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Psoriasis Treatment Guide

乾癬の塗り薬が効かないとき全身治療と内服・注射薬の選び方

乾癬の塗り薬を変えても皮疹、かゆみ、痛みが残るときは、塗布量や部位への適合だけでなく、治療目標と生活への負担を見直す時期かもしれません。2026年には、日本の保険請求データ6,361例と患者調査137例に加え、経口TYK2阻害薬デュークラバシチニブの5年解析が公表されました。本記事では、これらの数字を処方の指示や安全の保証に置き換えず、日本の診療で全身治療を相談する目安を整理します。

監修: 吉井恭平 乾癬の外用療法と全身治療 最終更新 2026-08-08

まず押さえたい、3つのポイント

01

日本の請求データ6,361例では、追跡中に9.5%が全身治療を開始し、開始までの平均は712.5日でした

02

外用療法だけを使う患者調査137例の92.7%が、評価した7つのDelphi推奨のうち1項目以上を満たしました

03

92.7%は日本人患者全体の割合でも、全員に全身治療が必要という意味でもありません

外用薬や内服薬を自己判断で中止・変更しないでください

塗り薬が効かないように見えても、塗布量、剤形、部位、使い方、診断、感染症の有無などを確認すると改善できることがあります。全身治療にも利益と負担があり、妊娠希望、感染症、肝腎機能、併用薬で選択が変わります。現在の薬を急に中止せず、診察で治療目標と変更時期を相談してください。

01 / Bottom Line

まず結論:塗り薬の種類を増やす前に、治療全体を再評価します

乾癬では外用療法が治療の基本ですが、同じ治療を漫然と続けることが目標ではありません。十分な量を適切な部位へ使っても皮疹や症状が残る、再燃を繰り返す、塗る時間や範囲が生活の負担になる場合は、診断、使い方、治療目標を見直します。

全身治療を検討するかどうかは、皮疹の面積だけでは決まりません。頭皮、顔、爪、手のひら、足の裏、陰部など生活への影響が大きい部位、かゆみ、痛み、出血、睡眠、仕事や家事への支障、関節症状も重要です。

全身治療の検討は、すぐに生物学的製剤を始めるという意味ではありません。外用療法の最適化、光線療法、内服薬、注射薬を含む選択肢から、効果、安全性、通院・検査、費用、本人の希望を比較します。

  • 外用薬の種類だけでなく、塗布量・剤形・部位・継続可能性を確認する
  • BSAが小さくても高インパクト部位やQOL低下を見逃さない
  • 全身治療の候補と、生物学的製剤の適応・施設要件を分けて考える
02 / Topical Review

外用療法の再評価:4〜8週は機械的な切り替え期限ではありません

日本の専門家45人によるDelphi研究では、BSA 10%未満の局面型乾癬についても、治療困難部位、心理的苦痛、生活へ影響する症状、乾癬性関節炎、外用療法不十分を全身治療の検討材料としました。

外用療法不十分の目安には、2種類の外用薬を4週間使用しても局面やかゆみ・痛みが残る、治療満足度が低い、使用量や塗布時間を増やす必要がある、または8週後も一定のPASI・PGA所見が残ることが含まれました。

ただし、4週や8週が来れば自動的に切り替えるという意味ではありません。薬を十分な量で使えたか、頭皮や爪に適した剤形か、刺激や副作用で続けにくくなかったか、感染症や別の皮膚病が混ざっていないかを確認します。

塗布面積が広く毎日長い時間がかかる、べたつきで仕事や睡眠に支障がある、手が届かない部位がある、といった治療負担も共有してください。効果だけでなく、実際に続けられる方法へ調整することが大切です。

「塗り薬が効かない」と「十分に使えなかった」を責めずに分けます

塗布が難しかった背景も治療情報です。自己責任とせず、剤形、回数、塗る範囲、家族の支援、生活時間に合わせて調整します。

03 / Japan Study 2026

日本人データ6,361例:全身治療開始は9.5%、開始まで平均712.5日

2026年7月にJournal of Dermatologyで公表された研究は、2017年1月から2024年8月までのDeSC保険請求データと、日本のUPLIFT患者調査という2つの既存データを用いました。

請求データでは、乾癬があり、基準日に外用薬の調剤が1回以上、同日に全身治療を使っていなかった6,361例を解析しました。追跡中に全身治療を開始したのは9.5%で、開始までの平均は712.5日でした。

開始時の外用薬は、strong・very strongのステロイド単剤が35.0%、ビタミンD製剤を含む場合がある外用薬の組み合わせが41.8%でした。全身治療を開始した患者では、開始前に使った外用薬クラスが平均3.8種類でした。

これらの数字は、日本で外用薬が何種類使われ、全身治療へ移るまでどの程度の時間が記録されたかを示します。一方、平均712.5日を標準的な待機期間や、切り替えるべき期限として使うことはできません。

  • DeSC請求データ6,361例
  • 追跡中の全身治療開始9.5%
  • 開始まで平均712.5日
  • 開始前の外用薬クラス平均3.8種類
04 / UPLIFT Analysis

外用のみ137例の92.7%が基準を満たした―この数字の読み方

同研究は、乾癬または乾癬性関節炎があり、外用療法だけを使っていた日本のUPLIFT回答者137例に、日本のDelphi推奨のうち評価可能だった7項目を当てはめました。

1項目以上を満たした人は92.7%、2項目以上は87.6%、3項目以上は57.7%でした。研究者は、全身治療の候補になり得る患者が十分に治療されていない可能性を示す結果と解釈しました。

ただし、92.7%は日本の乾癬患者全体における全身治療適格率ではありません。外用療法だけを使う調査回答者という選択された集団へ、評価可能な7項目を当てはめた結果です。医師が診察して全員へ処方を決めた割合でもありません。

研究は観察データと患者調査の二次解析で、全身治療へ早く切り替えると長期転帰が改善することを直接比較した試験ではありません。また、研究はAmgen Inc.の資金提供を受け、著者7人中4人がAmgen Inc.またはAmgen K.K.所属です。資金提供や所属だけで結果を否定するのではなく、研究設計と限界を合わせて読みます。

  • 92.7%は日本人患者全体の割合ではない
  • 全身治療の検討候補と、処方決定は同じではない
  • 早期切り替えの効果を検証した介入試験ではない
  • Amgenの資金提供・社員著者を含む

「検討候補」を「全員に強い薬が必要」と読み替えません

個人の治療選択には、症状、部位、治療歴、持病、感染症、妊娠希望、通院・検査の負担、費用、本人の希望が必要です。

05 / Consultation Checkpoints

全身治療を相談する目安:広さ、部位、症状、QOL、関節を確認します

日本皮膚科学会の2022年ガイダンスは、全身療法の一般的な導入基準として、BSA 10%以上、PASI 10以上、DLQI 10以上のいずれかを満たすrule of 10sを紹介しています。ただし、数値だけで判断を終えるものではありません。

頭頸部、爪、手指、手のひら、足の裏などは、面積が小さくても治りにくく、見た目、仕事、歩行、手作業へ強く影響することがあります。陰部の症状や、かゆみ、痛み、出血、睡眠障害、心理的負担も診察で伝えてください。

朝のこわばり、関節の腫れ、指趾全体の腫れ、かかとの痛み、腰背部痛がある場合は、乾癬性関節炎を含む関節評価が必要です。関節症状では皮疹の面積だけを基準にせず、早めに連携を検討します。

外用薬を十分に使っても改善が不十分、短期間で再燃する、広い範囲へ毎日塗る負担が大きい場合も相談の目安です。一つの項目だけで全身治療が決まるのではなく、複数の情報を共有して利益と負担を比較します。

  • BSA・PASI・DLQI
  • 頭皮、顔、爪、手指、掌蹠、陰部などの高インパクト部位
  • かゆみ、痛み、出血、睡眠、仕事・家事、心理的負担
  • 関節・指趾・付着部・腰背部の症状
  • 外用療法の反応、再燃、塗布負担、治療満足度
06 / Treatment Options

外用薬の次の選択肢:光線療法、内服薬、注射薬を分けます

外用療法の次に検討する治療には、紫外線を用いる光線療法、内服薬、注射薬があります。研究で使われるsystemic treatmentの定義と、日常診療で外用以外の治療を段階的に考える枠組みは完全に同じではないため、治療名を確認します。

内服薬には、炎症に関わる経路を調整するアプレミラスト、免疫を抑えるシクロスポリン、角化を調整するエトレチナート、メトトレキサート、TYK2阻害薬などがあります。薬ごとに対象となる病型、効果判定時期、妊娠に関する注意、血液検査、血圧・肝腎機能、感染症確認が異なります。

生物学的製剤は、TNF、IL-17、IL-23など特定の炎症経路を標的とする注射・点滴薬です。高い効果が期待できる一方、結核やB型肝炎を含む感染症の確認と継続的な安全管理が必要です。

日本皮膚科学会は、乾癬の分子標的薬について承認施設・届出の仕組みを設けています。必要と判断された場合は、承認施設へ紹介し、外用療法を含む治療を連携して続けることがあります。

全身治療は外用薬をすべて中止するという意味ではありません

内服・注射薬を使っていても、残る部位や再燃部位へ外用薬を併用することがあります。自己判断で塗り薬を捨てたり中止したりせず、役割を確認してください。

07 / TYK2 Inhibitor 5-Year Data

ソーティクツ(デュークラバシチニブ)の5年データをどう読むか

ソーティクツの有効成分デュークラバシチニブは、炎症に関わるTYK2を選択的に阻害する1日1回の内服薬です。日本では、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症に加え、2026年5月から乾癬性関節炎にも承認されています。今回の5年原著が調べたのは、中等症から重症の局面型乾癬です。

Global POETYK解析では、1回以上投与された1,519例の総曝露は5,046.7人年でした。初日から継続投与した513例をmodified nonresponder imputationで解析すると、PASI 75は1年72.1%から5年67.3%、皮疹が消失またはほぼ消失したsPGA 0/1は57.5%から52.6%でした。

一方、5年時点の有効性解析に含まれたのは275/513例で、安全性集団ではカットオフまでに706/1,519例が中止していました。52週後の長期延長は全員がデュークラバシチニブを受けるオープンラベル試験で、5年時点に同時対照群はありません。長く継続できた患者が残りやすい点を含めて読みます。

日本人136例の別解析でも5年までの反応維持が報告されましたが、Global解析と評価方法や対象構成が異なります。as observedの日本人値とGlobalの補完解析値を直接比べて、日本人の方が効くとは判断できません。両研究はBristol Myers Squibbの資金提供を受け、企業所属著者を含みます。

国内添付文書では、結核を含む感染症、ウイルス再活性化、B型肝炎、悪性腫瘍などへの注意が示されています。通常は成人に6mgを1日1回投与し、24週以内に治療反応が得られない場合は継続を慎重に判断します。5年データは個人の安全を保証するものではなく、開始・継続・中止は診察と検査に基づいて決めます。

Global POETYK解析:1年時点と5年累積の曝露調整発現率(100人年あたり)
評価項目1年時点5年累積
重篤な有害事象5.685.06
重篤感染症(COVID-19除く)1.530.94
悪性腫瘍1.020.92
主要心血管イベント(MACE)0.300.34
静脈血栓塞栓症(VTE)0.200.06
  • 曝露調整発現率は個人が5年間に経験する累積確率ではありません
  • 「新たな安全性シグナルなし」は「副作用なし」「誰にでも安全」という意味ではありません
  • 他の内服薬や生物学的製剤との試験間の数字比較で優劣は決められません

ソーティクツを自己判断で開始・中止しないでください

対象となる病型、感染症・結核・B型肝炎の確認、持病、妊娠・授乳、併用薬、効果判定時期を診察で確認します。発熱、続く咳、帯状疱疹を疑う痛みや水疱などがあれば、処方医へ相談してください。

08 / Shared Decision

薬の選び方:効果だけでなく、持病・検査・妊娠希望・通院負担を比べます

治療選択では、乾癬の病型、皮疹の広さ、難治部位、関節症状に加え、感染症歴、肝臓・腎臓・心血管の病気、炎症性腸疾患、悪性腫瘍歴、妊娠・授乳や妊娠希望、他の薬を確認します。

早く改善したい、注射を避けたい、通院回数を減らしたい、定期検査を続けられるか、費用をどの程度負担できるかなど、患者さんの優先順位も重要です。同じ重症度でも選択は一つに決まりません。

開始前に必要な検査と、いつ効果・副作用を評価するかを確認します。効かなかった薬、合わなかった薬、何週使ったか、どこまで改善したかを記録すると、同じ治療の繰り返しを避けやすくなります。

症状が改善しても自己判断で急に中止すると再燃することがあります。反対に、効果が乏しいまま長く続けることも目標ではありません。あらかじめ評価時期と、改善不十分な場合の次の選択肢を共有します。

09 / Visit Preparation

受診前にまとめること:薬、写真、塗布時間、生活への影響

使用中の薬は、商品名、剤形、塗る回数、1回量、開始日、使えなかった理由を記録します。薬袋、お薬手帳、残っている外用薬を持参すると確認しやすくなります。

症状が強い日の写真は、頭皮、爪、手足など部位が分かるように残します。かゆみ、痛み、出血、睡眠、服装、仕事、家事、歩行、対人場面への影響も短く書いてください。

関節の腫れや朝のこわばり、指趾全体の腫れ、かかとや腰背部の痛みがあれば、皮膚科でも伝えます。痛む場所、始まった日、朝と夜の違い、腫れた日の写真が役立ちます。

診察では「塗り薬が効かない」だけでなく、「毎日20分かかり続けにくい」「頭皮用の剤形が使いにくい」「4週間使っても夜のかゆみが残る」のように、治療と症状を具体的に共有しましょう。

  • 薬の商品名・剤形・回数・量・開始日
  • 十分に使えなかった理由と塗布にかかる時間
  • 同じ条件で撮った症状写真
  • かゆみ・痛み・睡眠・仕事・家事への影響
  • 関節症状、持病、妊娠希望、他の薬

池袋で乾癬の外用薬と全身治療を相談したい方へ

池袋で皮膚科受診をご検討の方へ

池袋駅周辺や東池袋で乾癬の塗り薬を続けても症状が残る場合は、薬の強さだけでなく、塗布量、剤形、部位、使用期間、生活への影響を確認します。お薬手帳や薬袋、使用中の外用薬、症状が強い日の写真があると経過を共有しやすくなります。

池袋サンシャイン通り皮膚科では、皮疹の広さ、頭皮・爪・掌蹠などの部位、かゆみや痛み、関節症状、持病を確認し、外用療法の調整、光線療法や内服治療の検討、分子標的薬使用承認施設への紹介を含めて相談します。

FAQ

よくある質問

乾癬の塗り薬を4週間使って効かなければ、全身治療へ変えますか?

自動的には変えません。日本のDelphi研究は4〜8週を再評価の目安に含めましたが、十分な量を適切な部位へ使えたか、剤形、診断、感染症、副作用、治療負担を確認したうえで判断します。

皮疹の面積が10%未満なら内服薬や注射薬は使いませんか?

面積だけでは決まりません。頭皮、顔、爪、手のひら、足の裏、陰部など生活への影響が大きい部位、強い症状、QOL低下、関節症状、外用療法不十分があれば、BSA 10%未満でも全身治療を検討することがあります。

研究の92.7%は、日本人乾癬患者のほとんどに全身治療が必要という意味ですか?

違います。外用療法だけを使う日本のUPLIFT回答者137例へ、評価可能だった7つのDelphi推奨を当てはめた結果です。日本人患者全体の割合でも、診察後に全身治療を処方した割合でもありません。

全身治療を始めたら塗り薬は中止しますか?

必ずしも中止しません。内服・注射薬を使っていても、残る部位や再燃部位に外用薬を併用することがあります。自己判断で中止せず、外用薬の役割、塗る部位、回数を確認してください。

全身治療は生物学的製剤のことですか?

生物学的製剤だけではありません。内服薬にはアプレミラスト、シクロスポリン、エトレチナート、メトトレキサート、TYK2阻害薬などがあり、外用以外の選択肢として光線療法もあります。病型、症状、持病、検査、希望から選びます。

ソーティクツの5年データがあれば、長期間安全と言えますか?

個人の長期的な安全を保証するものではありません。5年解析は長期治療の参考になりますが、52週後は同時対照のないオープンラベル試験で、治療を継続できた患者が残りやすいという限界があります。感染症、結核、B型肝炎、帯状疱疹、悪性腫瘍などに注意し、診察と検査を続けます。

乾癬で関節が痛い場合も皮膚科へ伝えるべきですか?

伝えてください。朝のこわばり、関節の腫れ、指趾全体の腫れ、かかとの痛み、腰背部痛は乾癬性関節炎の手がかりになることがあります。必要に応じてリウマチ科・整形外科などと連携します。

池袋サンシャイン通り皮膚科 院長 吉井恭平

この記事の監修医師

吉井恭平|池袋サンシャイン通り皮膚科 院長

乾癬では、塗り薬の強さだけを変え続けても、塗布範囲や生活負担、頭皮・爪・手足、関節症状といった治療全体の問題が残ることがあります。使えなかった理由も含めて診察で共有してください。
全身治療の候補になり得ることと、特定の内服薬・注射薬が本人に適していることは別です。治療目標、持病、検査、通院、費用、妊娠希望を一緒に確認し、外用療法も含めて続けられる計画を作ります。
参考文献
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  10. 日本皮膚科学会 乾癬分子標的薬使用承認施設(2026年7月2日更新).
  11. 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 乾癬 Q8「どんな治療法がありますか?」.