池袋サンシャイン通り皮膚科の診察室

Daily Clinic Notes

耳の上の方が
赤く腫れて痛い
耳介軟骨炎と
軟骨膜炎を考える

耳の赤みを見たとき、皮膚のかぶれなのか、軟骨まで炎症が及んでいるのかで、確認したいことが変わります。感染による軟骨膜炎と、繰り返す炎症で考える再発性多発軟骨炎について、文献を読みながら整理しました。

院長 吉井恭平耳の赤み・腫れ・痛み2026-10-08

耳が腫れたときに
確認したい3つのこと

01

軟骨部分の強い痛みや熱感は、感染や膿瘍を早めに確認したいサインです。

02

耳たぶが腫れていないことだけでは、感染と免疫による炎症は区別できません。

03

繰り返す腫れや、鼻・目・関節・呼吸の症状があれば、耳以外も含めて評価します。

先に要点をまとめると

耳介軟骨炎は耳の軟骨に炎症が起きた状態で、軟骨を包む膜の炎症は軟骨膜炎と呼ばれます。軟骨ピアスや傷をきっかけにした感染のほか、再発性多発軟骨炎などの病気も原因になります。赤く、熱を持ち、強く痛む耳は、見た目だけで「かぶれ」と決めず、早めに診察を受けることが大切です。

参考:英国保健安全保障庁の解説、難病情報センターの解説

受診を急いでほしい症状

強い痛み、急に増す腫れ、膿、発熱がある場合は、当日中を目安に医療機関へ相談してください。息苦しさや呼吸時の強い異常音があれば救急受診を。目の強い痛みや見えにくさ、急な聞こえの低下も、早急な評価が必要です。

01 / What I Check

耳たぶなのか、硬い軟骨部分なのか

「耳が赤く腫れた」といっても、耳たぶ、耳の上の縁、耳の穴の周囲では、考える原因が少し違います。まず確認したいのは、どこを中心に腫れているかです。

耳の上の縁などには軟骨がありますが、耳たぶにはありません。軟骨膜炎では、軟骨のある部分が赤く腫れ、耳たぶは比較的保たれることがあります。ただし、同じ特徴は再発性多発軟骨炎でもみられます。「耳たぶは正常だから、感染ではない」「耳たぶが正常だから、膠原病だ」とは言い切れません。大阪大学の解説でも、外傷や感染との鑑別が示されています。

耳介の軟骨部分の赤みと腫れを表したAI生成の説明用イメージ
耳介の軟骨部分の赤みと腫れを表した説明用イメージです。AI生成画像であり、実際の患者さんの症例写真ではありません。画像だけで感染性の軟骨膜炎と再発性多発軟骨炎を区別することはできません。

痛みがあまりなく、液体がたまるような腫れであれば、耳介偽嚢腫について整理した診療メモも参考になります。こちらは通常、強い炎症の乏しい病態を扱っています。

02 / Infection

軟骨ピアスや傷の後は、感染性の軟骨膜炎に注意

軟骨ピアス、打撲、ひっかき傷などは、細菌が入るきっかけになります。とくに軟骨部分のピアス後に、痛み・熱感・腫れが増している場合は、感染を確認する必要があります。

英国保健安全保障庁は、軟骨ピアス後の軟骨膜炎について注意喚起しています。進行すると膿瘍ができ、軟骨の損傷や耳の変形につながることがあります。緑膿菌は、水やケア用品の汚染を介して侵入することもあります。UKHSAの2024年の注意喚起

最近の研究を読むと

2025年に公表された、海外の単一施設の217人を対象とする後ろ向き研究では、軟骨ピアスに関連する群は、それ以外の群より膿瘍や緑膿菌の検出が多くみられました。膿瘍は治療上の合併症と関連していました。ただし、受診した患者さんを調べた研究なので、すべてのピアス利用者の感染率を示すものではありません。Ungarら、2025年

耳たぶの穴の腫れやキャッチの圧迫は、ピアス穴や耳たぶが赤く腫れたときの注意点で詳しく扱っています。今回の記事で特に注意したいのは、硬い軟骨部分の炎症です。

03 / Different Causes

かぶれ、皮膚感染、液体貯留とはどう違う?

赤い耳の原因を、写真だけで区別するのは難しいことがあります。きっかけ、痛みとかゆみのどちらが強いか、耳の穴の症状、繰り返すかを合わせて確認します。以下は診察で整理する視点で、自己診断のための表ではありません。

耳の赤み・腫れで確認するポイント
考える原因確認する手がかり注意したいこと
感染性の軟骨膜炎軟骨部分の痛み・熱感、ピアスや傷、膿膿瘍や軟骨損傷の有無を確認します。
耳介の皮膚感染皮膚の赤みの広がり、耳たぶを含む腫れ軟骨膜炎と重なる場合もあります。
接触皮膚炎かゆみ、湿疹、金属やケア用品の接触歴かぶれに感染が加わることもあります。
耳介血腫・偽嚢腫外傷、液体がたまる腫れ、炎症の程度特に外傷後の腫れは早めに確認します。
再発性多発軟骨炎繰り返す軟骨部の炎症、鼻・目・関節などの症状耳だけで診断せず、全身を評価します。

参考:耳介軟骨膜炎の研究、大阪大学の鑑別の解説

金属が触れる場所にかゆい湿疹が出る場合は、金属アクセサリーによるかぶれ、イヤホンに触れる場所の症状は、イヤホンによる耳のかゆみ・赤みも参考にしてください。耳だれや聞こえの変化がある場合は、耳鼻咽喉科で耳の中を確認してもらうことが大切です。

04 / Treatment

抗菌薬だけでよいのか、膿を出す処置も必要なのか

感染性の軟骨膜炎では抗菌薬が治療の中心ですが、膿がたまっている場合には、排膿や傷んだ組織への処置も必要になります。外用薬だけで十分とは限りません。重症度によっては点滴や入院治療を検討し、耳鼻咽喉科などで評価します。

緑膿菌だけを考えればよい、というわけでもありません

2019年のデンマークの研究では、112人のうち膿瘍がある12人と、膿瘍がない100人を比較しています。膿瘍を伴う例では緑膿菌、伴わない感染では黄色ブドウ球菌が多くみられました。膿瘍のない患者では、抗菌薬の対象菌の違いによる明らかな成績差は認められませんでした。Klugら、2019年

ただし、これは過去の診療記録を振り返った研究であり、どの患者さんにも同じ薬がよいと証明したものではありません。一方、英国の病院の診療指針では、軟骨膜炎やピアス関連の感染には緑膿菌を意識した治療を示しています。部位、膿瘍、培養結果、治療への反応から薬を選び直すことが大切だと考えます。Oxford University Hospitalsの診療指針

実際の薬は、国内での使用条件、年齢、妊娠、腎機能、併用薬、耐性菌や副作用も踏まえて選びます。海外の薬の量をそのまま日本の診療に当てはめるものではありません。残った抗菌薬を自己判断で飲むことは避けてください。

「膿んで見える」場合のステロイドは?

異物反応やかぶれには抗炎症治療を考えることがありますが、軟骨部の感染や膿瘍を見逃したままステロイドだけで治療しないことが重要です。膿と異物反応の見分け方を扱った記事でも、感染の評価を先に行う考え方を整理しています。

05 / Recurrent Inflammation

繰り返す耳の腫れでは、再発性多発軟骨炎も考える

再発性多発軟骨炎(RP)は、耳や鼻、気道などの軟骨に炎症を繰り返す、まれな病気です。耳が腫れた方全員に疑うわけではありませんが、明らかな傷がなく炎症を繰り返す場合や、耳以外にも症状がある場合には、見落としたくない原因です。

両耳に症状が出ることもありますが、片側だけの時期もあります。鼻の痛み、関節痛、目の赤みや痛み、難聴・めまい、声がれ・息苦しさなどを確認します。日本リウマチ学会の2025年の診断・治療ガイドライン

採血だけで決まる病気ではありません

特定の採血項目一つで確定できる病気ではなく、症状と経過を合わせて判断します。必要に応じて採血、聴力・眼・呼吸器の評価、画像検査を行います。診断が難しい場合には、専門医と相談して耳介軟骨の生検を検討しますが、すべての患者さんに生検が必須ではありません。大阪大学の診断・検査の解説

感染とは、治療の方向が異なります

RPでは炎症の程度と障害される臓器に応じて、抗炎症薬、ステロイド、免疫を調整する薬などを専門医が選びます。希少疾患のため治療の比較試験は限られており、病変に合わせた判断が必要です。耳の症状が落ち着いていても、呼吸や目などの確認を続けることが重要です。順天堂医院の治療の解説、難病情報センター

06 / When to Seek Care

何科を受診する?受診までにできること

耳の皮膚の赤みやかぶれは皮膚科で相談できます。軟骨部分の強い腫れや膿瘍、耳だれ、聞こえの変化がある場合は、耳鼻咽喉科での評価が適しています。原因がはっきりしない場合には、診察した医師から必要な診療科へつなぎます。RPを疑う場合は、リウマチ・膠原病内科などで全身を評価します。

当日中の相談を

強い痛み、急速に増す腫れ、熱感、膿、発熱、皮膚の色の変化があるとき。糖尿病や免疫を抑える治療中の場合も、早めに相談してください。

すぐに評価を

息苦しさや呼吸の異常音は救急受診を。目の強い痛み・見えにくさ、急な聞こえの低下は、その日のうちに専門診療を受けてください。

受診までは、押す、針を刺す、膿を絞るといったことは避けてください。腫れた場所を圧迫するイヤホンなどは控え、ピアスが埋まりそうな場合も無理に引き抜かず医療機関へ相談します。手持ちの消毒剤や薬を次々に追加すると、かぶれが重なり原因が分かりにくくなります。

「いつから」「ピアスや外傷があったか」「以前も腫れたか」「使った薬やケア用品」を短くメモしておくと役立ちます。受診前のメモと写真の残し方もまとめています。写真を撮るために受診を遅らせる必要はありません。

07 / Takeaway

赤い耳の奥に、何が起きているのか

今回文献を読んで改めて感じたのは、「耳が赤い」という一つの見た目でも、腫れの中心と経過を丁寧に確認することが大切だということです。感染なら、膿瘍をつくっていないか。繰り返す炎症なら、耳以外にも手がかりがないか。そうした視点を持つことで、必要な治療や専門診療につなげやすくなります。

病名を検索して不安になった方も、見た目だけで原因を決める必要はありません。まずは、いつからどのように変わったかを診察で共有してください。強い痛みや急な腫れがあるときは、早めの受診をお願いします。

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FAQ

よくある質問

耳介軟骨炎と軟骨膜炎は同じ病気ですか?

耳介軟骨炎は耳の軟骨の炎症、軟骨膜炎は軟骨を包む膜の炎症を指します。感染では両方に炎症が及ぶこともあります。病名だけでなく、原因と膿瘍の有無を確認して治療します。

耳たぶが腫れていなければ、再発性多発軟骨炎ですか?

その所見だけでは診断できません。感染性の軟骨膜炎でも耳たぶが保たれることがあります。ピアスや外傷、膿、再発、耳以外の症状を合わせて評価します。

軟骨ピアス後の赤みは、塗り薬だけで治りますか?

深い感染や膿瘍があれば、外用薬だけでは不十分なことがあります。内服・点滴の抗菌薬や排膿を検討します。痛みや腫れが増している場合は早めに受診してください。

片耳だけの腫れでも、再発性多発軟骨炎を考えますか?

片側の症状だけで否定はできません。ただし、感染や外傷などほかの原因もあります。炎症を繰り返すか、鼻・目・関節・呼吸などに症状があるかを確認します。

耳介軟骨炎は、皮膚科と耳鼻科のどちらに相談すればよいですか?

耳の皮膚のかぶれは皮膚科で相談できます。軟骨部の強い腫れや膿、耳だれ、聞こえの変化があれば耳鼻咽喉科が適しています。繰り返す炎症では必要に応じて膠原病内科などとも連携します。

Doctor

院長からひとこと

池袋サンシャイン通り皮膚科 院長 吉井恭平

吉井恭平
池袋サンシャイン通り皮膚科 院長

痛み、かゆみ、腫れは、ご本人にしか分からない変化もあります。「これくらいで相談してよいのかな」と思わず、経過を教えてください。耳の皮膚だけでなく、必要な診療科で確認すべきことも整理していきます。

References

参考文献・公的情報

本記事は一般的な医学情報です。個別の診断や処方は、診察所見と経過、検査結果に基づいて判断します。情報確認日:2026年10月8日。