マスクニキビ(マスクネ)の予防と対策|医師が解説
- ✓ マスクニキビはマスクの摩擦、蒸れ、細菌増殖が主な原因です。
- ✓ 正しいスキンケア、マスクの選び方・着用方法、生活習慣の改善が予防と対策の鍵です。
- ✓ 症状が改善しない場合は、皮膚科での専門的な治療を検討しましょう。
マスクニキビ(マスクネ)とは?その原因とメカニズム

マスクニキビ(Maskne)とは、マスクの着用によって引き起こされる、または悪化するニキビ(尋常性ざ瘡)やその他の皮膚トラブルの総称です。COVID-19パンデミック以降、マスクの常用が一般的になったことで、多くの人が経験するようになりました[3]。当院でも「マスクを着けるようになってから顎や口周りにニキビが増えた」「肌荒れがひどくなった」と相談される患者さまが少なくありません。
マスクニキビの主な原因とは?
マスクニキビの発生には、主に以下の3つの要因が複合的に関与しています。
- 摩擦による刺激:マスクが皮膚に繰り返し擦れることで、物理的な刺激が生じます。この摩擦は、皮膚のバリア機能を低下させ、毛穴の詰まりや炎症を引き起こしやすくなります[1]。
- 高温多湿な環境:マスク内部は呼吸によって温度と湿度が上昇し、密閉された状態になります。この高温多湿な環境は、アクネ菌などの細菌が繁殖しやすい条件を作り出し、ニキビの発生を促進します[1]。
- 汗や皮脂の増加:マスク内の蒸れにより、汗や皮脂の分泌が活発になります。これらが毛穴に詰まることで、ニキビの直接的な原因となる面皰(めんぽう)や炎症性ニキビが発生しやすくなります。
マスクニキビのメカニズム
マスク着用による皮膚への影響は、以下のような段階でニキビを形成すると考えられています。
- 角質層の損傷:マスクの摩擦により、皮膚の最も外側にある角質層が損傷し、バリア機能が低下します。
- 毛穴の閉塞:バリア機能の低下した皮膚は乾燥しやすくなり、過剰な角質が毛穴を塞ぎやすくなります。また、汗や皮脂の増加も毛穴の詰まりを助長します。
- 細菌の増殖:毛穴が詰まり、皮脂が溜まると、酸素が少ない環境を好むアクネ菌(Cutibacterium acnes)が増殖しやすくなります。
- 炎症の発生:アクネ菌が皮脂を分解する際に生じる物質や、免疫反応によって炎症が引き起こされ、赤ニキビや化膿したニキビへと進行します。
これらの要因が複合的に作用することで、通常のニキビよりも広範囲に、あるいは重症化して現れることがあります[4]。
- 尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)
- 一般的に「ニキビ」と呼ばれる皮膚疾患で、毛穴の詰まり、皮脂の過剰分泌、アクネ菌の増殖、炎症が主な原因で発生します。思春期に多く見られますが、成人期にも発生することがあり、顔だけでなく胸や背中にもできることがあります。
マスクニキビの予防策:日常生活でできること
マスクニキビの予防には、日々のスキンケアとマスクの適切な使用が非常に重要です。当院で患者さまにお伝えしている予防策を具体的にご紹介します。
正しい洗顔と保湿の習慣化
適切な洗顔と保湿は、皮膚のバリア機能を維持し、ニキビの発生を防ぐ上で不可欠です。
- 優しく洗顔する:刺激の少ない洗顔料を選び、泡立ててから優しく洗いましょう。熱すぎるお湯は皮脂を過剰に洗い流し、乾燥を招くため、ぬるま湯を使用してください。洗顔後は清潔なタオルで軽く押さえるように水分を拭き取ります。
- 十分な保湿を行う:洗顔後はすぐに化粧水で水分を補給し、乳液やクリームで蓋をして保湿成分を閉じ込めます。セラミドやヒアルロン酸など、保湿力の高い成分が配合された製品がおすすめです。保湿を怠ると、皮膚が乾燥してバリア機能が低下し、かえって皮脂の分泌が過剰になることがあります。
「洗顔しすぎると乾燥してニキビが悪化する気がする」というお声もよく聞きますが、これは正しい洗顔と保湿ができていないケースが多いです。特にマスクを外した後の肌は乾燥しやすいため、適切な保湿が大切です。
マスクの選び方と適切な着用方法
マスクの種類や着用方法も、マスクニキビに大きく影響します。
- 素材を選ぶ:通気性が良く、肌触りの良い天然素材(綿、シルクなど)のマスクは、摩擦や蒸れを軽減する効果が期待できます。不織布マスクを使用する場合は、内側にガーゼやシルクのインナーマスクを挟むのも有効です。
- サイズを確認する:顔にフィットしすぎず、かといって隙間が多すぎない適切なサイズのマスクを選びましょう。サイズが合わないと摩擦が増えたり、ウイルス飛沫の防御効果が低下したりする可能性があります。
- 定期的に交換・洗濯する:使い捨てマスクは毎日新しいものに交換し、布マスクは毎日洗濯して清潔に保ちましょう。汚れたマスクを使い続けると、細菌が繁殖しやすくなります。
- 適度にマスクを外す:人がいない場所や会話をしない状況では、一時的にマスクを外して肌を休ませる時間を作りましょう。これにより、マスク内の蒸れを軽減できます。
生活習慣の改善
全身の健康状態は肌の健康にも直結します。以下の生活習慣を見直すことで、肌の抵抗力を高め、ニキビの発生を抑えることができます。
- バランスの取れた食事:ビタミンB群、ビタミンC、亜鉛など、皮膚の健康に必要な栄養素を積極的に摂取しましょう。高GI食品(血糖値を急激に上げる食品)や乳製品の過剰摂取は、ニキビを悪化させる可能性が指摘されています。
- 十分な睡眠:睡眠不足はホルモンバランスの乱れを引き起こし、皮脂の過剰分泌や肌のターンオーバーの乱れにつながります。質の良い睡眠を7〜8時間確保するよう心がけましょう。
- ストレス管理:ストレスはホルモンバランスに影響を与え、ニキビを悪化させることがあります。適度な運動、趣味、リラクゼーションなどでストレスを解消する習慣を持つことが大切です。
マスクニキビの治療法:市販薬と医療機関での治療

マスクニキビができてしまった場合、症状に応じて適切な対策が必要です。軽度のニキビであれば市販薬で対応できることもありますが、改善しない場合や重症化している場合は、皮膚科での専門的な治療を検討しましょう。
市販薬での対処法
ドラッグストアなどで購入できる市販薬には、ニキビの炎症を抑えたり、殺菌作用を持つ成分が配合されています。
- 抗炎症成分:イブプロフェンピコノール、グリチルリチン酸ジカリウムなど。赤みや腫れを抑える効果が期待できます。
- 殺菌成分:イソプロピルメチルフェノール、レゾルシンなど。アクネ菌の増殖を抑える効果があります。
- 角質軟化成分:サリチル酸など。毛穴の詰まりを改善する効果が期待できます。
市販薬を使用する際は、必ず添付文書をよく読み、用法・用量を守って使用してください。症状が改善しない、悪化する、刺激を感じるなどの場合は、使用を中止し、医療機関を受診しましょう。
市販薬はあくまで対症療法であり、根本的な治療には至らない場合があります。特に炎症が強い場合や広範囲にわたる場合は、自己判断せずに専門医の診察を受けることが重要です。
医療機関での専門的な治療法
皮膚科では、患者さまのニキビの状態や原因に合わせて、様々な治療法を組み合わせて行います。初診時に「市販薬を色々試したけど全然良くならない」とご相談いただくケースは非常に多いです。問診の際に、これまでのスキンケアや使用した市販薬について詳しく伺い、肌の状態を丁寧に診察した上で、最適な治療プランをご提案しています。
外用薬による治療
- アダパレン(ディフェリンゲルなど):毛穴の詰まりを改善し、ニキビの初期段階である面皰の形成を抑える効果があります。
- 過酸化ベンゾイル(ベピオゲルなど):アクネ菌に対する殺菌作用と、毛穴の詰まりを改善する作用を併せ持ちます。
- 抗菌薬(アクアチムクリーム、ゼビアックスローションなど):炎症性のニキビに対して、アクネ菌の増殖を抑える目的で使用されます。
- これらの併用療法:アダパレンと過酸化ベンゾイルの合剤(エピデュオゲルなど)や、抗菌薬との併用でより高い効果が期待できます。
内服薬による治療
- 抗菌薬:炎症が強い場合や広範囲にニキビがある場合に、アクネ菌を抑制する目的で処方されます。
- ビタミン剤:ビタミンB群やビタミンCなど、肌の代謝を助けたり、炎症を抑えたりする効果が期待できるものが処方されることがあります。
- ホルモン療法:女性の場合、ホルモンバランスの乱れがニキビの原因となっている場合に、低用量ピルなどが検討されることがあります。
その他の治療
- ケミカルピーリング:酸性の薬剤を皮膚に塗布し、古い角質を除去することで、毛穴の詰まりを改善し、肌のターンオーバーを促進します。
- レーザー治療・光治療:炎症性のニキビやニキビ跡の赤み、色素沈着に対して効果が期待できる場合があります。
- 面皰圧出:毛穴に詰まった皮脂や角質を手作業で除去する処置です。
実際の診療では、これらの治療法を患者さまの肌質、ニキビの種類、重症度、ライフスタイルに合わせてオーダーメイドで組み合わせます。治療を始めて1〜2ヶ月ほどで「赤みが引いてきた」「新しいニキビができにくくなった」とおっしゃる方が多いです。処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。
マスクニキビと間違えやすい他の皮膚疾患とは?
マスク着用によって生じる皮膚トラブルはニキビだけではありません。マスクニキビと症状が似ていても、異なる治療が必要な疾患もあるため、注意が必要です。
接触皮膚炎(かぶれ)
マスクの素材や加工剤、化粧品、汗などが原因で皮膚が炎症を起こす状態です。赤み、かゆみ、ブツブツ、水ぶくれなどが生じます。ニキビと異なり、かゆみが強いことが多いのが特徴です。特定のマスクや化粧品を使い始めた後に症状が出た場合は、接触皮膚炎の可能性を疑います。
酒さ(しゅさ)
顔、特に頬や鼻、顎などに赤みや毛細血管の拡張が見られる慢性的な炎症性疾患です。ニキビに似た赤いブツブツ(丘疹)や膿疱(のうほう)ができることもあります。マスク内の高温多湿な環境や摩擦が酒さを悪化させる要因となることがあります。当院では、問診の際に患者さまの肌の赤みやほてりの有無、飲酒習慣なども詳しく伺い、酒さの可能性がないか慎重に判断しています。
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)
皮脂腺が活発な部位(顔の中心部、鼻の周り、眉間、頭皮など)に発生する湿疹で、赤み、かゆみ、フケのような落屑(らくせつ)が特徴です。マスク内の蒸れが、原因となるマラセチア菌の増殖を促し、症状を悪化させることがあります。
| 疾患名 | 主な症状 | 特徴・鑑別点 |
|---|---|---|
| マスクニキビ(尋常性ざ瘡) | 面皰(白ニキビ・黒ニキビ)、赤いブツブツ(丘疹)、膿を持ったブツブツ(膿疱) | 毛穴の詰まりが主体。マスク着用部位に集中。かゆみは比較的少ない。 |
| 接触皮膚炎 | 赤み、強いかゆみ、ブツブツ、水ぶくれ、カサつき | 接触した物質が原因。かゆみが非常に強い。境界が比較的はっきりしている。 |
| 酒さ | 顔の赤み、ほてり、毛細血管拡張、ニキビに似たブツブツ(丘疹・膿疱) | 慢性的な経過。顔の中心部に多い。飲酒や刺激で悪化。ニキビと異なり面皰は少ない。 |
| 脂漏性皮膚炎 | 赤み、かゆみ、フケのような落屑、べたつき | 皮脂の多い部位に発生。マラセチア菌が関与。 |
これらの疾患は見た目が似ていても、治療法が異なります。自己判断で市販のニキビ薬を使い続けると、かえって症状を悪化させる可能性もあります。症状が長引く場合や、診断に迷う場合は、早めに皮膚科を受診し、正確な診断と適切な治療を受けることが大切です。
マスクニキビの治療期間と経過観察の重要性

マスクニキビの治療は、症状の重症度や選択される治療法によって期間が異なります。適切な治療と継続的なケアが、良好な肌状態を維持するために重要です。
治療期間の目安
軽度のマスクニキビであれば、数週間から1ヶ月程度の適切なスキンケアや市販薬の使用で改善が見られることがあります。しかし、炎症が強いニキビや広範囲にわたるニキビ、慢性的なニキビの場合は、医療機関での治療が必要となり、数ヶ月から半年以上の期間を要することも珍しくありません。
- 外用薬:効果を実感するまでに2〜3ヶ月かかることが一般的です。症状が改善した後も、再発防止のために維持療法として継続することもあります。
- 内服薬:通常、数週間から数ヶ月間服用します。症状の改善に応じて、徐々に減量したり中止したりします。
- 美容皮膚科的治療:ケミカルピーリングやレーザー治療などは、複数回の施術が必要となることが多く、治療間隔を空けながら数ヶ月かけて行われます。
当院では、治療開始前に患者さまのニキビの状態を詳しく説明し、治療期間の目安や期待できる効果、起こりうる副作用について丁寧に説明するようにしています。特に、ニキビ治療は継続が重要であるため、治療のモチベーションを維持できるよう、定期的な経過観察と丁寧なカウンセリングを心がけています。
経過観察の重要性
ニキビ治療において、定期的な経過観察は非常に重要です。
- 治療効果の評価:治療薬が効果を発揮しているか、症状が改善しているかを医師が確認します。
- 副作用の確認:治療薬によっては、乾燥、赤み、刺激感などの副作用が出ることがあります。これらの副作用の有無や程度を確認し、必要に応じて薬の量や種類を調整します。
- 治療計画の調整:症状の改善が見られない場合や悪化している場合は、治療計画を見直し、他の治療法への切り替えや追加を検討します。
- 再発予防:ニキビは再発しやすい疾患です。症状が落ち着いた後も、維持療法や適切なスキンケアの指導を通じて、再発を防ぐためのサポートを行います。
「一度良くなったけど、またすぐにニキビができてしまった」という患者さまもいらっしゃいますが、これは治療を途中でやめてしまったり、維持療法が不十分だったりするケースが多いです。診察の中で、患者さまの肌の状態だけでなく、ストレスや生活習慣の変化などもヒアリングし、総合的に判断して治療を継続できるようサポートしています。
まとめ
マスクニキビ(マスクネ)は、マスク着用による摩擦、蒸れ、細菌増殖が主な原因で発生するニキビや肌荒れです。予防策としては、正しい洗顔と保湿、通気性の良いマスクの選択、定期的なマスクの交換、そしてバランスの取れた食事や十分な睡眠といった生活習慣の改善が挙げられます。症状が軽度であれば市販薬での対処も可能ですが、改善が見られない場合や重症化している場合は、皮膚科での専門的な治療を検討することが重要です。医療機関では、外用薬や内服薬、ケミカルピーリングなどの治療法を患者さまの状態に合わせて提供し、定期的な経過観察を通じて、効果的な治療と再発予防をサポートします。マスクニキビは放置するとニキビ跡として残る可能性もあるため、早めの対策と専門医への相談が大切です。
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よくある質問(FAQ)
- Wan-Lin Teo. Diagnostic and management considerations for “maskne” in the era of COVID-19.. Journal of the American Academy of Dermatology. 2021. PMID: 33011321. DOI: 10.1016/j.jaad.2020.09.063
- Alena Roessle, Stefanie Gluecklich, Martina Kerscher et al.. Efficacy of Incobotulinumtoxin A on Maskne: Evaluation in a Prospective, Single-Center, Placebo-Controlled, Double-Blind Study.. Journal of cosmetic dermatology. 2025. PMID: 40847901. DOI: 10.1111/jocd.70391
- Abrar E Bukhari, Alhanouf A Bin Dakhil, Abdulrhman A Albrkheel et al.. Face mask-induced skin changes: a new common phenomenon during the coronavirus disease 2019 pandemic.. Dermatology reports. 2023. PMID: 37063397. DOI: 10.4081/dr.2022.9526
- Emily Rudd, Sarah Walsh. Mask related acne (“maskne”) and other facial dermatoses.. BMJ (Clinical research ed.). 2021. PMID: 34099456. DOI: 10.1136/bmj.n1304
- ディフェリン(アダパレン)添付文書(JAPIC)
- ベピオ(過酸化ベンゾイル)添付文書(JAPIC)
- アクアチム(ナジフロキサシン)添付文書(JAPIC)
- イブプロフェン(イブプロフェン)添付文書(JAPIC)