防風通聖散とは?効果・副作用を医師が解説
- ✓ 防風通聖散は、肥満症や便秘、むくみなどに用いられる漢方薬です。
- ✓ 脂肪燃焼促進や便通改善など、複数のメカニズムで効果を発揮すると考えられています。
- ✓ 体質や他の疾患、服用中の薬によっては注意が必要であり、医師や薬剤師への相談が重要です。
防風通聖散とは?

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)は、中国の古典医学書『宣明論』に収載されている漢方薬で、18種類の生薬から構成されています。主に、お腹周りに脂肪が多く、便秘がちな方の肥満症や、むくみ、高血圧に伴う動悸・肩こり、湿疹・皮膚炎、吹き出物などに用いられます[5]。この漢方薬は、体内の余分な熱を取り除き、便通を改善することで、体全体のバランスを整えることを目指します。
当院の患者さまの中には、特に「お腹周りの脂肪が気になる」「便秘がちでなかなか痩せない」といったお悩みを抱えて初診時に相談される方が少なくありません。問診の際には、患者さまの体質や生活習慣、他の疾患の有無などを詳しく伺い、防風通聖散が適しているかどうかを慎重に判断するようにしています。
防風通聖散の構成生薬とは?
防風通聖散は、以下の18種類の生薬が組み合わさってできています。これらの生薬が複合的に作用することで、その効果を発揮します。
- 防風(ボウフウ)
- 麻黄(マオウ)
- 大黄(ダイオウ)
- 芒硝(ボウショウ)
- 石膏(セッコウ)
- 黄芩(オウゴン)
- 桔梗(キキョウ)
- 当帰(トウキ)
- 芍薬(シャクヤク)
- 川芎(センキュウ)
- 白朮(ビャクジュツ)または蒼朮(ソウジュツ)
- 荊芥(ケイガイ)
- 連翹(レンギョウ)
- 薄荷(ハッカ)
- 山梔子(サンシシ)
- 生姜(ショウキョウ)
- 甘草(カンゾウ)
- 滑石(カッセキ)
- 漢方薬
- 中国の伝統医学を基に日本で発展した医療体系で、複数の生薬を組み合わせた処方により、病気の治療や体質改善を目指します。個々の症状だけでなく、患者さま全体の体質やバランスを重視する「証(しょう)」という概念に基づいて処方が選択されます。
防風通聖散はどのような効果が期待できる?
防風通聖散には、脂肪燃焼の促進、便通の改善、むくみの軽減など、複数の効果が期待されています。これらの効果は、配合されている様々な生薬の相乗作用によるものです。
肥満症への効果は?
防風通聖散は、特に「お腹周りの脂肪」が気になる方、いわゆる内臓脂肪型肥満の方に効果が期待されています。複数の研究で、防風通聖散が肥満症患者のBMI(Body Mass Index)を改善する可能性が示されています[1]。また、動物実験では、高脂肪食による肥満モデルマウスにおいて、脂肪蓄積の抑制や腸内細菌叢への影響が報告されています[3]。これは、防風通聖散が脂肪細胞の代謝を促進したり、脂肪の吸収を抑制したりする作用を持つためと考えられています[2]。
当院では、防風通聖散を処方した患者さまが、治療を始めて2〜3ヶ月ほどで「お腹周りがすっきりしてきた」「便秘が改善されて体が軽くなった」とおっしゃるケースをよく経験します。もちろん、漢方薬だけで全てが解決するわけではなく、食事指導や運動療法と組み合わせることで、より効果的な体重管理を目指します。
便秘やむくみへの効果は?
防風通聖散に含まれる大黄(ダイオウ)や芒硝(ボウショウ)といった生薬には、便通を促す作用があります。これにより、便秘の解消が期待できます。便秘が解消されることで、体内の老廃物が排出されやすくなり、むくみの改善にもつながると考えられています。また、漢方医学では、体内の余分な水分や熱が滞ることでむくみが生じると考えられており、防風通聖散はこれらのバランスを整えることで、むくみを軽減する効果も期待できます。
高血圧や皮膚症状への効果は?
防風通聖散は、高血圧に伴う動悸や肩こり、のぼせなどにも用いられることがあります。これは、体内の余分な熱を冷まし、血行を改善する作用によるものと考えられています。また、湿疹・皮膚炎や吹き出物といった皮膚症状に対しても、体内の熱や炎症を鎮める作用が期待されます。特に、赤みが強く、化膿しやすいタイプの皮膚症状に適用されることが多いです。
防風通聖散の作用メカニズムとは?

防風通聖散が肥満症や便秘、むくみなどに効果を発揮するメカニズムは多岐にわたります。複数の生薬が複合的に作用し、体内の様々な経路に影響を与えることで、その効果が生まれると考えられています。
脂肪代謝促進作用
防風通聖散は、脂肪細胞における脂肪分解を促進する作用や、脂肪の合成を抑制する作用が報告されています[2]。具体的には、交感神経を活性化させ、エネルギー消費を増大させることで、体脂肪の減少に寄与すると考えられています。また、動物実験では、高脂肪食による肥満モデルマウスにおいて、防風通聖散が脂肪蓄積を抑制することが示されており、腸内細菌叢のバランスにも影響を与える可能性が指摘されています[3]。
便通改善作用
大黄や芒硝といった生薬は、腸の蠕動運動を促進し、便の水分量を増加させることで、便通を改善します。これにより、体内に滞留した老廃物の排出を促し、デトックス効果も期待できます。便秘が解消されることで、腸内環境が整い、全身の代謝にも良い影響を与える可能性があります。
抗炎症作用・利尿作用
防風通聖散に含まれる黄芩(オウゴン)や山梔子(サンシシ)などの生薬には、抗炎症作用があると考えられています。これにより、皮膚炎や吹き出物といった炎症性の皮膚症状の改善に寄与します。また、滑石(カッセキ)などの生薬は利尿作用を持ち、体内の余分な水分を排泄することで、むくみの軽減に役立ちます。
防風通聖散の副作用と注意点とは?
防風通聖散は漢方薬ですが、医薬品であるため副作用がないわけではありません。服用にあたっては、体質や既往歴、併用薬などを考慮し、医師や薬剤師の指示に従うことが重要です。
防風通聖散は、体質や症状によっては適さない場合があります。特に、胃腸が弱い方、下痢しやすい方、発汗傾向が著しい方、高齢者、心臓病・高血圧・腎臓病・甲状腺機能障害などの持病がある方は、服用前に必ず医師または薬剤師に相談してください。
主な副作用
防風通聖散で報告されている主な副作用には、以下のようなものがあります[5]。
- 消化器症状: 下痢、軟便、腹痛、吐き気、嘔吐、食欲不振など。特に、大黄や芒硝の作用により、下痢が起こりやすいことがあります。
- 皮膚症状: 発疹、かゆみなど。
- 精神神経系症状: 不眠、発汗過多、動悸、ふるえ、興奮など。麻黄に含まれるエフェドリン様成分による作用です。
- 肝機能障害: まれに、AST、ALT、γ-GTPの上昇など、肝機能の異常が報告されています。
- 間質性肺炎: ごくまれに、発熱、咳、呼吸困難などの間質性肺炎の症状が現れることがあります。
- 薬剤性膀胱炎: 稀なケースですが、薬剤性膀胱炎の報告もあります[4]。
当院では、処方後のフォローアップで、副作用の有無だけでなく、患者さまが治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。「お腹がゆるくなりすぎる」「夜眠りにくくなった」といった訴えがあった場合は、減量や中止、他の漢方薬への変更などを検討し、患者さま一人ひとりに合わせた最適な治療計画を立て直します。
服用を避けるべきケース・慎重な服用が必要なケース
以下のような方は、防風通聖散の服用を避けるか、特に慎重な服用が必要です[5]。
- 妊娠中または授乳中の女性: 妊娠中の方や授乳中の方は、服用前に必ず医師に相談してください。
- 乳幼児・小児: 小児への投与は、慎重に行う必要があります。
- 高齢者: 一般に生理機能が低下しているため、減量するなど注意が必要です。
- 胃腸が弱い方・下痢しやすい方: 消化器症状が悪化する可能性があります。
- 心臓病・高血圧・腎臓病・甲状腺機能障害のある方: 麻黄の作用により、症状が悪化する可能性があります。
- 他の薬を服用している方: 特に、他の漢方薬、瀉下薬(下剤)、利尿剤、グリチルリチン酸を含む製剤などとの併用には注意が必要です。相互作用により、副作用が増強されたり、効果が減弱したりする可能性があります。
服用期間と効果実感の目安
漢方薬の効果は、西洋薬のようにすぐに現れるものではなく、一般的に数週間から数ヶ月かけてじっくりと体質を改善していくものです。防風通聖散も同様で、効果を実感するまでには個人差がありますが、通常は1ヶ月程度の服用で何らかの変化を感じ始める方が多いです。肥満症の改善を目指す場合は、数ヶ月から半年程度の継続的な服用が推奨されることもあります。効果が見られない場合や、副作用が現れた場合は、速やかに医師に相談してください。
防風通聖散と他の漢方薬との違いは?

肥満症や便秘に用いられる漢方薬は防風通聖散以外にもいくつか存在します。患者さまの体質や症状に合わせて、適切な漢方薬を選択することが重要です。
防風通聖散と大柴胡湯、防已黄耆湯の比較
肥満症に用いられる代表的な漢方薬として、防風通聖散の他に大柴胡湯(だいさいことう)や防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)があります。これらはそれぞれ異なる体質や症状に適しています[3]。
| 項目 | 防風通聖散 | 大柴胡湯 | 防已黄耆湯 |
|---|---|---|---|
| 適応体質(証) | 実証(体力があり、お腹周りに脂肪が多く、便秘がちな方) | 実証(体力があり、脇腹からみぞおちにかけて張って苦しい、便秘がちな方) | 虚証〜中間証(疲れやすく、汗をかきやすい、水太り、むくみがちな方) |
| 主な効果 | 脂肪燃焼促進、便通改善、むくみ軽減 | 脂質代謝改善、便通改善、精神安定 | 利尿作用、むくみ軽減、関節痛改善 |
| 特徴的な生薬 | 麻黄、大黄、芒硝など | 柴胡、黄芩、大黄など | 防已、黄耆、白朮など |
| 注意点 | 胃腸が弱い方、高血圧、心臓病など | 胃腸が弱い方、下痢しやすい方 | 胃腸が弱い方 |
当院では、患者さまの体質を詳しく把握するため、問診で「お腹の触診」を重視しています。例えば、お腹に力があり、便秘がちで、脇腹が張っているような「実証」の患者さまには防風通聖散や大柴胡湯を検討します。一方で、水太りでむくみやすく、体力があまりない「虚証」の患者さまには防已黄耆湯が適していることが多いです。このように、漢方薬の選択は、個々の患者さまの「証」を見極めることが非常に重要なポイントになります。
漢方薬の「証」とは?
- 証(しょう)
- 漢方医学における診断概念の一つで、患者さまの体質や病状、病気の進行度合いなどを総合的に判断したものです。「実証(じっしょう)」は体力があり、病気に対する抵抗力が強い状態を指し、「虚証(きょしょう)」は体力がなく、病気に対する抵抗力が弱い状態を指します。漢方薬は、この「証」に基づいて選択されるため、同じ病名でも患者さまによって処方が異なることがあります。
防風通聖散の正しい使い方と服用方法
防風通聖散は、その効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小限に抑えるために、正しい方法で服用することが重要です。自己判断での服用は避け、必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。
一般的な服用方法
防風通聖散は、通常、成人で1日2〜3回、食前または食間に水またはぬるま湯で服用します。食前とは食事の30分〜1時間前、食間とは食事と食事の間(食後2時間程度)を指します。空腹時に服用することで、生薬の成分が吸収されやすくなると考えられています。
剤形には、エキス顆粒、錠剤などがあります。エキス顆粒は、お湯に溶かして飲むことで、生薬の香りや味を感じながら服用できますが、味が苦手な方は錠剤を選ぶと良いでしょう。どちらの剤形も、用法・用量を守って服用することが大切です。
服用時の注意点
- 用法・用量を守る: 決められた量よりも多く服用しても効果が増すわけではなく、副作用のリスクが高まります。
- 飲み忘れに注意: 毎日継続して服用することで、効果が安定しやすくなります。飲み忘れた場合は、次の服用時間まで間隔を空けてください。
- 体調の変化に注意: 服用中に体調に異変を感じた場合は、すぐに服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。
- 他の薬との併用: 他の医療用医薬品や市販薬、サプリメントなどを服用している場合は、必ず医師や薬剤師に伝えてください。
当院では、オンライン診療で防風通聖散を処方する際も、患者さまの現在の体調や服用中の薬を詳細に確認し、適切な服用方法を丁寧に説明しています。特に、初めて漢方薬を服用される方には、味や飲み方について不安がないかを確認し、継続しやすいようアドバイスを心がけています。
まとめ
防風通聖散は、お腹周りの脂肪が気になる方や便秘がちな方に用いられる漢方薬で、脂肪燃焼促進、便通改善、むくみ軽減などの効果が期待されます。18種類の生薬が複合的に作用し、体内のバランスを整えることで、肥満症やそれに伴う症状の改善を目指します。しかし、医薬品であるため副作用のリスクも存在し、体質や他の疾患、併用薬によっては服用に注意が必要です。効果を最大限に引き出し、安全に服用するためには、自己判断せず、必ず医師や薬剤師に相談し、指示に従うことが重要です。個々の患者さまの「証」を見極め、適切な漢方薬を選択することが、効果的な治療への第一歩となります。
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よくある質問(FAQ)
- Kazushi Uneda, Yuki Kawai, Takayuki Yamada et al.. Japanese traditional Kampo medicine bofutsushosan improves body mass index in participants with obesity: A systematic review and meta-analysis.. PloS one. 2022. PMID: 35417488. DOI: 10.1371/journal.pone.0266917
- Shinjiro Kobayashi. [Pharmacological Mechanisms of Boiogito and Bofutsushosan in Diabetes and Obesity Models].. Yakugaku zasshi : Journal of the Pharmaceutical Society of Japan. 2018. PMID: 29503432. DOI: 10.1248/yakushi.17-00168
- Kosuke Nakamichi, Tetsuhiro Yoshino, Masahiro Akiyama et al.. Three Kampo medicines-bofutsushosan, boiogito, and daisaikoto-have different effects on host fat accumulation and the intestinal microbiota in a high-fat-diet-induced mouse model of obesity.. Journal of natural medicines. 2025. PMID: 40563053. DOI: 10.1007/s11418-025-01917-3
- Kumiko Kato, Aika Matsushita, Shoji Suzuki et al.. Drug-induced cystitis caused by herbal medicine (Bofutsushosan).. Urology case reports. 2021. PMID: 33850729. DOI: 10.1016/j.eucr.2021.101644
- 防風通聖散 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)