
Pediatric HAE / New Label 2026
オラデオ顆粒が小児HAEに承認体重別用量と注意点
2026年8月26日、PMDAでオラデオ顆粒分包72mg・96mg・108mg・132mgの添付文書が新規公開されました。対象は2歳以上12歳未満の遺伝性血管性浮腫(HAE)で、体重に応じた顆粒を1日1回、食後または食事とともに服用します。 この薬は、これから起こるHAE発作を減らすための長期発作抑制薬です。すでに起きた発作を治す薬ではなく、のどの腫れなど緊急時の対応を置き換えるものでもありません。この記事では、国内の承認用量と試験時の用量を混同しないように分け、29例のAPeX-P試験で分かったこと、まだ分からないこと、安全に使うための確認項目を整理します。
Key Points
まず押さえたい、3つのポイント
PMDA添付文書では、2歳以上12歳未満・体重15kg以上に72〜132mgを体重別で1日1回投与する
顆粒は噛む・砕く・溶かすことを避け、食後または食事とともに服用する
APeX-Pは29例の単一群非盲検試験で、無作為化対照試験ではない
オラデオ顆粒は、起きているHAE発作を治す薬ではありません
長期発作抑制薬を使用していても発作は起こり得ます。のどの腫れ、声のかすれ、飲み込みにくさ、息苦しさなどは生命に関わる可能性があります。主治医から指示された発作時治療と救急行動計画に従い、緊急時は通常の外来予約を待たないでください。
結論:小児の選択肢は増えましたが、予防薬と発作時治療は別です
PMDAの新しい添付文書により、オラデオ顆粒は2歳以上12歳未満の小児HAEに対し、体重別で1日1回使う国内の用法・用量が示されました。注射や点滴ではなく経口の顆粒で長期発作抑制を行う選択肢です。
一方、添付文書は『急性発作の治療を目的に本剤を服用しないこと』と明記しています。毎日服用していても、発作時に使うオンデマンド治療薬、のどの症状が出たときの救急行動、学校や外出先での連絡方法は別に準備します。
国内用量は年齢だけでなく体重で決まり、顆粒剤と既存カプセルの生物学的同等性は示されていません。研究論文の用量や家族の処方を参考に自己調整せず、体重変化、併用薬、心電図、肝機能を処方医と確認することが重要です。
- 2歳以上12歳未満・体重15kg以上が国内承認用量の範囲
- 1日1回の長期発作抑制薬で、急性発作治療薬ではない
- 体重変化と安全性を定期的に確認する
何が新しくなった?4規格の小児用顆粒が新規掲載されました
2026年8月26日のPMDA『1か月以内に更新された添付文書情報』には、オラデオ顆粒分包72mg、96mg、108mg、132mgが『新規』として掲載されています。製造販売元はオーファンパシフィック、販売提携は鳥居薬品、提携はバイオクリスト・ジャパンです。
効能・効果は『遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制』です。ここでいう発症抑制は、発作が起こりにくくなるよう毎日使う予防を指します。発作が始まってから症状を止める意味ではありません。侵襲を伴う処置の前に短期間使う発作予防については、有効性と安全性が検討されていないと添付文書に記載されています。
HAEの長期発作抑制を始めるかどうかは、発作回数だけでなく、部位、重症度、救急受診、学校生活、本人と家族の負担、発作時治療へのアクセスを含めて個別に判断します。新しい剤形が出たことだけで、全員が切り替えるわけではありません。
国内の承認用量:2歳以上12歳未満で体重別に4段階です
PMDA添付文書の用法・用量は、2歳以上12歳未満の小児に、ベロトラルスタットとして体重別の用量を1日1回、食後または食事とともに経口投与するものです。現在の体重に対応する1包を使い、複数規格を自己判断で組み合わせません。
体重区分の境目に近い場合や成長で区分をまたいだ場合は、次回受診まで待つべきかを含め処方元へ確認します。家庭の体重計だけで用量を変更したり、余っている規格へ切り替えたりしないでください。
添付文書では、臨床試験で3歳未満および体重15kg未満の幼児に使用経験がないとされています。承認年齢が2歳以上であっても、2歳児すべての使用経験があるという意味ではありません。とくに低年齢・低体重では、得られているデータの範囲を医師と確認します。
| 体重 | 1日量 | 服用回数・タイミング |
|---|---|---|
| 15kg以上24kg未満 | 72mg(1包) | 1日1回、食後または食事とともに |
| 24kg以上32kg未満 | 96mg(1包) | 1日1回、食後または食事とともに |
| 32kg以上40kg未満 | 108mg(1包) | 1日1回、食後または食事とともに |
| 40kg以上 | 132mg(1包) | 1日1回、食後または食事とともに |
顆粒の服用方法:噛む・砕く・溶かすことは避けます
顆粒には苦味を避けるコーティングがあります。添付文書は、顆粒を噛んだり砕いたり、溶かしたりせず、そのまま服用するよう求めています。オレンジジュースのような酸性の食品はコーティングを溶かして苦味が出る可能性があるため使用しません。
服用方法は2つ示されています。1包の全量を直接口に含み、酸性飲料を避け、速やかに水または牛乳で飲み込む方法と、1包の全量を約大さじ1杯(15mL)の柔らかい非酸性食品に混ぜ、室温で、混合後10分以内に服用する方法です。
子どもが一部をこぼした、吐いた、服用できた量が不明、飲み忘れたという場合は、自己判断で追加の1包を使わず処方元へ確認します。添付文書にない食品や飲料へ混ぜる前にも、薬剤師または処方医へ相談してください。
- 1包の全量を使い、顆粒を噛む・砕く・溶かすことを避ける
- 水・牛乳、または柔らかい非酸性食品を使う
- 食品へ混ぜた場合は室温で10分以内に服用する
APeX-P試験:29例を対象にした単一群・非盲検の第3相試験です
APeX-P(NCT05453968)は、2歳以上12歳未満のI型またはII型HAEを対象とした国際共同第3相試験です。論文の中間解析には29例が入り、年齢中央値は8歳(範囲3〜11歳)、女性は48.3%でした。症状発現年齢の中央値は2歳で、82.8%は6歳未満で症状が始まっていました。
試験は、まず12週間の標準治療期を置き、その後にベロトラルスタットを投与しました。Part 1が12週、Part 2が36週、Part 3が96週の計画で、中間解析では薬物動態と有効性を48週まで、安全性を得られた追跡期間まで評価しています。11施設・9か国で実施されました。
重要な点は、無作為化されておらず、プラセボや別の長期予防薬を同時期に比較する対照群がないことです。投与前12週間の本人の発作頻度と投与後を比べています。自然な時期変動、記録行動の変化、平均への回帰などを完全には分けられません。
| 項目 | 内容 | 読み方の注意 |
|---|---|---|
| 対象 | HAEの小児29例、年齢中央値8歳 | 少数例で、3歳未満は含まれない |
| 比較 | 投与前12週と投与後 | 同時対照群なし |
| デザイン | 単一群・非盲検・第3相 | 本人・医療者とも治療を知っている |
| 主目的 | 薬物動態 | 有効性比較を主目的にした無作為化試験ではない |
試験結果:投与後に発作頻度は低下しましたが、比較試験ではありません
PMDA添付文書では、29例の1か月当たりHAE発作頻度の平均値は、標準治療期1.507回/月に対し、ベロトラルスタット投与時は0.523回/月でした。これは48週間までの試験データをまとめた記載です。
論文では中央値も報告され、標準治療期0.96回/月から、投与最初の12週間は0.33回/月、48週まででは0.41回/月でした。標準治療期に発作ゼロだったのは1人(3.4%)で、投与最初の12週間では12人(41.4%)が発作ゼロでした。発作治療薬を使った発作の中央値も0.7回/月から12週0.3回/月、48週まで0.2回/月へ低下しました。
平均値と中央値は同じ指標ではなく、PMDA添付文書と論文の解析時点・定義も完全に同じとは限りません。ここでは数値を混ぜて効果率を計算せず、いずれも投与前より低かったという観察結果として読みます。個々の子どもで発作がなくなることを保証する数字ではありません。
| 指標 | 標準治療期 | ベロトラルスタット投与後 |
|---|---|---|
| 平均発作頻度(PMDA) | 1.507回/月 | 0.523回/月(48週まで) |
| 発作頻度中央値(論文) | 0.96回/月 | 0.33回/月(12週)、0.41回/月(48週まで) |
| 12週間で発作ゼロ | 1/29例(3.4%) | 12/29例(41.4%) |
安全性:心電図、肝機能、併用薬の確認が重要です
PMDA添付文書は、QT延長があらわれるおそれがあるため、投与前と投与中に心電図検査を行うなど患者の状態を十分に確認するよう求めています。QT延長の既往、不整脈、虚血性心疾患、低カリウム血症、QT延長を起こす薬剤の使用がある場合は、処方前に必ず共有します。
中等度・重度の肝機能障害では血中濃度が上がり、QT延長が起こりやすくなるおそれがあります。重大な副作用として肝機能障害3.8%、QT延長は頻度不明と記載されています。シクロスポリン、CYP3A4またはCYP2D6で代謝される薬剤、ジゴキシン、QT延長を起こす薬剤などは併用注意です。市販の咳止めなども含め、薬・サプリメントの一覧を提示します。
小児試験の添付文書記載では、副作用は4/29例(13.8%)で、悪心、頭痛、嘔吐、体重増加が各1例でした。論文では治療開始後の有害事象全体は25/29例(86.2%)でしたが、鼻咽頭炎や上気道感染など因果関係を問わない出来事を含みます。薬剤関連と研究者が判断した治療下有害事象は2例で、重篤な薬剤関連事象、死亡、有害事象による中止はありませんでした。
- 投与前・投与中の心電図などでQT延長リスクを確認する
- 肝機能障害とすべての併用薬を処方医・薬剤師へ伝える
- 腹部症状、頭痛、体重変化など気になる変化を記録する
試験用量と国内承認用量は同じではありません
APeX-Pでは登録時体重に応じ、40kg以上に150mgカプセル、32kg以上40kg未満に108mg顆粒、24kg以上32kg未満に96mg顆粒、12kg以上24kg未満に78mg顆粒を開始しました。試験中は体重、薬物動態、安全性に応じて用量調整が許容されました。
これに対し、日本の顆粒の承認用量は、15kg以上24kg未満72mg、24kg以上32kg未満96mg、32kg以上40kg未満108mg、40kg以上132mgです。最低体重、最軽量区分、40kg以上の剤形と用量が試験開始時の区分と異なります。
添付文書は、顆粒とオラデオカプセルの生物学的同等性は示されておらず、互換使用しないよう明記しています。論文表や海外サイトの用量から、日本で使う包数や規格を計算してはいけません。最新の国内添付文書と処方指示を優先します。
研究の限界と利益相反:企業主導の小規模中間解析です
APeX-Pは希少な小児HAEを対象にした重要な試験ですが、29例と少なく、単一群・非盲検で、同時期の対照群がありません。中間解析時点で48週を完了したのは17例で、曝露期間は参加者ごとに異なりました。3例は効果不十分と感じて中止し、1例は服薬遵守の問題で中止しています。
試験はI型またはII型HAEを対象とし、試験登録上は2歳以上でしたが、論文解析の最年少は3歳です。日本人の2歳以上12歳未満を対象にした対照試験ではありません。まれな有害事象、長期の成長への影響、ほかの長期予防薬との優劣、個々の発作部位別の効果は、この29例の中間解析だけでは確定できません。
研究はBioCryst Pharmaceuticalsが資金提供し、研究デザイン、データ解析・解釈に関与しました。複数の著者が同社社員で、ほかの著者にもBioCrystを含む企業からの研究費、講演料、助言料などの開示があります。医学執筆支援、編集支援、論文掲載料も同社が資金提供しました。結果は査読論文とPMDA添付文書の両方で確認し、企業関与を含めて解釈する必要があります。
毎日の予防薬を始めても、発作時の治療計画は残します
HAEはブラジキニンが関与する血管性浮腫で、一般的なヒスタミン性じんましんとは仕組みが異なります。じんましんの膨疹や強いかゆみを伴わず、手足、顔、腹部、外陰部、のどなどに腫れが出ることがあります。腹部発作では強い腹痛、吐き気、嘔吐が起こることがあります。
のどや舌の腫れ、声の変化、飲み込みにくさ、息苦しさは緊急です。毎日のオラデオ顆粒を追加服用して待つのではなく、主治医から指示されたオンデマンド治療を行い、救急要請を含む行動計画に従います。学校、学童、旅行先でも治療薬と連絡手順へアクセスできるようにします。
長期発作抑制薬を使用しても、発作記録は続けます。発作日、部位、重症度、誘因候補、発作時治療を使うまでの時間、救急受診、欠席日数を記録すると、治療目標と負担を再評価しやすくなります。発作が減らない、服用が難しい、有害事象が疑われる場合も、自己中止や増量ではなく早めに主治医へ相談します。
開始前・継続中に主治医と確認したいチェックリスト
開始前には、HAEの病型、発作の頻度・部位・重症度、現在の体重、心臓病や不整脈、失神、肝機能障害、家族の突然死、処方薬・市販薬・サプリメントを確認します。心電図や血液検査をいつ行うかも、医療機関の指示を記録します。
服用開始後は、毎日同じ生活場面で続けられているか、顆粒を噛まずに飲めているか、食事とのタイミング、こぼれや嘔吐、発作回数、発作時治療、腹部症状、頭痛、体重変化などを振り返ります。成長で体重区分をまたぐ可能性があるため、定期的な体重確認も必要です。
新規添付文書の公開と、すべての医療機関での採用・在庫、実際の処方開始時期は同じとは限りません。薬価、供給、処方可能な施設、発作時治療薬とのセット、学校へ提出する書類などは、受診先へ個別に確認してください。
Ikebukuro Local Care
池袋で繰り返す腫れやHAEについて相談したい方へ
池袋で皮膚科受診をご検討の方へ
じんましんを伴わず、唇・まぶた・手足などの腫れや強い腹痛を繰り返す場合は、写真、発症時刻、家族歴、使用した薬、じんましんの有無を記録すると診察で役立ちます。HAEは希少疾患であり、確定診断や長期発作抑制薬の選択には専門医療機関との連携が必要になることがあります。
池袋サンシャイン通り皮膚科では、一般皮膚科で見える腫れやじんましんの経過を確認し、HAEが疑われる場合の専門科受診を整理します。のどの詰まり、声の変化、息苦しさがあるときは通常外来を待たず、救急要請を含む緊急対応を優先してください。
よくある質問
オラデオ顆粒は何歳から使えますか?
国内添付文書の用法・用量は2歳以上12歳未満です。ただし体重15kg以上の区分から用量が示され、臨床試験では3歳未満と15kg未満の使用経験がありません。年齢だけで対象を判断せず、体重と得られているデータを処方医に確認します。
体重別の用量はどう決まりますか?
15kg以上24kg未満72mg、24kg以上32kg未満96mg、32kg以上40kg未満108mg、40kg以上132mgを1日1回使うのが国内承認用量です。成長で区分をまたいでも自己変更せず、処方元へ確認してください。
発作が起きたときにオラデオ顆粒を追加で飲めばよいですか?
いいえ。添付文書は、急性発作の治療を目的に服用しないよう明記しています。主治医から指示された発作時治療と救急行動計画に従い、のどの腫れや息苦しさでは通常外来を待たないでください。
顆粒はジュースや食べ物に混ぜられますか?
約15mLの柔らかい非酸性食品へ混ぜ、室温で10分以内に服用する方法が示されています。酸性食品・飲料はコーティングを溶かして苦味が出る可能性があります。顆粒は噛む、砕く、溶かすことを避けます。
オラデオカプセルと顆粒は交換できますか?
自己判断では交換できません。PMDA添付文書は、顆粒とカプセルの生物学的同等性は示されていないため、互換使用しないよう記載しています。
29例の試験で効果は証明されたのですか?
投与前より発作頻度が低かったことは観察されましたが、APeX-Pは単一群・非盲検で同時対照群のない中間解析です。個人での効果保証や、ほかの予防薬より優れていることを証明した比較試験ではありません。
開始前にどの検査や薬を確認しますか?
QT延長リスクのため心電図などを投与前・投与中に確認します。肝機能障害、不整脈や失神歴、シクロスポリン、QT延長薬、CYP3A4・CYP2D6関連薬、ジゴキシンなどを含む処方薬・市販薬・サプリメントを共有してください。
HAEの腫れはじんましんと同じですか?
I型・II型HAEは主にブラジキニンが関与し、一般的なヒスタミン性じんましんとは仕組みが異なります。膨疹やかゆみを伴わない腫れ、繰り返す腹痛、家族歴などが手がかりになりますが、自己診断せず専門的評価を受けます。
この記事の監修医師
吉井恭平|池袋サンシャイン通り皮膚科 院長
TOC Group
TOCグループ
医療法人御照会を中心とした医療グループ
- PMDA. オラデオ顆粒分包72mg/96mg/108mg/132mg 添付文書(2026年8月26日公開).
- PMDA. オラデオ顆粒 添付文書本文:用法・用量・重要な基本的注意.
- PMDA. オラデオ顆粒 添付文書本文:適用上の注意.
- PMDA. 1か月以内に更新された添付文書情報(2026年8月26日).
- Bernatoniene J, et al. Oral berotralstat for hereditary angioedema prophylaxis in patients aged 2 to <12 years: APeX-P interim results. Ann Allergy Asthma Immunol. 2025;135:681-688.e3.
- PubMed. APeX-P interim results(PMID: 40716738).
- ClinicalTrials.gov. Berotralstat Treatment in Children With Hereditary Angioedema(NCT05453968).
- DOI: 10.1016/j.anai.2025.07.012.
- 日本アレルギー学会. WAO/EAACI遺伝性血管性浮腫治療ガイドライン―2021年改定版. アレルギー. 2023;72:237-272.