものもあります。
- 注入:極細の針やカニューレ(先端が丸い針)を用いて、目的の部位に製剤を注入します。スキンブースターは広範囲に細かく注入されることが多く、ヒアルロン酸は特定のポイントに注入されます。
- 術後ケア:注入後は冷却やマッサージを行う場合があります。医師からの指示に従って、適切なアフターケアを行います。
ダウンタイムと副作用
どちらの治療も比較的ダウンタイムは短いですが、個人差があります。一般的なダウンタイムと副作用は以下の通りです。
- 共通の副作用:注入部位の赤み、腫れ、内出血、痛みなどが挙げられます。これらは通常、数日から1週間程度で自然に治まります。
- スキンブースター特有の注意点:注入直後に小さな膨らみ(ポコつき)が生じることがありますが、数時間から数日で吸収され目立たなくなります。これは製剤の特性によるもので、通常は心配ありません。
- ヒアルロン酸特有の注意点:まれに血管閉塞やアレルギー反応などの重篤な副作用が報告されています。これらのリスクを最小限に抑えるため、経験豊富な医師による正確な診断と適切な手技が不可欠です。
当院では、施術後の経過観察を重視しており、何か異常を感じた際にはすぐに連絡いただけるよう、連絡体制を整えています。処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。
注入治療は、レーザー治療と組み合わせることで、より高い効果が期待できる場合もあります。例えば、炭酸ガスレーザーや1927nmのツリウムレーザーは、ヒアルロン酸の皮膚への浸透を促進する可能性が研究で示唆されています[1]。このように、複数の治療法を組み合わせることで、患者さま一人ひとりの肌の状態に合わせた最適なアプローチが可能になります。
まとめ
スキンブースターとヒアルロン酸は、どちらも肌の若返りを目的とした注入治療ですが、その作用機序、成分、期待できる効果に大きな違いがあります。スキンブースターは肌質全体の改善を目指し、非架橋ヒアルロン酸と多様な美容成分で肌の再生を促します。一方、ヒアルロン酸は架橋ヒアルロン酸を主成分とし、特定の部位のボリュームアップやしわの充填、輪郭形成に特化しています。ご自身の肌の悩みや理想とする結果に応じて、適切な治療法を選択することが重要であり、必要に応じて両者を組み合わせることも有効です。治療を検討する際は、必ず専門の医療機関で医師と十分に相談し、ご自身の肌の状態やリスク、期待できる効果について理解を深めるようにしましょう。
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よくある質問(FAQ)
- Lynhda Nguyen, Christian Mess, Stefan W Schneider et al.. Multiphoton tomographic analysis of hyaluronic acid delivery: comparison of carbon dioxide laser and 1927 nm thulium laser over time.. Lasers in medical science. 2025. PMID: 39960562. DOI: 10.1007/s10103-025-04363-5
- Kyu-Ho Yi, Waranaree Winayanuwattikun, Sung-Yeon Kim et al.. Skin boosters: Definitions and varied classifications.. Skin research and technology : official journal of International Society for Bioengineering and the Skin (ISBS) [and] International Society for Digital Imaging of Skin (ISDIS) [and] International Society for Skin Imaging (ISSI). 2024. PMID: 38481069. DOI: 10.1111/srt.13627
- Nark-Kyoung Rho, Hyun-Seok Kim, Soo-Young Kim et al.. Injectable “Skin Boosters” in Aging Skin Rejuvenation: A Current Overview.. Archives of plastic surgery. 2024. PMID: 39544509. DOI: 10.1055/a-2366-3436
- Jinmei Zheng, Beibei Yang, Siqi Liu et al.. Applications of Exosomal miRNAs from Mesenchymal Stem Cells as Skin Boosters.. Biomolecules. 2024. PMID: 38672475. DOI: 10.3390/biom14040459
- ヒアルロン酸 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)