
Daily Clinic Notes
「癜風の薬で治らない」PMHでは?30代女性の相談から低色素斑を見直した
「癜風として治療しているのですが、なかなかよくなりません。ネットで調べたら、進行性斑状低色素症ではないかと思って」。そう話す30代女性が来院されました。患者さんが見つけた病名を、その場で正解とも間違いとも決めることはできません。ただ、治療反応が乏しい低色素斑を見直す大切なきっかけになりました。診察後、Progressive Macular Hypomelanosis(PMH)の診断と治療に関する研究を読み直しました。
Key Points
まず押さえたい3つの要点
癜風の菌が治療で減っても、白っぽい色むらは数週間から数か月残ることがあります。見た目が変わらないことだけで、治療失敗やPMHとは決められません。
PMHは、主に若い成人の体幹へ左右対称に広がる、境界がやや不明瞭で鱗屑の乏しい低色素斑として報告されています。かゆみや痛みは通常目立ちません。
真菌鏡検は活動性癜風の確認に役立ちます。Wood灯でPMHに毛包一致の赤色蛍光がみられることがありますが、単独で確定できる検査ではありません。
癜風の治療で白い斑点が改善しない時、PMHは考える候補の一つです。ただし、癜風では真菌が消えた後も色素の回復に時間がかかるため、白さが残るだけでPMHとは診断できません。まず、治療薬と使用期間、細かな鱗屑の有無、病変の分布を確認し、必要に応じて皮膚を擦ってKOH直接鏡検を行います。PMHでは体幹を中心に左右対称で、鱗屑のない低色素斑が融合することが多く、Wood灯の毛包一致赤色蛍光が補助所見になることがあります。一方、白斑、炎症後色素減少、まれな炎症性・腫瘍性疾患も似るため、非典型例や進行例では皮膚生検を含む追加評価を検討します。
- 抗真菌薬で菌が減っても、色だけ残ることがあります。治療反応は鱗屑・鏡検・新しい病変の有無でも評価します。
- PMHらしさは、体幹中心、左右対称、非鱗屑性、無症状という組み合わせです。病名検索だけでは確定できません。
- 市販のニキビ薬を広範囲に塗る、日光へ積極的に当てるといった自己治療は、刺激や紫外線障害につながるため避けます。
白い斑点が治らないからと、抗真菌薬・ニキビ薬・日光浴を自己判断で重ねないでください
癜風、PMH、白斑、炎症後色素減少などでは治療が異なります。強いかゆみや赤み、皮膚の硬さ・萎縮、感覚の低下、片側だけの拡大、短期間で急に増える変化がある場合は、PMH以外の病気も含めた評価が必要です。使用中の薬と開始日、治療前後の写真を持って皮膚科へ相談してください。
「PMHではないですか」という患者さんの一言が、診断をもう一度組み立て直すきっかけになりました
今回来院されたのは30代の女性です。癜風として治療を続けていましたが、低色素斑がよくならず、ご自身で調べた「進行性斑状低色素症(PMH)」という病名を持って来られました。
診察室では、ネット検索の病名が先に出ると、医師側はつい「自己診断しないでください」と言いたくなることがあります。でも今回は、患者さんが経過をよく観察し、治療反応への疑問を言葉にしてくれたことが大切でした。PMHは実際に癜風と間違われることがある病気です。
一方で、抗真菌薬を使っても白さが残ることと、真菌が治っていないことは同じではありません。どの薬を、どの範囲へ、何週間使ったか。治療前より新しい斑点が増えたか。表面に細かな皮むけが残っているか。まず時間軸を戻して確認する必要があります。
- 最初に白い斑点へ気づいた時期
- 使った抗真菌薬の商品名、塗った範囲、使用期間
- 治療中にも新しい斑点が増えたか
- 治療前後で皮むけ、かゆみ、色の差が変わったか
- 同じ条件・明るさで撮影した経過写真があるか
癜風では、真菌が減った後も色むらだけがしばらく残ることがあります
癜風は、皮膚の常在真菌であるMalasseziaが増えて起こります。活動性の病変では、胸や背中、首などに白色・褐色・淡い赤色の斑点ができ、表面を軽く擦ると細かな鱗屑が目立つことがあります。
抗真菌薬で真菌が減ると、鱗屑や新しい病変は改善していきます。しかし、周囲との色の差はすぐには戻らず、数週間から数か月残ることがあります。治療後も白く見えるからといって、同じ抗真菌薬を際限なく続ける必要があるとは限りません。
逆に、細かな鱗屑が続く、新しい斑点が増える、薬を十分な期間・範囲へ使えていない場合は、活動性癜風が残っている可能性があります。見た目の色だけでなく、真菌鏡検、鱗屑、新しい病変という三つを見直します。
PMHは、体幹を中心に左右対称に広がる、鱗屑の乏しい低色素斑として報告されています
Progressive Macular Hypomelanosisは、日本語で進行性斑状低色素症と呼ばれます。若い成人、とくに女性での報告が多く、背中や胸腹部を中心に、境界がやや不明瞭な円形・楕円形の低色素斑が左右対称に広がり、中央で融合することがあります。
典型例では表面の鱗屑がなく、かゆみや痛みも目立ちません。顔に出ることは少ないとされます。白斑のように色が完全に抜けた「脱色素斑」というより、周囲より色が薄い「低色素斑」として見えるのが一般的です。
原因はまだ確定していません。毛包にいるCutibacterium acnesの特定系統が関係するという仮説があり、病変部からの菌の検出や抗菌治療への反応が報告されています。しかし、因果関係は証明し切れておらず、PMHを単純な細菌感染症と説明するのは正確ではありません。
鱗屑、左右差、色の抜け方、先行する炎症を組み合わせて候補を絞ります
低色素斑の鑑別は、写真一枚では難しいことがあります。診察では、白いか薄いか、境界がはっきりしているか、表面に鱗屑があるか、毛が白くなっていないか、炎症が先にあったか、感覚が保たれているかを確認します。
PMHらしい分布でも、真菌鏡検が陽性なら癜風の治療が必要です。反対に、真菌鏡検が陰性でも、その一回だけでPMHに決まるわけではありません。採取部位、治療直後かどうか、他の病気の所見を合わせます。
左右差が強い、赤み・かゆみ・萎縮・硬さを伴う、長期間じわじわ広がる非典型例では、炎症性疾患や低色素性菌状息肉症なども候補になります。必要に応じて皮膚生検を検討します。
真菌鏡検で癜風を確認し、Wood灯はPMHを含む低色素斑の補助評価に使います
活動性癜風が疑われる時は、病変の縁などから鱗屑を採り、KOH直接鏡検で短い菌糸と胞子を確認します。抗真菌薬を塗った直後は検出しにくくなる可能性があるため、何をいつまで使ったかを伝えてください。
Wood灯では、癜風が黄白色・黄緑色・銅色などに蛍光することがありますが、すべての病変が光るわけではありません。PMHでは毛包に一致する点状の赤色蛍光が報告されており、Cutibacteriumが作るポルフィリンとの関連が考えられています。
ただし、赤色蛍光があれば必ずPMH、なければ否定、という検査ではありません。診断は臨床像と分布、真菌検査、Wood灯を合わせます。左右差や炎症、萎縮がある、治療に反応しない、診断が揺れる場合は、病理検査や専門施設での評価を検討します。
- 鱗屑のある場所や病変の縁から真菌検査を行う
- 抗真菌薬の商品名と最終使用日を伝える
- Wood灯の色だけで診断を確定しない
- 非典型例や進行例では、皮膚生検を含む追加評価を考える
抗菌外用と光線療法の研究はありますが、PMHの標準治療はまだ定まっていません
PMHでは、ベンゾイル過酸化物とクリンダマイシンの外用、ナローバンドUVBなどが研究されています。Cutibacteriumの関与を抑えることと、色素の回復を促すことを組み合わせる考え方です。
23人を対象とした無作為化二重盲検試験では、ベンゾイル過酸化物5%とクリンダマイシン1%を使用した群で、プラセボ群より改善した人が多く、85%対20%でした。ただし、両群に日光曝露の指示があり、人数が少なく、実薬群では副作用も多い試験です。この結果をそのまま自己治療へ置き換えることはできません。
108人の診療録を調べた研究では、寛解は光線療法群90%、抗菌治療群38%、無治療群23%でした。一方、2年間の追跡で再発がみられたのは光線療法群でした。無作為化試験ではなく治療選択の偏りがあるため、数字を単純比較せず、早い色素回復と再発の可能性を一緒に説明する必要があります。
日本ではPMHに対する治療の標準化や保険診療上の位置づけが十分明確とはいえません。診断の確からしさ、範囲、生活への負担、外用刺激、紫外線治療の利益とリスク、通院可能性を確認し、実施できる施設への紹介を含めて方針を決めます。
治らない時は薬を足す前に、治療前後の写真と検査で診断を戻って確認します
今回のような相談では、まず治療前の写真があるかを確認します。癜風の鱗屑が消えて色だけ残ったのか、低色素斑そのものが増えているのかは、現在の見た目だけでは分かりにくいからです。
次に、使用薬、使用期間、塗布範囲を確認し、活動性癜風が疑われれば真菌検査を行います。鏡検が陰性で、非鱗屑性・左右対称・体幹中心という所見がそろえば、PMHを含む別の低色素性疾患を検討します。
PMHを心配して、市販のベンゾイル過酸化物製品や抗菌薬を広い範囲へ自己使用することは勧めません。刺激性皮膚炎や衣類の脱色、抗菌薬の不適切使用につながります。また、研究に日光曝露が含まれていても、自己判断の日光浴は紫外線障害を増やします。
- 治療前と現在の写真を同じ明るさで比べる
- 薬の商品名、使用期間、塗った範囲を確認する
- 必要に応じて活動性癜風の真菌検査を行う
- PMHらしさと非典型所見を分け、追加検査・紹介を検討する
片側だけ、赤みや萎縮がある、感覚が違う時は、PMH以外の可能性を改めて考えます
PMHは一般に、体幹へ左右対称に広がる無症状の低色素斑です。この典型像から外れる時は、病名を固定せず、鑑別を広げます。
片側だけに偏る、強いかゆみや痛みがある、赤み・鱗屑・皮膚の萎縮や硬さを伴う、触った感覚が左右で違う、短期間に急速に広がる場合は、炎症性疾患、感染症、白斑、まれなリンパ増殖性疾患などの評価が必要です。
白い斑点は緊急性が高くないことも多い一方、治療を変えても進行する場合は経過観察だけで終わらせません。全身を診察し、必要なら複数回の生検や専門施設への紹介を検討します。
今日の学びは、患者さんの検索結果を「診断名」ではなく「もう一度見るための質問」として受け取ることでした
今回の患者さんがPMHという病名を持って来られたことで、私も癜風治療後の低色素斑をどの順番で見直すか、改めて整理できました。患者さんの検索が診断を確定するわけではありませんが、治療反応への違和感を共有する言葉にはなります。
調べ直して印象に残ったのは、PMHではCutibacteriumとの関連がかなり研究されている一方、原因も標準治療もまだ確定していないことです。抗菌外用や光線療法に数字が出ていても、小規模試験や後ろ向き研究が中心で、再発もあります。
だからこそ、最初に戻って、菌が残っているのか、色だけ残ったのか、そもそも別の低色素斑なのかを分ける。ネットで見つけた病名を否定するのでも、そのまま採用するのでもなく、検査できる問いへ置き換える。今日いちばん大切だったのは、その姿勢でした。
- 「治らない」を、鱗屑・新規病変・色の回復に分けて聞く
- PMHは候補に入れるが、ネット検索だけで確定しない
- 真菌鏡検と分布を先に確認し、Wood灯は補助所見として使う
- 治療研究の限界と再発を説明し、自己治療を避ける
池袋で癜風治療後も背中の白い斑点が改善しない方へ
池袋駅・東池袋周辺で、癜風として抗真菌薬を使っても背中や胸の白い斑点が改善しない場合は、使った薬の商品名、使用期間、治療前後の写真を持ってご相談ください。
池袋サンシャイン通り皮膚科では、一般皮膚科(保険診療)として鱗屑、分布、治療歴を確認し、必要に応じて真菌検査を行います。PMH、白斑、炎症後色素減少などを検討し、追加検査や光線療法が必要な場合は対応可能な医療機関への紹介を含めてご案内します。
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よくある質問
進行性斑状低色素症(PMH)とは何ですか?
主に若い成人の背中や胸腹部へ、左右対称の低色素斑が広がる皮膚疾患です。典型例では鱗屑、かゆみ、痛みは目立ちません。Cutibacterium acnesとの関連が研究されていますが、原因は確定していません。
癜風の治療で白い斑点が消えなければPMHですか?
そうとは限りません。癜風では真菌が減った後も色素の回復に数週間から数か月かかることがあります。鱗屑、新しい病変、真菌鏡検、治療期間と塗布範囲を確認してから、PMHや別の病気を検討します。
PMHと癜風はどのように見分けますか?
癜風は細かな鱗屑を伴うことがあり、KOH直接鏡検で菌糸と胞子を確認できます。PMHは体幹中心、左右対称、非鱗屑性、無症状が典型です。分布、鏡検、Wood灯、必要時の皮膚生検を組み合わせます。
Wood灯でPMHを確定できますか?
Wood灯で毛包に一致する点状の赤色蛍光がみられることがありますが、それだけで確定はできません。赤色蛍光がない場合もあり、臨床像、分布、真菌検査などと合わせて判断します。
PMHは人にうつりますか?
人へうつる病気とは考えられていません。皮膚常在菌のCutibacterium acnesとの関連が研究されていますが、単純な感染症として原因が確定したわけではありません。
PMHは自然に治ることがありますか?
自然に改善した例はあります。108人の後ろ向き研究では無治療群の23%に回復がみられましたが、全員が自然に治ることを意味しません。広がりや生活への影響を見ながら、経過観察と治療を相談します。
PMHはどのように治療しますか?
ベンゾイル過酸化物とクリンダマイシンの外用、ナローバンドUVBなどの報告があります。ただし標準治療は確立しておらず、研究規模も限られ、再発もあります。診断、範囲、刺激、紫外線リスク、通院負担を確認して選びます。
ニキビ薬や日光浴を自分で試してもよいですか?
勧めません。ベンゾイル過酸化物は刺激や衣類の脱色を起こし、抗菌薬の不適切使用は耐性菌の問題につながります。研究に日光曝露が含まれていても、自己判断の日光浴は紫外線障害を増やします。皮膚科で診断を確認してください。
白い斑点で皮膚生検が必要になるのはどのような時ですか?
分布が非典型、片側へ偏る、赤み・鱗屑・かゆみ・萎縮・硬さを伴う、治療を変えても進行する、真菌検査やWood灯で判断できない場合などに検討します。診断により生検部位も変わるため、皮膚科で相談します。
監修医師メッセージ
吉井恭平 池袋サンシャイン通り皮膚科 院長
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