慢性蕁麻疹ガイドライン改訂について確認できる池袋サンシャイン通り皮膚科の院内

Dermatology Research Notes

蕁麻疹診療ガイドライン2026改訂慢性特発性蕁麻疹(CSU)の変更点

日本皮膚科学会の蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)について、2018年版との違いを中心に、慢性特発性蕁麻疹(CSU)の評価、治療ステップ、オマリズマブ・デュピルマブ・シクロスポリンの位置づけを整理します。

監修: 吉井恭平慢性特発性蕁麻疹最終更新 2026-07-07

Key Points

まず押さえたい3つの要点

01

2026年版では慢性特発性蕁麻疹(CSU)を軸に、病型診断、疾患コントロール、治療段階がより明確になりました。

02

抗ヒスタミン薬で不十分な場合のStep2として、オマリズマブまたはデュピルマブが位置づけられています。

03

UCT12点以上、UCT16点、UAS7など、患者さんの記録を使って治療目標を共有する重要性が増しています。

この記事の結論

2026年版の改訂では、慢性特発性蕁麻疹を「症状を我慢する病気」ではなく、UCTやUAS7で制御状態を確認し、抗ヒスタミン薬、オマリズマブ、デュピルマブ、シクロスポリンを段階的に検討する病気として整理しています。

  • 2018年版より、評価指標と治療ステップの見通しが明確になった
  • デュピルマブが新たに重要な選択肢として扱われた
  • ステロイドの漫然使用を避け、生活への支障と治療負担のバランスで考える
自己判断で治療を変更しないでください

本記事は一般的な医療情報です。薬の増減、注射薬の適応、シクロスポリンやステロイドの使用は、症状、既往歴、検査、保険適用、通院体制により判断が変わります。

01 / Update

2026年版で大きく変わった点

日本皮膚科学会の蕁麻疹診療ガイドラインは、2026年に第4版として改訂されました。慢性蕁麻疹の中でも、明らかな外的刺激がなく繰り返す慢性特発性蕁麻疹(CSU)を中心に、病型診断、疾患コントロールの評価、薬物治療の段階づけがより整理されています。

2018年版では、抗ヒスタミン薬で不十分な場合に補助的治療薬を追加し、その後にステロイド、オマリズマブ、シクロスポリンを考慮する流れでした。2026年版では、非鎮静性第2世代抗ヒスタミン薬を基本としつつ、制御不十分な慢性特発性蕁麻疹ではStep2としてオマリズマブまたはデュピルマブを位置づけ、シクロスポリンは主にその後の選択肢として整理されています。

患者さんにとっては、単に薬を増やすかどうかではなく、UCTやUAS7などの評価指標を使い、生活への支障、痒み、膨疹、費用、副作用、通院負担を踏まえて治療を選ぶ考え方がより明確になった点が重要です。

項目
2018年版
2026年版
主な呼び方
慢性蕁麻疹という表現が中心
慢性特発性蕁麻疹(CSU)を軸に整理
治療目標
症状消失または生活に支障のない制御
UCT12点以上、UCT16点など指標を用いた制御を明示
Step2の位置づけ
H2拮抗薬、抗ロイコトリエン薬など補助的治療薬が中心
オマリズマブまたはデュピルマブをStep2に位置づけ
シクロスポリン
オマリズマブなどと同じ上位治療の一つ
Step2後もQOL障害が大きい場合に検討
ステロイド
重症例で短期使用を考慮
慢性例で漫然と続けず、急性増悪時も短期間に限定
02 / Assessment

治療前に重視される評価:UCT、UAS7、QOL

慢性蕁麻疹は、診察時に皮疹が見えないことも珍しくありません。そのため2026年版では、日々の症状や生活への支障を患者さん自身が振り返る評価が重要視されています。

UAS7は、1週間の膨疹と痒みを記録して活動性を評価する指標です。UCTは、直近4週間の症状、生活の質、治療の効き方、全体のコントロールを16点満点で評価する簡便な方法で、12点以上が良好なコントロールの目安とされています。

治療を強めるか、今の治療を続けるか、負担の大きい治療から減らすかは、見た目の皮疹だけでなく、睡眠、仕事、学校、外出、掻破、血管性浮腫の有無も含めて判断します。

  • UCTは直近4週間のコントロールを評価し、12点以上が良好な目安
  • UAS7は1週間の膨疹と痒みを点数化し、治療効果の比較に使いやすい
  • 症状が写真に残らない場合も、記録が治療判断の助けになる
診察前に残しておくとよい情報

皮疹の写真、出た時間、消えるまでの時間、痒みの強さ、眠れない日、薬を飲んだ時間、顔や唇の腫れ、息苦しさの有無をメモしておくと、治療段階を判断しやすくなります。

03 / Treatment

治療ステップ:抗ヒスタミン薬から生物学的製剤へ

2026年版でも、治療の土台は非鎮静性第2世代抗ヒスタミン薬です。通常量で不十分な場合は、他剤への変更、2倍量までの増量、2種類の併用などを検討します。ただし、国際ガイドラインで触れられる4倍量投与は、日本では保険適用の問題があるため、そのまま当てはめるわけではありません。

Step1で十分な制御が得られない慢性特発性蕁麻疹では、Step2としてオマリズマブまたはデュピルマブを併用する選択肢が示されました。補助的治療薬としてH2拮抗薬、抗ロイコトリエン薬、トラネキサム酸を試してもよい場面もありますが、2018年版よりも治療の主軸が整理された印象です。

Step2でも症状が強い場合や、生活への支障が大きい場合には、専門的な管理のもとでシクロスポリンや試行的治療を検討します。急性増悪時のステロイド内服は、漫然と続けず短期間に限ることが強調されています。

段階
2026年版の考え方
診察で確認したいこと
Step1
非鎮静性第2世代抗ヒスタミン薬を基本に、変更・増量・併用を検討
眠気、効果が切れる時間、飲み忘れ、内服タイミング
Step2
オマリズマブまたはデュピルマブを追加する選択肢
適応、費用、通院頻度、注射薬への不安、副作用
補助的治療
H2拮抗薬、抗ロイコトリエン薬、トラネキサム酸を検討する場面あり
自分の症状に追加する意味があるか
Step3
シクロスポリンや試行的治療を専門的に検討
腎機能、血圧、免疫抑制、保険適用、管理体制
04 / Evidence

エビデンスで見るオマリズマブとデュピルマブ

オマリズマブは、慢性特発性蕁麻疹に対する有効性と安全性について複数のランダム化比較試験、システマティックレビュー、メタアナリシスで検討されています。代表的なNEJM 2013年の試験では、既存治療で症状が残る慢性特発性蕁麻疹に対して症状を軽減することが報告されました。日本人・韓国人を含むPOLARIS試験でも、H1抗ヒスタミン薬抵抗性CSUに対する有効性と忍容性が示されています。

デュピルマブは、2026年版で新たに明確に位置づけられた点が大きな変更点です。LIBERTY-CSU CUPID試験では、H1抗ヒスタミン薬で制御不十分な慢性特発性蕁麻疹に対し、特にオマリズマブ未治療例で痒みや膨疹の改善が示されました。ガイドラインでは、慢性特発性蕁麻疹に対して効果を期待し得る治療として、推奨度2、エビデンスBで整理されています。

一方で、どちらの薬剤も蕁麻疹そのものの治癒を早めるというより、症状を抑え生活への支障を減らす治療として考える必要があります。適応、費用、通院、既往歴、併存疾患、治療をどこで減らすかまで含めて相談します。

  • オマリズマブはエビデンスA、推奨度1として位置づけられる
  • デュピルマブは2026年版で新たにStep2の選択肢として整理された
  • 注射薬は効果だけでなく、費用、通院、減量・中止の見通しを確認する
05 / Real World

デュピルマブ実臨床データ:オマリズマブ後の難治例でどう考えるか

2026年7月にActa Dermato-Venereologicaで公開されたスペイン16施設の実臨床コホートでは、抗ヒスタミン薬やオマリズマブで十分に制御できない慢性特発性蕁麻疹(CSU)に対するデュピルマブ治療が検討されました。対象は成人51例で、92.0%は過去にオマリズマブ治療を受けていました。

主要評価は24週までに「UCT 12点以上かつUAS7 6点以下」を満たす良好な疾患コントロールです。評価可能例では24週時点で69.7%が良好コントロール、39.4%が完全コントロールを達成し、52週データがある症例では良好コントロール90.5%、完全コントロール61.9%と報告されています。

ただし、この研究はランダム化比較試験ではなく実臨床コホートです。オマリズマブ不応例では反応が低い傾向も示されており、デュピルマブを「誰にでも効く次の薬」と単純化せず、過去の治療反応、血管性浮腫、併用薬、費用、通院負担を含めて判断する必要があります。

項目
研究での結果
国内診療での見方
対象
CSU成人51例、92.0%がオマリズマブ既治療
抗ヒスタミン薬だけでなく注射薬後の難治例を想定したデータ
24週
良好コントロール69.7%、完全コントロール39.4%
UCTやUAS7を使って反応を確認する考え方と相性がよい
52週
評価可能例で良好コントロール90.5%、完全コントロール61.9%
長期経過は症例数に注意し、過大評価しない
注意点
オマリズマブ不応例では反応が低い傾向
オマリズマブ後も一律に次薬を決めず、症状と背景で個別判断
05 / Before Visit

患者さんが診察で確認したいこと

慢性蕁麻疹は、原因を一つに特定できないことが多く、長く付き合うこともあります。だからこそ、毎回の診察で「どのくらい困っているか」「薬でどこまで抑えたいか」「治療の負担がどのくらいか」を共有することが大切です。

2026年版の考え方では、症状を完全にゼロにすることだけでなく、まず生活に支障がない状態を目指し、そのうえで症状が出ない状態、最終的には薬なしで出ない状態を目指します。薬を強める場面だけでなく、良くなった後にどの治療から減らすかも治療計画の一部です。

唇やまぶたの腫れ、息苦しさ、腹痛、気分不良、薬や食物との関連が疑われる場合は、通常の慢性特発性蕁麻疹とは別の対応が必要になることがあります。強い症状やアナフィラキシーが疑われる場合は、早急な医療対応が必要です。

  • UCTや写真で、症状と生活への支障を共有する
  • 抗ヒスタミン薬で足りない場合、次の治療の目的と負担を確認する
  • 顔や喉の腫れ、息苦しさ、全身症状がある場合は早めに相談する
  • 症状が落ち着いたら、どの薬から減らすかを医師と相談する
06 / Clinic Voice

外来でよく感じること:蕁麻疹は「出ていない時」こそ情報が大切です

皮膚科外来では、「来院した時にはもう消えてしまいました」と申し訳なさそうに話される患者さんが少なくありません。でも、蕁麻疹は消える病気なので、診察室で皮疹が出ていないこと自体はよくあります。むしろ、写真やメモがあるだけで、診断や治療の相談はかなり進めやすくなります。

たとえば、夜に強いのか、朝に出るのか、入浴後や運動後に悪くなるのか、薬を飲むと何時間くらい楽になるのか。こうした生活の中の情報は、ガイドラインの治療ステップを実際の診療に落とし込む時にとても役立ちます。

もう一つ大事なのは、「どのくらい困っているか」を遠慮なく伝えることです。膨疹の数が多くなくても、痒くて眠れない、仕事中に集中できない、人前に出るのが不安、という場合は治療目標を見直す理由になります。蕁麻疹は見た目だけでなく、生活への支障まで含めて相談してよい病気です。

  • 診察時に皮疹が消えていても、写真と経過メモがあれば相談しやすい
  • 薬を飲んだ時間と、効き始め・切れ始めの感覚は治療調整の手がかりになる
  • 眠れない、仕事や学校に支障がある、人前が不安なども大切な診療情報
外来でよくお伝えしていること

蕁麻疹は、原因を一つに決められないことも多い病気です。原因探しと同じくらい、今の症状をどこまで抑えるか、日常生活をどこまで楽にするかを一緒に考えることが大切です。

FAQ

よくある質問

2026年版で一番大きく変わった点は何ですか?

慢性特発性蕁麻疹に対し、抗ヒスタミン薬で不十分な場合のStep2としてオマリズマブまたはデュピルマブが整理された点が大きな変更です。UCTやUAS7などの評価も重視されています。

デュピルマブは誰にでも使える治療ですか?

誰にでも使う治療ではありません。抗ヒスタミン薬で制御不十分な慢性特発性蕁麻疹で、症状や生活への支障、既往歴、費用、通院負担を踏まえて医師が適応を判断します。

抗ヒスタミン薬を飲んでも治らない場合はどうしますか?

薬の種類、量、飲む時間、併用薬、症状記録を確認したうえで、補助的治療薬、オマリズマブ、デュピルマブなどを検討します。自己判断で増量せず診察で相談してください。

ステロイドを長く飲み続けてもよいですか?

慢性蕁麻疹で漫然とステロイド内服を続けることは勧められません。急性増悪時も短期間にとどめ、他の治療でコントロールする方法を検討します。

蕁麻疹の診察前に何を準備すればよいですか?

皮疹の写真、出る時間帯、消えるまでの時間、痒みの強さ、睡眠や仕事への影響、飲んだ薬、顔や唇の腫れ、息苦しさの有無を記録しておくと役立ちます。

Doctor

監修医師メッセージ

池袋サンシャイン通り皮膚科 院長 吉井恭平

吉井恭平 池袋サンシャイン通り皮膚科 院長

慢性蕁麻疹は、原因探しだけにこだわると治療が遅れることがあります。症状の記録、生活への支障、薬の効き方を一緒に確認し、必要に応じて治療段階を見直すことが大切です。