
Daily Clinic Notes
暑くなって増えてきたマラセチア毛包炎診察室で見分けたいこと
暑くなってから、胸や背中、肩、生え際に『同じような小さいぶつぶつが増えた』『ニキビ薬を使っているのに治らない』『汗をかくとかゆい』という相談が増えてきました。診察室でこの並び方を見ると、ニキビだけではなくマラセチア毛包炎を考えます。これは当院での季節的な診療実感で、地域の患者数を示す統計ではありません。ただ、高温多湿、発汗、運動、皮脂、衣類や日焼け止めによる蒸れが発症しやすい条件として報告されており、今の時期に見逃したくない病気です。2025年の国内ガイドラインも確認しながら、何を見て、どう検査し、どのように治療を選ぶかを整理しました。
Key Points
まず押さえたい3つの要点
マラセチア毛包炎は、皮膚の常在真菌Malasseziaが毛包内で増え、炎症を起こす病気です。不潔だから起きるわけではありません。
胸・背中・肩・生え際に、1〜2mmほどの大きさがそろった丘疹や膿疱が多発し、かゆみを伴いやすく、ニキビの面皰は通常みられません。
見た目だけではニキビ、細菌性毛包炎、あせもと重なるため、丘疹・膿疱の内容物を直接鏡検して多数の胞子を確認することが診断の助けになります。
マラセチア毛包炎は、皮膚に普段からいる脂質を好む酵母Malasseziaが毛包内で増え、かゆい丘疹や膿疱を起こす病気です。暑さと湿気、汗、皮脂、運動、衣類や化粧品による蒸れ、最近の抗菌薬・ステロイド使用などが発症しやすい条件として報告されています。胸、背中、肩、生え際へ大きさのそろった小さな発疹が多数出て、白・黒ニキビにあたる面皰が乏しく、かゆみがある時は候補になります。ただしニキビとの併存もあり、見た目だけで確定はできません。皮膚科では分布と経過を確認し、必要に応じて丘疹・膿疱の内容物を直接鏡検します。治療は抗真菌薬が中心ですが、外用・内服の選択、保険適用、肝機能や併用薬の確認が必要です。
- 『同じ大きさ』『かゆい』『胸・背中・肩・生え際』『面皰が乏しい』が疑う手がかりです。
- 高温多湿の時期に増えやすい一方、かゆみがない例やニキビと混在する例もあるため、一項目だけでは決めません。
- 抗菌薬で改善しないから直ちにマラセチア毛包炎、というわけでもありません。診察と必要な検査で治療対象を整理します。
急速に広がる赤み、強い痛み、発熱がある時は『夏のぶつぶつ』として待たないでください
赤みや熱感が急速に広がる、強く痛む、大きな膿瘍やしこりができる、発熱・悪寒・だるさを伴う、顔や目の周囲が腫れる場合は、細菌感染など別の病気を含めて早めの評価が必要です。免疫を抑える治療中、糖尿病がある、抗がん薬治療中、臓器移植後などの方も自己判断で長く様子を見ず、医療機関へ相談してください。
胸や背中の『治らないニキビ』が、暑くなって目立つようになりました
ここ最近、胸や背中に細かいぶつぶつが並び、かゆみもある方を診る機会が増えました。患者さんは『汗でニキビが悪化した』と思っていることが多いのですが、よく見ると白ニキビや黒ニキビはほとんどなく、粒の大きさがきれいにそろっています。こういう時はマラセチア毛包炎を考えます。
ただし、『今年は地域全体で流行している』と断定できる感染症サーベイランスがあるわけではありません。ここでいう『増えてきた』は当院の診察室での実感です。一方、欧州の専門家声明では、発汗、高温環境、運動、皮脂の多さ、日焼け止めや保湿剤による閉塞、最近の抗菌薬・ステロイド使用、免疫抑制が発症しやすい条件として挙げられています。夏の診療実感と医学的な背景は矛盾しません。
私はまず、いつから、どこに出たか、かゆいか、粒がそろっているか、汗や運動の後に増えるか、ニキビ薬や抗菌薬を使ったかを聞きます。発疹の名前を急いで決めるより、『いつものニキビと何が違うか』を一緒に探す方が、診断に近づきやすいと感じます。
- 暑さや運動の後に増えたか
- 胸、背中、肩、生え際のどこに出たか
- かゆみがあるか、痛みがあるか
- 発疹の大きさがそろっているか
- 最近使った抗菌薬、ステロイド、ニキビ薬があるか
マラセチアは外からうつった『汚い菌』ではなく、普段から皮膚にいる真菌です
Malasseziaは脂質を必要とする酵母で、足の裏を除く皮膚の正常な真菌叢を構成しています。つまり、健康な人の皮膚にもいる常在真菌です。存在するだけでは病気ではありませんが、毛包の中で増え、炎症とかゆみを伴う丘疹・膿疱をつくった状態がマラセチア毛包炎です。
『真菌』『カビの仲間』と聞くと、洗い方が悪い、誰かからうつった、と感じるかもしれません。しかし、強く洗えば解決する病気ではありません。皮脂が多い部位、汗と熱がこもる環境、密着する衣類、油分の多い製品など複数の条件が重なって、普段のバランスが崩れることが問題です。
発疹は胸、背中、肩、上腕、額から生え際など、皮脂の多い部位に出やすくなります。国内ガイドラインでは、面皰を伴わない赤い丘疹・膿疱が胸、背中から肩へ出て、時にかゆみを伴うと説明されています。
見分ける手がかりは『面皰』『粒のそろい方』『かゆみ』『毛穴との一致』です
マラセチア毛包炎は、ニキビのように見えるため『fungal acne』と呼ばれることがあります。ただ、医学的にはニキビではなく毛包炎です。ニキビでは、白ニキビ・黒ニキビにあたる面皰、赤い丘疹、膿疱、しこりなど、異なる段階の発疹が混ざります。マラセチア毛包炎は、小さく単調で大きさのそろった毛包性丘疹・膿疱が多く、かゆみが手がかりです。
細菌性毛包炎も毛穴を中心に膿疱をつくりますが、剃毛や摩擦の後に限局して出る、触ると痛い、膿が増える、周囲の赤みが広がることがあります。あせもは汗の通り道が詰まって起こり、必ずしも毛穴の一つひとつに一致しません。
大切なのは、どの特徴も絶対ではないことです。マラセチア毛包炎でもかゆみが乏しい人がいて、ニキビと同時に起こることもあります。見た目のチェック表は診断の入口であり、自己診断の確定表ではありません。
見た目だけで決めず、必要な時は丘疹や膿疱の内容物を直接鏡検します
国内ガイドラインでは、マラセチア毛包炎を診断する時は丘疹・膿疱の内容物を鏡検し、染色した検体で多数のMalasseziaの胞子を確認するとしています。表面を軽くこするだけでは、毛包内の状態を十分に反映しないことがあります。どの病変から、どのように採取するかも大切です。
Malasseziaは常在真菌なので、少し見つかっただけで症状の原因と断定はできません。発疹の形、分布、かゆみ、季節、治療歴と、多数の胞子が確認できるかを合わせて判断します。必要に応じて細菌培養、ダーモスコピー、まれに皮膚生検などを考えます。
受診前には、最初に出た日、汗・運動・旅行・抗菌薬との関係、使ったニキビ薬やステロイド、発疹が増える前後の写真を残してください。写真はアップだけでなく、胸・背中のどこに分布しているか分かる距離でも撮ると診察に役立ちます。
- 発疹が始まった日と、暑さ・運動・汗との関係
- かゆみ、痛み、熱感の有無
- 使ったニキビ薬、抗菌薬、ステロイド、日焼け止め、ボディ製品
- 発疹のアップと、分布が分かる全体写真
- 肝疾患、心疾患、免疫低下、現在の内服薬
2025年の国内ガイドラインは抗真菌治療を推奨しています
日本皮膚科学会・日本医真菌学会の2025年ガイドラインは、マラセチア毛包炎への抗真菌薬治療を推奨度Aとし、抗真菌薬の内服を強く勧め、軽症例では外用を考慮するとしています。イトラコナゾールのランダム化比較試験と複数の症例集積研究が根拠になっています。
一方、治療は『全員に同じ薬』ではありません。病変が狭いか広いか、炎症の強さ、再発歴、肝機能、心疾患、妊娠可能性、現在の薬を確認します。イトラコナゾールは薬物相互作用が多く、肝機能障害や心不全にも注意が必要です。お薬手帳を確認せずに使える薬ではありません。
外用抗真菌薬は軽症例で役立つ可能性がありますが、国内ガイドラインではマラセチア毛包炎に対する外用薬は保険適用がないと記載されています。シャンプーや市販品を自己判断で全身へ長期間使うと、刺激性皮膚炎が混じることもあります。診断、範囲、保険適用、費用を確認して選びます。
抗菌薬はMalasseziaそのものには効きません。ただしニキビや細菌性毛包炎が併存することがあり、処方薬を突然やめることも適切ではありません。治療しても変わらない時は『薬が弱い』と決めつけず、診断と併存疾患を見直します。
再発予防は、強く洗うことより『汗を長く残さない・蒸れを減らす』ことから始めます
マラセチアは常在真菌なので、治療で皮膚から完全に消し去ることを目標にはしません。治療後に再発する人もいます。欧州の専門家声明は、リスクが重なる人では継続的な外用レジメンが再発予防に役立つ可能性を示していますが、方法は一律ではなく、皮膚状態と治療歴に合わせます。
日常では、汗をかいた服を長く着続けない、帰宅後や運動後に可能なら早めにシャワーで流す、通気性のよい衣類へ着替える、胸や背中に油分の多い製品を重ねすぎないことを考えます。汗をかくこと自体を禁止する必要はありません。
ゴシゴシ洗い、スクラブ、強いピーリング、アルコールで何度も拭くケアは、皮膚炎や色素沈着を増やすことがあります。清潔は大切ですが、『落とし切る』より『刺激を増やさず、汗と蒸れが続く時間を短くする』方が現実的です。
- 運動や通勤後は、汗を含んだ服をできるだけ早く替える
- ぬるめのシャワーで流し、タオルで強くこすらない
- 密着する衣類、リュック、寝具で蒸れる場所を確認する
- 油分の多いボディ製品や日焼け止めを重ねすぎない
- 再発時は自己流の製品を増やす前に、前回と同じ病気か確認する
かゆい均一なぶつぶつが続く時と、痛み・発熱・赤みの拡大がある時では緊急度が違います
胸や背中の小さなぶつぶつが数週間続く、汗の時期に繰り返す、かゆい、ニキビ治療で改善しない場合は、皮膚科で診断を整理する目安です。すでに治療中なら、薬の名前、使用期間、どの程度変わったかを伝えてください。
一方、強い痛み、急に広がる赤みと熱感、大きな膿瘍、発熱や悪寒は、典型的なマラセチア毛包炎だけでは説明しにくい変化です。細菌性の毛包炎、せつ、蜂窩織炎などを含めて、早めに受診します。
免疫を抑える薬を使っている方、抗がん薬治療中、臓器移植後、コントロール不良の糖尿病がある方では、皮膚症状の見え方や重症度が変わることがあります。軽く見える発疹でも、背景を診察時に必ず共有してください。
今日の学びは、『夏のニキビ』という一言の中に、別の治療が必要な発疹が隠れていることでした
暑くなると、汗とニキビの相談が増えます。けれども、胸や背中に同じ大きさのぶつぶつが並び、かゆみがあり、面皰が見当たらない時は、いつものニキビ治療をそのまま足す前にマラセチア毛包炎を考える必要があります。
調べ直して印象に残ったのは、2025年の国内ガイドラインが診断方法と抗真菌治療をかなり具体的に示していたことです。見た目で当てにいくのではなく、必要なら毛包内容を鏡検する。内服を選ぶなら相互作用、肝機能、心疾患まで確認する。軽症外用の保険適用も説明する。診断の後にも丁寧さが必要です。
患者さんにお願いしたいのは、強く洗って『菌を落とそう』としないことです。汗を長く残さず、蒸れを減らし、処方薬や市販品を自己流で重ねない。治りにくい時には、自分のケアが悪いと責めるのではなく、そもそもの診断が合っているかを一緒に見直しましょう。
- 季節の実感と地域の流行統計を混同しない
- 均一、かゆい、面皰が乏しい、上半身という組み合わせを見逃さない
- 直接鏡検と治療反応を、臨床所見と合わせて判断する
- 抗真菌薬の効果だけでなく、保険適用と安全性も説明する
池袋で胸・背中のかゆいぶつぶつ、マラセチア毛包炎を相談したい方へ
池袋駅・東池袋周辺で、暑くなってから胸、背中、肩、生え際に同じ大きさのかゆいぶつぶつが増えた場合は、発症日、汗や運動との関係、使ったニキビ薬・抗菌薬・ステロイド、発疹の写真、お薬手帳を持ってご相談ください。
池袋サンシャイン通り皮膚科では、一般皮膚科(保険診療)としてニキビ、細菌性毛包炎、マラセチア毛包炎、あせも、湿疹などを見分けます。必要に応じて検査を行い、範囲、重症度、持病、併用薬を確認して治療を提案します。
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よくある質問
マラセチア毛包炎はどのような見た目ですか?
胸、背中、肩、上腕、額から生え際などに、1〜2mmほどの大きさがそろった赤い丘疹や小さな膿疱が多数出ます。かゆみを伴うことが多く、白ニキビ・黒ニキビにあたる面皰が乏しいことが手がかりです。ただし見た目だけでは確定できません。
マラセチア毛包炎とニキビはどう違いますか?
ニキビは面皰、赤い丘疹、膿疱、しこりなど異なる段階の病変が混ざります。マラセチア毛包炎は小さく均一な毛包性丘疹・膿疱が多く、かゆみを伴いやすい点が違いです。ただし両方が同時に起こるため、面皰、分布、検査を合わせて判断します。
マラセチア毛包炎は夏や汗で増えますか?
高温多湿、発汗、運動、皮脂、衣類や日焼け止めなどによる閉塞は発症しやすい条件として報告されています。夏に目立つことはありますが、汗をかいた人が必ず発症するわけではなく、年中みられる場合もあります。
マラセチア毛包炎は人にうつりますか?不潔だから起こるのですか?
Malasseziaは健康な人の皮膚にも普段からいる常在真菌で、一般的な接触感染症として扱う病気ではありません。不潔だから起きるわけでもありません。皮脂、汗、湿度、蒸れ、薬剤、免疫状態などが重なり、毛包内で増えることが関係します。
マラセチア毛包炎はどのように検査しますか?
発疹の形と分布を確認し、必要に応じて丘疹・膿疱の内容物を採取して直接鏡検します。染色した検体で多数のMalasseziaの胞子を確認することが診断の助けになります。常在真菌なので、少量見つかっただけではなく臨床所見と合わせます。
マラセチア毛包炎にはどの薬を使いますか?
抗真菌薬が治療の中心です。2025年の国内ガイドラインは内服抗真菌薬を強く推奨し、軽症例では外用を考慮するとしています。範囲、重症度、肝機能、心疾患、妊娠可能性、併用薬、保険適用を確認して選ぶため、自己判断で薬を使わないでください。
ニキビの抗菌薬でマラセチア毛包炎は治りますか?
抗菌薬は細菌に対する薬で、Malasseziaには効きません。抗菌薬使用後にマラセチア毛包炎が目立った報告もあります。ただしニキビや細菌性毛包炎が併存することがあるため、処方薬を自己判断で中止せず、改善しないことを処方医へ伝えて診断を見直します。
マラセチア毛包炎は再発しますか?
再発することがあります。治療後も汗、皮脂、蒸れなどの条件が重なるためです。汗を含んだ服を替える、やさしく洗い流す、密着と油分の重なりを減らすことを続けます。再発を繰り返す場合の維持治療は、自己流ではなく皮膚科で相談してください。
監修医師メッセージ
吉井恭平 池袋サンシャイン通り皮膚科 院長
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- PMDA. イトラコナゾールカプセル50mg 電子添文(併用禁忌、肝機能障害、心不全に関する注意).