
Daily Clinic Notes
山のあと背中にマダニがついていた患者さん3日後の受診で考えたこと
先日、山に行ったあと背中にマダニがついたまま3日ほど経って来院された60代男性を診察しました。ご本人は最初、そこまで大ごととは思っていなかった様子でしたが、マダニは小さいわりに、処置の仕方を間違えると口器が皮膚に残ることがあります。今回は日々の診療メモとして、実際に考えたことと、改めて調べ直した注意点をまとめます。
Key Points
まず押さえたい3つの要点
マダニは痛みやかゆみが少なく、背中など見えにくい部位では数日気づかないことがあります。
付着から時間が経つと口器が皮膚に残りやすく、無理に引き抜かず皮膚科で処置する方が安全です。
除去後は傷の状態だけでなく、数週間は発熱、だるさ、発疹、下痢など全身症状にも注意します。
マダニが皮膚に付いているのに気づいたら、慌てて潰したり強く引っ張ったりせず、できれば付いたまま皮膚科を受診してください。特に数日経っている場合は、口器が皮膚に残ることがあり、症例によっては周囲の皮膚ごと切除して取り除きます。除去後も数週間は発熱やだるさ、発疹、消化器症状がないか見ておくことが大切です。
- 3日前後付着している場合は、自己抜去で口器が残るリスクを考える。
- マダニ本体を潰さず、皮膚科で除去・洗浄・経過観察の説明を受ける。
- 山に行った場所、日付、発熱やだるさの有無を診察時に伝える。
マダニを見つけた時の注意
虫体を指で強くつまむ、潰す、無理に引き抜く、火や薬剤で取ろうとする対応は避けてください。発熱、強いだるさ、全身の発疹、下痢や嘔吐、刺し口周囲の赤みの拡大がある場合は早めに医療機関へ相談しましょう。
山に行った3日後、背中にマダニがついたまま来院されました
この日来院されたのは60代の男性です。3日前に山へ行き、その後、背中に何かが付いていることに気づいたとのことでした。診察で見ると、背部にマダニがしっかり付着していました。
背中は自分では見えにくい場所です。痛みやかゆみが強ければ早く気づけるのですが、マダニは付いていても自覚症状が乏しいことがあります。今回も「いつから付いていたのか、はっきり分からない」という雰囲気でした。
こういうケースでは、虫そのものを取ることだけに目が行きがちです。ただ、皮膚科としては、口器が残らないように取ること、その後に感染症を疑う症状が出ないかを説明すること、この2つをセットで考えます。
3日経っていたので、生検用メスで皮膚ごと切除しました
今回のマダニは、噛まれてから時間が経っていました。マダニは皮膚に口器を差し込んで吸血します。時間が短ければ、適切な器具で比較的きれいに除去できることもありますが、時間が経つと口器が皮膚に固くくっついて、途中でちぎれて残ることがあります。
日本皮膚科学会のQ&Aでも、吸着して3日以上経つと除去が難しくなり、困難な場合は局所麻酔をして皮膚ごと切除する必要があると説明されています。今回も、無理に引っ張って口器を残すより、周囲の皮膚ごと切除する方が確実と判断しました。
当院では生検用メスを用いて、虫体が付着している部位を皮膚ごと切除しました。これは少し大げさに見えるかもしれませんが、残った口器による違和感やしこりを避けるためには、こうした小手術が必要になることがあります。
改めて調べると、マダニは「気づかないまま数日」が起こりやすい虫でした
診療後に改めて資料を確認すると、マダニに刺された部位は痛みやかゆみが少なく、吸血して大きくなってから気づく例があるとされています。今回のように、背中に付いていて数日たってから見つかる流れは、決して珍しい話ではありません。
厚生労働省の情報でも、マダニは皮膚にしっかり口器を突き刺し、数日から長いものでは10日以上吸血することがあり、気づかない場合も多いと説明されています。だからこそ、山や草むらのあとに「今日は背中やわきも確認しておこう」と思い出せるかどうかが大事です。
一方で、マダニに噛まれたから必ず感染症になるわけではありません。過剰に怖がりすぎる必要はありませんが、SFTS、日本紅斑熱、ライム病など、診断や治療が遅れると重症化する病気があるため、正しい距離感で注意することが大切だと感じました。
処置して終わりではなく、数週間は体調の変化を見ます
マダニを取り除いたあとは、まず傷の赤み、痛み、腫れ、膿がないかを見ます。小さな切除でも皮膚に傷ができますので、指示された処置を続け、強くこすったり、自己判断でいろいろな薬を重ねたりしないことが大切です。
もう一つ大切なのは、全身症状です。発熱、強いだるさ、食欲低下、吐き気、下痢、広い範囲の発疹、刺し口以外の皮膚症状が出た場合は、マダニに噛まれたことと、山に行った時期・場所を医師に伝えてください。
特にSFTSは発熱、全身倦怠感、消化器症状などから始まることがあり、日本紅斑熱やライム病などもマダニに関連する感染症として知られています。症状が何もなければ過度に心配しすぎる必要はありませんが、「数週間は気にしておく」くらいがちょうどよいと思います。
- 発熱、寒気、強いだるさが出ていないか
- 下痢、嘔吐、食欲低下など消化器症状がないか
- 刺し口以外に発疹が広がっていないか
- 傷が赤く広がる、熱を持つ、膿が出るなどがないか
受診時に伝えてほしいこと
山に行った日、場所、マダニに気づいた日、取った方法、発熱やだるさの有無を伝えると、診察で確認しやすくなります。取れた虫体が残っている場合は、袋や容器に入れて持参すると参考になることがあります。
山から帰ったら、服を脱ぐ前後で一度チェックしておきたいです
今回の症例で改めて思ったのは、帰宅後のチェックの大切さです。マダニは足だけでなく、背中、わき、足の付け根、膝の裏、首まわり、頭皮などにも付くことがあります。自分で見えない場所は、ご家族に見てもらうか、鏡やスマートフォンのカメラを使うのも現実的です。
予防としては、長袖・長ズボン、足を覆う靴、帽子、首にタオル、明るい色の服などが基本です。虫よけ剤も補助になりますが、過信せず、服装と帰宅後の確認を組み合わせることが大切です。
山歩きや草むらに入ったあとは、入浴時に皮膚を見直す。服やリュックを室内に持ち込む前に軽く払う。こうした小さな習慣で、気づかないまま数日過ぎるリスクを下げられます。
怖がりすぎず、でも“自分で引っ張りすぎない”が大事ですね
マダニの診療では、患者さんも少し驚いた顔をされることが多いです。たしかに、皮膚に虫が付いているというだけで不安になります。ただ、全部のマダニが病原体を持っているわけではありませんし、噛まれた人全員が感染症になるわけでもありません。
一方で、数日経ったマダニを自分で強く引っ張ると、口器が残ったり、虫体を潰したりしてしまうことがあります。今回の症例は、皮膚科で落ち着いて処置する意味を改めて感じるケースでした。
日々の診療では、こういう小さな出来事から学び直すことが多いです。山や草むらに行ったあと、背中に何か付いている、取れない、赤みがある。そんな時は、無理に触り続けず、そのまま相談してください。
- マダニを見つけたら、まず潰さない
- 取れそうにない時、数日経っている時は皮膚科で相談する
- 除去後も数週間は発熱やだるさを気にしておく
- 山や草むらのあとに、自分では見えにくい部位を確認する
池袋でマダニ・虫刺されを皮膚科に相談したい方へ
池袋駅・東池袋周辺で、山歩きや草むらのあとにマダニや虫刺されが心配になった場合は、付着している虫を無理に取らず、可能であればそのまま皮膚科へ相談してください。特に背中など自分で見えにくい部位、数日経っている場合、赤みや違和感がある場合は確認が必要です。
池袋サンシャイン通り皮膚科では、一般皮膚科の診療として虫刺され、マダニ咬傷、湿疹、じんましん、化膿を疑う皮膚症状などを診察しています。発熱や強いだるさがある場合は、マダニに噛まれた時期や場所も必ずお伝えください。
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よくある質問
マダニを見つけたら自分で取ってもよいですか?
無理に引き抜くと口器が皮膚内に残ることがあります。特に数日経っている、しっかり食い込んでいる、背中など自分で見えにくい部位の場合は、付いたまま皮膚科で相談してください。
マダニに噛まれたら必ず感染症になりますか?
必ず感染症になるわけではありません。すべてのマダニが病原体を持っているわけではなく、過剰に怖がりすぎる必要はありません。ただし、SFTSや日本紅斑熱など注意すべき感染症があるため、除去後数週間は体調変化を見てください。
皮膚科ではどのようにマダニを取りますか?
付着時間や食い込み方によって異なります。早期であれば器具で除去できる場合もありますが、時間が経って口器が残りそうな場合は、周囲の皮膚ごと小さく切除して取り除くことがあります。
除去後にどんな症状があれば受診した方がよいですか?
発熱、強いだるさ、食欲低下、下痢や嘔吐、全身の発疹、刺し口周囲の赤みの拡大、痛みや膿がある場合は早めに医療機関へ相談してください。山に行った時期や場所、マダニに噛まれたことを伝えると診察で役立ちます。
山に行ったあとはどこを確認すればよいですか?
わきの下、足の付け根、膝の裏、首まわり、頭部、背中などを確認してください。背中は自分で見えにくいので、鏡やスマートフォン、ご家族の協力を使うと見つけやすくなります。
監修医師メッセージ
吉井恭平 池袋サンシャイン通り皮膚科 院長