
Skin Disease Basics
乾癬と食事の関係559例研究を解説
「甘い飲み物や脂っこい食事をやめれば、乾癬の治療は効きやすくなるのか」と気になる方へ。2026年7月、上海の乾癬患者559人を8週間追跡し、加糖飲料・高脂肪食・お茶と治療反応の関連を調べた前向き研究が公表されました。 結論を先にいうと、週4回以上の加糖飲料は8週時点の治療反応が得られにくいことと関連しました。一方、高脂肪食の関連は4週時点で境界的にみられたものの、8週では確認されていません。この研究は食事が原因だと証明した試験ではなく、薬の代わりに食事制限を勧める根拠でもありません。研究から分かることと分からないことを分け、国内で安全に取り入れられる見直し方を解説します。
Key Points
まず押さえたい、3つのポイント
上海の尋常性乾癬患者559人を8週間追跡した前向きコホート研究
週4回以上の加糖飲料は、8週PASI 50達成オッズの低さと関連した
高脂肪食の関連は4週で境界的、8週では確認されず一貫しなかった
食事の変更だけで治療を置き換えないでください
この研究は観察研究で、加糖飲料が治療反応を直接悪くしたと証明したものではありません。処方薬や光線療法を自己判断で中止・減量せず、極端な糖質制限、脂質制限、断食、サプリメントへの置き換えは避けてください。皮疹が急に広がる、発熱や膿疱がある、関節の腫れ・痛みが続く場合は早めに皮膚科へ相談してください。
まず結論:加糖飲料は見直す余地がありますが、因果関係は未確定です
2026年7月に公表された研究では、上海の尋常性乾癬患者559人を対象に、加糖飲料、高脂肪食、お茶の摂取頻度と治療反応を8週間追跡しました。週4回以上の加糖飲料を飲む人は、週0〜1回の人より8週時点でPASI 50を達成するオッズが低いという関連がみられました。
ただし、これは食事を割り付けたランダム化比較試験ではありません。甘い飲み物を多く飲む人に共通する睡眠、運動、全体の食事内容、服薬行動、所得や健康意識など、測りきれていない要因が結果に影響した可能性があります。『加糖飲料が薬の効き目を4分の1にする』とは解釈できません。
高脂肪食は、週2〜3回の群で4週PASI 50が得られにくい方向の境界的な関連がありましたが、8週では差が残りませんでした。週4回以上の群にも明確な用量反応はなく、『脂っこい物を食べるほど必ず治療が効かない』という結果ではありません。
実生活では、まず砂糖入り清涼飲料や加糖ミルクティー、エナジードリンクを水・無糖茶へ置き換えられる日から始めるのが現実的です。乾癬の治療は続け、皮疹、体重、検査値、生活上の困りごとを診察で一緒に確認します。
- 加糖飲料は8週治療反応の低さと関連
- 高脂肪食の結果は時点により一貫しない
- 食事変更は標準治療への追加として考える
研究の方法:559人を治療開始から4週・8週まで追跡しました
対象は2022〜2024年に上海皮膚病病院で登録された18歳以上の尋常性乾癬患者559人です。平均年齢は48.5歳、73.2%が男性で、全員が8週の観察を完了しました。開始時のPASI中央値は11.2で、治療はアシトレチン9.7%、メトトレキサート31.1%、NB-UVB 24.9%、生物学的製剤34.3%でした。
食習慣は皮膚科医が質問票で確認しました。加糖飲料にはコーラなどの清涼飲料、加糖ミルクティー、果実風味飲料、エナジードリンクが含まれます。高脂肪食にはハンバーガー、フライドチキン、フライドポテト、バーベキュー、クリーム系菓子が例示され、頻度を週0〜1回、2〜3回、4回以上に分けました。
主な評価は、開始時から皮疹の重症度PASIが50%以上改善するPASI 50を8週で達成した割合です。より大きな改善であるPASI 75も4週・8週で確認しました。年齢、性別、BMI、喫煙、飲酒、治療法と、調べた3つの食習慣を互いに調整したロジスティック回帰が使われました。
登録時の食事頻度を自己申告で把握した研究で、摂取量や1回量、総エネルギー、栄養素を精密に測定したものではありません。また中国の単一施設の結果で、日本の食文化や患者構成へそのまま当てはめることはできません。
主な結果:加糖飲料は8週、高脂肪食は4週のみ関連しました
加糖飲料を週2回以上飲む人は全体の37.1%で、週4回以上は16人(2.9%)でした。週4回以上の群では、週0〜1回の群に比べ、8週PASI 50達成の調整オッズ比が0.24(95%信頼区間0.08〜0.75)、PASI 75は0.27(0.07〜1.00)でした。後者は上限が1.00で、解釈には慎重さが必要です。
週2〜3回の加糖飲料では、8週PASI 50の調整オッズ比0.89(0.54〜1.47)、PASI 75は0.94(0.60〜1.48)で、明確な関連はありませんでした。強い関連が出た週4回以上の群は16人と少なく、推定値の不確かさを示す信頼区間も幅があります。
高脂肪食は68.7%が週2回以上でした。週2〜3回の群では4週PASI 50の調整オッズ比0.68(0.45〜1.00)と境界的でしたが、8週では0.97(0.59〜1.60)でした。週4回以上の群も8週0.97(0.60〜1.89)で、治療後半まで続く明確な関連は示されませんでした。
お茶の摂取は、8週PASI 50の調整オッズ比1.44(0.88〜2.35)など、どの評価でも統計学的に明確な関連がありませんでした。無糖茶への置き換えは加糖飲料を減らす実用的な方法ですが、『お茶自体が乾癬治療を効きやすくする』という根拠にはなりません。
- 週4回以上の加糖飲料:8週PASI 50 調整OR 0.24
- 高脂肪食:4週の境界的関連は8週で残らず
- お茶:明確な治療反応との関連なし
研究から言えること・言えないことを分けて考えます
言えるのは、この集団では頻繁な加糖飲料摂取と8週の治療反応の低さが、年齢、性別、BMI、喫煙、飲酒、治療法などを統計的に調整した後も関連していたことです。診察で食習慣を短く確認し、改善できる点を話し合う価値を示す結果です。
言えないのは、加糖飲料をやめれば必ず治療反応が上がること、加糖飲料が乾癬の直接原因であること、特定の食品を禁止すれば薬が不要になることです。因果関係は未確定です。観察研究のオッズ比は個人の改善率そのものではなく、PASIが何点下がるかを予測する数値でもありません。週4回以上の群と週0〜1回の群で、実際に何人ずつPASI 50を達成したかを直接表す数値でもありません。
研究には、食事の自己申告、1回量を測っていないこと、全体の食事の質・運動・併存症などの残余交絡、治療法ごとの反応差を完全には捉えられないこと、単一施設、8週間という短い追跡などの限界があります。著者自身も探索的な結果として、より大規模な検証を求めています。
乾癬は免疫、遺伝、体重、喫煙、飲酒、ストレス、感染症、薬剤など多くの要因が関係する慢性疾患です。食事はその一部で、食べた翌日の皮疹だけで良し悪しを決めると偶然の変動を原因と誤解しやすくなります。皮疹の自然な波、季節、治療開始からの時間も含め、数週間単位の経過で判断します。
加糖飲料の見直し:禁止より、回数と置き換えから始めます
最初の1週間は、コーラなどの清涼飲料、砂糖入りコーヒー・紅茶、加糖ミルクティー、果実風味飲料、エナジードリンクを飲んだ回数だけ記録します。量を細かく計算するより、習慣になっている場面を見つけることが目的です。
毎日飲んでいる場合は、すべてを急に禁止するのではなく、まず週のうち数回を水、炭酸水、無糖茶、無糖コーヒーへ置き換えます。スポーツ飲料や野菜・果汁飲料にも糖を含む商品があるため、名称だけで判断せず栄養成分表示を確認します。砂糖入りの飲料を多く飲んでいた人ほど、無理のない段階的な変更のほうが継続しやすくなります。
低血糖への対応、嚥下や栄養の問題、糖尿病治療、摂食障害の既往がある方では一律の制限が適切とは限りません。体重減少が必要な場合も、治療薬や持病との兼ね合いがあるため、医師や管理栄養士と現実的な目標を決めます。
置き換えを始めても、乾癬の処方治療は予定どおり続けます。4〜8週単位で皮疹の範囲、厚み、かゆみ、体重、加糖飲料の回数を見返すと、短期の増減に振り回されにくくなります。
高脂肪食の見直し:脂質をゼロにせず、食事全体を整えます
この研究の『高脂肪食』は、ハンバーガー、フライドチキン、フライドポテト、バーベキュー、クリーム系菓子などをまとめた分類です。脂質の種類や量を測った研究ではないため、魚、ナッツ、植物油などを一括して避ける根拠にはなりません。
日本の公的な食事バランスガイドでは、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物を組み合わせ、菓子・嗜好飲料は適度に楽しむ考え方が示されています。乾癬専用の献立に置き換えるより、外食や揚げ物が続く日に副菜を加え、飲み物を無糖にするなど、全体の偏りを小さくします。
乾癬では肥満やメタボリック症候群を併存することがあり、体重、血圧、脂質、血糖の確認も大切です。ただし、体重や検査値が正常な方へ一律に減量を勧めるものではなく、やせ、栄養不足、高齢、治療による食欲低下がある場合はむしろ摂取不足に注意します。
グルテン、乳製品、肉類など特定食品を自己判断で全面除去すると、費用や栄養不足、生活の負担が増えることがあります。明らかなアレルギーや医学的適応がなければ、極端な除去食に進まず、まず加糖飲料と高頻度の加工・揚げ物を減らし、主食・主菜・副菜の組み合わせを整えます。家族と同じ食事を続けながら調整できる方法を優先します。
治療反応はPASIだけでなく、生活への影響も含めて確認します
PASIは皮疹の赤み、厚み、鱗屑、範囲をまとめた指標ですが、頭皮、爪、陰部、手足など面積が小さくても生活への影響が大きい部位を十分に表せないことがあります。かゆみ、痛み、睡眠、服装、仕事への影響も診察で伝えてください。
外用薬、光線療法、内服薬、生物学的製剤は、それぞれ効果が現れる時期と安全確認が異なります。食事を変えた時期と治療開始が重なると、どちらの影響か分けにくいため、薬の使用状況と生活習慣を同じメモに残すと役立ちます。
治療反応が不十分でも、食べ物を責めたり、本人の努力不足と考えたりしないことが大切です。診断、塗布量や内服状況、感染、薬剤、関節症状、治療選択を医師と再確認し、そのうえで修正可能な生活要因を一つずつ見直します。
皮疹が急速に全身へ広がる、膿疱や発熱がある、関節が腫れて朝に動かしにくい、目の痛みや見えにくさがある場合は、食事記録より受診を優先してください。
まとめ:加糖飲料を減らすことは検討できますが、治療継続が前提です
上海の前向きコホート研究では、尋常性乾癬患者559人のうち、週4回以上の加糖飲料を飲む群で8週PASI 50・PASI 75を達成しにくい関連がみられました。ただし該当者は16人で、観察研究のため因果関係は確定していません。
高脂肪食は週2〜3回の群で4週PASI 50との境界的な関連がありましたが、8週では確認されませんでした。お茶も明確な関連がなく、特定の飲み物や食べ物を『治療薬』として勧める結果ではありません。
実践するなら、加糖飲料の回数を記録し、水や無糖茶へ置き換える日を増やすことから始めます。高脂肪食は全面禁止にせず、揚げ物や加工食品の頻度、主食・主菜・副菜のバランス、体重や検査値を個別に確認します。
食事は乾癬管理の一部であり、処方治療の代わりではありません。治療反応が不十分な場合は薬を自己調整せず、治療法、使い方、併存症、生活上の負担を皮膚科で一緒に見直してください。
Ikebukuro Local Care
池袋で乾癬の治療と生活習慣を相談したい方へ
池袋で皮膚科受診をご検討の方へ
池袋駅周辺や東池袋で乾癬の治療中に、食事や体重、飲酒・喫煙などの生活習慣も含めて相談したい場合は、現在の薬、治療開始日、症状が強い日の写真、普段の飲み物を簡単にメモして受診すると話が進みやすくなります。食事記録は完璧でなくて構いません。まず1週間、加糖飲料と外食・揚げ物のおおよその回数を残すだけでも役立ちます。
池袋サンシャイン通り皮膚科では、皮疹の範囲や厚み、かゆみ、爪・関節症状、現在の治療反応を確認し、外用薬、光線療法、内服・注射薬、専門施設との連携を検討します。食習慣は治療を支える一要素として扱い、極端な制限や薬の自己中止を避けながら相談します。
よくある質問
乾癬で絶対に食べてはいけない物はありますか?
乾癬のある全員が一律に禁止すべき食品は、この研究からは示されていません。まず加糖飲料や高頻度の揚げ物・加工食品を見直し、主食・主菜・副菜を組み合わせます。アレルギーなど医学的理由がなければ、極端な除去食は医師や管理栄養士へ相談してください。
甘い飲み物をやめれば乾癬は治りますか?
治るとはいえません。週4回以上の加糖飲料と8週治療反応の低さに関連がみられましたが、因果関係を証明した研究ではありません。水や無糖茶への置き換えは検討できますが、処方薬や光線療法を自己判断で中止しないでください。
ゼロカロリー飲料なら問題ありませんか?
今回の研究は人工甘味料入り飲料を別に評価しておらず、乾癬の治療反応への影響は判断できません。加糖飲料を減らす置き換えとして使う場合も、水や無糖茶を基本にし、飲料全体の量やほかの食習慣も合わせて見直します。
高脂肪食は週何回までならよいですか?
この研究から安全な上限回数は決められません。週2〜3回で4週の境界的関連がありましたが8週では残らず、週4回以上で一貫して悪化した結果でもありません。脂質をゼロにせず、揚げ物・加工食品が続かないよう食事全体を整えます。
お茶を飲むと乾癬の治療が効きやすくなりますか?
今回の研究では、お茶とPASI 50・75達成に統計学的に明確な関連はありませんでした。無糖茶は加糖飲料の置き換えにはなりますが、お茶そのものを乾癬の治療として勧める根拠ではありません。
食事記録はどのくらい続ければよいですか?
まず1週間、加糖飲料、外食、揚げ物のおおよその回数を記録し、続けやすい変更を一つ決めます。皮疹は短期変動があるため、薬の使用状況とともに4〜8週単位で振り返り、診察時に共有すると役立ちます。
この記事の監修医師
吉井恭平|池袋サンシャイン通り皮膚科 院長
TOC Group
TOCグループ
医療法人御照会を中心とした医療グループ
- Song J, et al. Sugary Drinks and High-Fat Foods are Associated with Poor Treatment Response in Psoriasis: A Prospective Study in Shanghai. Psoriasis (Auckl). 2026;16:617180. PMID: 42471973.
- 同論文の全文(PubMed Central, PMC13380286).
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 乾癬 Q12 日常生活上の注意は何ですか?
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 乾癬 Q10 どんな検査をしますか?
- 厚生労働省 e-ヘルスネット 食事バランスガイド(基本編).
- Perez-Bootello J, et al. Mediterranean Diet and Patients With Psoriasis: The MEDIPSO Randomized Clinical Trial. JAMA Dermatol. 2025. PMID: 40991259.