
Daily Clinic Notes
下肢に時々現れるまだらな赤み生理的網状皮斑を疑った診療メモ
20代の女性が、時折下肢に現れるまだらな赤みを心配して受診されました。かゆみも痛みもありません。透明な板で押す硝子圧を行うと赤みは完全に退色したため、血液が皮膚の外へ漏れた紫斑ではなく、血管内の血流が透けて見える紅斑と考えました。年齢、部位、一過性、無症状という点から生理的網状皮斑を第一に考えましたが、押して消えることだけで良性とは決められません。寒い時に出るか、温めると消えるか、模様は規則的か、全身の症状はないか。診察室で考えた順番を、文献と一緒に整理します。
Key Points
まず押さえたい3つの要点
硝子圧で完全に退色する赤みは、血液が血管外へ漏れた紫斑ではなく、血管内の血流による紅斑を示します。
若い女性の脚に寒冷で現れ、温めると消える、規則的で無症状の網目模様は生理的な大理石様皮膚に合います。
ただし、退色することだけで生理的とは断定できず、持続性、左右差、不規則で途切れた模様、痛み・結節・潰瘍・全身症状を確認します。
今回のように、20代女性の下肢に時々現れ、かゆみや痛みがなく、硝子圧で完全に消えるまだらな赤みは、生理的網状皮斑、より厳密には寒冷に伴う大理石様皮膚を考えやすい所見です。特に、寒い場所で左右対称に出て、温めるとゆっくり消えるなら可能性が高まります。ただし、硝子圧で退色するのは『紫斑ではない』ことを示す最初の手がかりであって、『病気ではない』ことの証明ではありません。温めても残る、片側だけ、模様が大きく不規則で途切れる、痛み・しこり・潰瘍を伴う、血栓や膠原病を疑う症状がある場合は、二次性の網状皮斑を考えて評価します。
- 寒い時の写真と、室内で温めて20〜30分後の写真があると判断しやすくなります。
- 押して消えない紫色、痛み、黒ずみ、潰瘍がある場合は生理的変化として様子を見ないでください。
- 検査は全員に同じ項目を行うのではなく、皮疹の形と経過、服薬、血栓歴、全身症状から選びます。
温めても消えない、痛い、盛り上がる、傷になる網目模様は早めに相談してください
片側だけに続く、不規則で途切れた太い模様が広がる、押しても消えない紫色になる、結節・強い痛み・水疱・黒ずみ・潰瘍を伴う場合は、生理的な網状皮斑とは異なる可能性があります。発熱、関節痛、強い頭痛や手足の麻痺、息苦しさ、脚の腫れ、血栓症の既往、原因不明の妊娠合併症がある場合も、皮膚所見と一緒に医療機関へ伝えてください。突然の神経症状や呼吸困難は救急受診が必要です。
20代女性の脚に、痛くもかゆくもないまだらな赤みが時々現れました
今回受診されたのは20代の女性です。時折、両下肢にまだらな赤みが現れるとのことでした。かゆみも疼痛もなく、皮膚の盛り上がりや傷もありません。症状だけを聞くと、蕁麻疹や湿疹らしさはあまりありませんでした。
赤紫色の皮疹を見た時、最初に知りたいのは、その色が血管の中にある血液によるものか、血液が血管の外へ漏れた紫斑なのかです。透明な板で圧迫する硝子圧を行うと、今回の赤みは完全に退色しました。そこで、まず紫斑ではなく紅斑と考えました。
一過性で、若い女性の脚に出て、症状がなく、押すと消える。この組み合わせから、生理的な網状皮斑を第一に考えました。ただ、ここで診察を終わらせず、寒い場所で出るか、温めると消えるか、左右は同じか、模様は細かく規則的かを確認することが大切です。
硝子圧で完全に退色したことから、紫斑ではなく紅斑と考えました
硝子圧は、透明なガラスやプラスチックを皮膚へ押し当て、色が消えるかを観察する診察方法です。圧迫で表面の血管から血液が移動して赤みが消えるなら、色の主な原因は血管内の血液です。皮膚科ではこれを紅斑の確認に使います。
一方、紫斑は赤血球が血管の外へ漏れた状態なので、押しても色が消えません。慢性色素性紫斑、血管炎、血小板減少などを考える入口になります。今回の皮疹が完全に退色したことは、こうした紫斑との区別に役立ちました。
ただし、押して消える皮疹にも、じんましん、炎症性紅斑、血管拡張、網状皮斑など複数の原因があります。硝子圧は診断名を決める検査ではなく、次に何を観察するかを決める一手です。
寒冷で現れ、温めると消える規則的な網目なら、生理的な大理石様皮膚に合います
網状皮斑は、皮膚に網目状、レース状、まだらな赤紫色が見える皮膚所見の名前です。原因を一つに決める病名ではありません。成人で寒い時に一時的に出る生理的な模様は、大理石様皮膚(cutis marmorata)または生理的網状皮斑と呼ばれます。
DermNetは、生理的な大理石様皮膚は多くの成人、特に若い女性が寒冷にさらされた時にみられると説明しています。典型的には脚に淡く広がり、症状はほとんどなく、温めると徐々に消えます。日本皮膚科学会の関連ガイドラインでも、冷たい外気で生じ、暖めると消退する一過性の大理石様皮膚は生理現象とされています。
今回の年齢、下肢、一過性、無症状という点はこの特徴と合います。一方、寒さとは無関係に出る場合や、温めても消えない場合は、生理的変化だけでは説明できないため、別の網状皮斑を考えます。
- 寒い屋外、冷房の効いた室内、入浴前などに出やすい
- 左右の脚に比較的対称に現れる
- 細かく規則的で、輪が閉じるような網目に見える
- かゆみ、痛み、硬いしこり、傷がない
- 室温で温めると徐々に薄くなり、消える
皮膚の血管の配置と、寒さによる一時的な血流の変化が模様をつくります
皮膚の血管は均一な一枚の面ではなく、深いところから上がる細い動脈と、その周囲に広がる表面の静脈が一定の単位をつくっています。寒さで細い動脈が収縮すると、皮膚の場所ごとに血流と酸素の量に差ができ、静脈側の色が網目のように透けて見えます。
生理的な場合は血管が壊れているのではなく、寒さへの可逆的な反応です。温めると血流が戻り、色の差が小さくなって模様が薄くなります。かゆみや痛みがないのも、この仕組みで説明しやすい点です。
反対に、血管の炎症、血栓、血液の粘度上昇などで血流が妨げられると、模様が持続したり、不規則になったり、痛みや組織障害を伴ったりします。同じ『網目』でも、時間と形と症状が大切なのはこのためです。
規則的で消える模様と、不規則で残る模様、押しても消えない紫斑を分けます
見た目が似る皮膚所見として、持続性の網状皮斑、分枝状皮斑(livedo racemosa)、網状紫斑、温熱性紅斑があります。患者さんが写真を見比べて自己診断するのは難しいため、診察では模様の輪が閉じているか、途切れて枝分かれするか、押して消えるか、傷を伴うかを確認します。
分枝状皮斑は、輪が途切れた大きく不規則な模様が、脚だけでなく臀部や体幹にも持続して見えることがあります。抗リン脂質抗体症候群など、血栓や膠原病に関連する場合があるため、単に冷え性として扱いません。
網状紫斑は押しても消えず、暗い赤紫色で痛み、壊死、潰瘍を伴うことがあります。温熱性紅斑は、湯たんぽ、ヒーター、こたつ、ノートパソコンなど同じ熱源が長く当たる部位に、茶色い網目が固定して残る点が異なります。
温めても残る、模様が不規則、皮膚以外の症状がある時は背景を調べます
生理的な網状模様と病的な変化を分けるうえで、色の濃さだけを頼りにすることはできません。室温で十分に温めても残るか、何日も固定しているか、片側だけか、模様が大きく不規則か、触ると硬い場所があるかを見ます。
痛み、圧痛、しこり、水疱、黒ずみ、潰瘍があれば、血管炎、血管の閉塞、リベド様血管症などを考えます。押しても消えない紫斑へ変わる場合も、生理的な反応とは分けて評価します。
皮膚以外では、発熱、関節痛、レイノー現象、光で悪化する発疹、血尿、強い頭痛や神経症状、原因不明の血栓症、妊娠合併症の既往などを確認します。アマンタジンなど一部の薬剤でも網状皮斑が起こるため、市販薬を含む服薬歴も大切です。
- 温めて20〜30分待っても模様が残る、または毎日固定している
- 片脚だけに強い、左右差が大きい、模様が太く不規則で途切れる
- 押しても消えない、痛い、硬い、黒くなる、傷や潰瘍になる
- 発熱、関節痛、血尿、息切れ、脚の腫れ、神経症状を伴う
- 血栓症、膠原病、原因不明の妊娠合併症の既往がある
典型的な生理的変化なら、全員へ一律の血液検査や生検は行いません
網状皮斑の評価では、まず病歴と皮膚所見が中心です。寒冷との関係、復温での変化、持続時間、左右差、模様の規則性、痛みや潰瘍、服薬、血栓歴、膠原病を疑う症状を確認します。典型的な生理的変化で、ほかに気になる所見がなければ、保温と経過観察でよいことが多く、一律に広い検査を行っても有用性は高くありません。
温度と無関係に持続する場合や全身症状がある場合は、所見に応じて血算、炎症反応、凝固、腎・肝機能、尿検査、抗核抗体、補体、抗リン脂質抗体、クリオグロブリンなどを検討します。これは『網状皮斑だから全部調べる』のではなく、疑う背景疾患を確かめるための検査です。
皮膚生検も、淡い網状皮斑へ一か所行えば必ず原因が分かる検査ではありません。病的な変化を疑い生検が必要な場合は、模様の中心と周辺、盛り上がりや固定した紫斑など採取部位を選び、深い血管まで評価できる方法を検討します。
写真は、寒い時と温めた後を同じ場所・同じ明るさで残してください
一過性の網状皮斑は、受診する頃には消えていることがあります。次に出た時は、脚全体と模様の拡大を撮り、左右が分かるように記録してください。色を再現するため、強い照明や美肌補正は避けます。
その後、熱い湯たんぽを直接当てるのではなく、室内で衣服や毛布を使って無理なく温めます。出現時と20〜30分後を同じ角度で撮ると、復温で消えるかを比較できます。出た場所、気温、冷房、入浴との関係、消えるまでの時間も短くメモします。
生理的な変化なら特別な薬は通常必要なく、冷えを避けることが基本です。ただし、温めるためにカイロや湯たんぽを長時間同じ場所へ当て続けると温熱性紅斑や低温やけどの原因になるため、皮膚へ直接当てないでください。
- 出現時刻と、その時の気温・冷房・入浴との関係
- 左右の脚全体と模様の拡大写真
- 室温で温める前と20〜30分後の比較写真
- 痛み、かゆみ、しびれ、腫れ、傷の有無
- 新しく始めた薬と、皮膚以外の症状
今日の学びは、『押して消える』を診断のゴールにしないことでした
今回、硝子圧で完全に退色したことから、まず紫斑ではなく紅斑と整理できました。これは大切な一歩です。ただ、押して消えるという一つの所見だけでは、生理的な変化と病的な網状皮斑までは分けられません。
若い女性の下肢に時々現れ、症状がないことは、生理的な大理石様皮膚に合います。そこへ、寒い時に出る、左右対称で細かな規則的な網目になる、温めると消える、という情報がそろえば、余計な検査を増やさず安心して経過を見やすくなります。
一方で、温めても残る、不規則で途切れる、痛い、硬い、傷になる、全身症状がある時は、同じ『まだら』として片づけない。皮疹を紅斑か紫斑かに分け、模様と時間を見て、患者さん全体を診る。今回あらためて、その順番の大切さを感じました。
- 硝子圧で退色すれば紫斑ではなく紅斑を考える
- 寒冷と復温の関係が生理的変化を見分ける重要な手がかり
- 持続性、左右差、不規則な模様、痛み・潰瘍・全身症状を見逃さない
- 典型的なら経過観察、非典型なら手がかりに合わせて検査を選ぶ
池袋で脚の網状皮斑・まだらな赤みを相談したい方へ
池袋駅・東池袋周辺で、脚に網目状の赤みが時々出る、寒い時にまだらになる、温めても消えない、紫斑か紅斑か分からない場合は、出現時と復温後の写真、持続時間、左右差、痛みや全身症状、服薬歴を整理して受診してください。
池袋サンシャイン通り皮膚科では、一般皮膚科(保険診療)として、硝子圧で紅斑と紫斑を確認し、模様、温度との関係、経過、全身症状から、生理的変化として経過を見られるか、血液検査や皮膚生検、専門医療機関との連携が必要かを判断します。
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よくある質問
生理的網状皮斑とはどのようなものですか?
寒さで皮膚の細い血管が一時的に収縮し、脚などに淡い網目状・まだらな赤紫色が現れる生理的反応です。大理石様皮膚とも呼ばれ、若い女性にみられやすく、通常は無症状で、温めると徐々に消えます。
網状皮斑が硝子圧で消えれば、病気ではありませんか?
いいえ。硝子圧で消えることは、主に血管内の血液による紅斑で、血液が皮膚へ漏れた紫斑ではないことを示します。ただし、二次性の網状皮斑も退色することがあるため、寒冷との関係、復温、持続性、模様、痛みや全身症状を合わせて判断します。
生理的な網状皮斑と病的な網状皮斑はどう違いますか?
生理的なものは寒冷で出やすく、左右対称で細かく規則的、無症状で、温めると消える傾向があります。温めても残る、片側だけ、大きく不規則で途切れた模様、痛み・しこり・紫斑・潰瘍、全身症状がある場合は病的な原因を検討します。
脚のまだらな赤みは、どう温めて確認すればよいですか?
カイロや熱い湯たんぽを直接当てず、室内で衣服や毛布を使って無理なく温めてください。出現時と20〜30分後を同じ場所・明るさ・角度で撮影すると比較しやすくなります。消えない場合や痛みがある場合は受診してください。
網状皮斑では血液検査が必要ですか?
寒冷で出て温めると消える典型的な生理的変化で、ほかに症状がなければ、一律の血液検査は通常必要ありません。持続性、不規則な模様、痛み・潰瘍、血栓歴、関節痛などがあれば、疑う原因に応じて血算、炎症反応、凝固、自己抗体などを検討します。
網状皮斑は膠原病や血栓の病気で出ることがありますか?
あります。全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、血管炎、クリオグロブリン血症などに伴うことがあります。ただし、網状皮斑だけでこれらの病気と診断することはできません。持続する模様と全身症状、血栓歴などを合わせて評価します。
網状皮斑で早めに皮膚科を受診した方がよい症状はありますか?
温めても消えない、片側だけ、不規則で太い模様、押しても消えない紫色、痛み、硬いしこり、水疱、黒ずみ、潰瘍がある場合は早めに受診してください。発熱、関節痛、脚の腫れ、息苦しさ、神経症状がある場合も速やかな評価が必要です。
監修医師メッセージ
吉井恭平 池袋サンシャイン通り皮膚科 院長
- Sajjan VV, et al. Livedo reticularis: A review of the literature. Indian Dermatol Online J. 2015;6:315-321.
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- 日本皮膚科学会. 血管炎・血管障害診療ガイドライン2016年改訂版. 日皮会誌. 2017;127:299-415.
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- 石黒直子. 網状皮斑(リベド)livedo. 日皮会誌. 2012;122:2283-2285.