ミヤBMとは?酪酸菌の整腸作用を医師が解説
- ✓ ミヤBMは酪酸菌製剤であり、腸内環境を改善し、消化器症状の緩和に寄与します。
- ✓ 酪酸菌は短鎖脂肪酸である酪酸を産生し、腸管バリア機能の強化や免疫調節作用が期待されます。
- ✓ 下痢や便秘、過敏性腸症候群(IBS)など幅広い症状に適用され、副作用は比較的少ないとされています。
ミヤBMとは?酪酸菌の基本と作用メカニズム

ミヤBMとは、生きた酪酸菌(Clostridium butyricum MIYAIRI 588株)を主成分とする医療用整腸剤です。この薬剤は、腸内細菌叢のバランスを整えることで、下痢や便秘などの消化器症状の改善を目指します。酪酸菌は、腸内で短鎖脂肪酸の一つである酪酸を産生する能力を持つことが特徴です。酪酸は、腸管上皮細胞の主要なエネルギー源となり、腸の健康維持に重要な役割を果たします[1]。
ミヤBMの作用メカニズムは多岐にわたります。まず、酪酸菌が腸内で増殖することで、病原菌の増殖を抑制し、腸内環境を改善します。また、酪酸の産生により、腸管のぜん動運動が正常化され、便通の改善に繋がります。さらに、酪酸は腸管のバリア機能を強化し、炎症を抑制する作用も報告されています[2]。当院では、特に抗生物質を服用中の患者さまに、腸内環境の悪化による下痢を予防する目的でミヤBMを処方することが多く、多くの患者さまが「抗生剤を飲んでもお腹の調子が悪くなりにくかった」とおっしゃるケースをよく経験します。
- 酪酸菌(Clostridium butyricum MIYAIRI 588株)
- ミヤBMの主成分であり、短鎖脂肪酸である酪酸を産生する能力を持つ細菌です。腸内環境の改善、腸管バリア機能の強化、免疫調節作用などが期待されます。
- 短鎖脂肪酸(Short-chain fatty acids, SCFAs)
- 腸内細菌が食物繊維を分解する際に産生される有機酸の総称で、主に酢酸、プロピオン酸、酪酸があります。これらは腸管上皮細胞のエネルギー源となり、腸の健康維持に不可欠な役割を果たします。
酪酸の生理機能とは?
酪酸は、腸管の健康維持に極めて重要な役割を担っています。主な生理機能は以下の通りです[1]。
- 腸管上皮細胞のエネルギー源: 酪酸は大腸の細胞にとって主要なエネルギー源であり、細胞の増殖と分化を促進します。これにより、傷ついた腸粘膜の修復や維持に貢献します。
- 腸管バリア機能の強化: 酪酸はタイトジャンクション(腸管細胞間の密着結合)の形成を促進し、腸管の透過性を低下させます。これにより、有害物質や病原菌が体内へ侵入するのを防ぎます。
- 抗炎症作用: 酪酸は免疫細胞に作用し、炎症性サイトカインの産生を抑制することで、腸管の炎症を和らげる効果が期待されます。
- 粘液産生の促進: 腸管の表面を覆う粘液層は、物理的なバリアとして機能します。酪酸はこの粘液の産生を促進し、腸管保護に寄与します。
ミヤBMはどのような症状に効果が期待できる?
ミヤBMは、その整腸作用と酪酸産生能により、様々な消化器症状の改善に寄与することが期待されています。主な適用症は、腸内菌叢の異常による諸症状の改善です。
下痢・便秘の改善
ミヤBMは、下痢と便秘の両方に効果が期待できる点が特徴です。下痢の場合は、腸内細菌叢の乱れによって増殖した悪玉菌を抑制し、腸の過剰な動きを落ち着かせます。便秘の場合は、酪酸が腸管のぜん動運動を促進し、便の水分量を調整することで、排便をスムーズにします。当院の患者さまの中には、長年下痢と便秘を繰り返す混合型過敏性腸症候群(IBS)で悩まれていましたが、ミヤBMを継続して服用することで「お腹の調子が安定してきた」と報告される方もいらっしゃいます。特に、ストレスや食生活の乱れで腸の調子を崩しやすい方には、ミヤBMが有効な選択肢の一つとなり得ます。
過敏性腸症候群(IBS)への適用
過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛や腹部の不快感を伴う下痢や便秘が慢性的に続く疾患で、腸内細菌叢の異常が病態に関与していると考えられています[3]。ミヤBMの酪酸菌は、腸内環境を整え、腸管の炎症を抑制する作用があるため、IBSの症状緩和に効果が期待されます。特に、下痢型IBSや混合型IBSの患者さまにおいて、腹痛の軽減や便通の安定に繋がる可能性があります。実際の診療では、IBSの診断を受けた患者さまに対して、食事指導や生活習慣の改善と併せてミヤBMを処方し、症状の経過を慎重に観察しています。多くの患者さまが、数週間から数ヶ月の服用で症状の改善を実感されています。
抗生物質関連下痢の予防
抗生物質は、体内の病原菌を殺す一方で、腸内の善玉菌も減少させてしまうことがあります。これにより、腸内細菌叢のバランスが崩れ、下痢を引き起こすことがあります(抗生物質関連下痢)[4]。ミヤBMは、抗生物質と併用することで、腸内細菌叢の乱れを抑制し、抗生物質関連下痢の発症リスクを低減する効果が期待されます。これは、酪酸菌が抗生物質に対して耐性を持つため、抗生物質服用中も腸内で生き残り、腸内環境の保護に寄与するためです。当院では、肺炎や尿路感染症などで抗生物質を処方する際には、ミヤBMを同時に処方し、下痢の予防に努めています。患者さまからは「抗生剤を飲んでもお腹の調子が安定していた」という声を聞くことが多く、予防効果を実感しています。
ミヤBMは医師の処方箋が必要な医療用医薬品です。自己判断での服用は避け、必ず医師の指示に従ってください。
ミヤBMの正しい使い方と注意点

ミヤBMは、適切な用法・用量を守って服用することが重要です。医師の指示に従い、効果を最大限に引き出し、安全に使用しましょう。
一般的な用法・用量
ミヤBMの一般的な用法・用量は、成人で1回1g(または2錠)を1日3回食後に経口投与することが多いです。ただし、症状や年齢によって適宜増減されることがあります。小児への投与も可能で、年齢に応じた用量が設定されます。当院では、患者さまの症状の程度や、他の薬剤との併用状況を考慮し、最適な用量を決定しています。例えば、症状が重い方には開始用量をやや多めに設定し、効果を見ながら調整することもあります。
- 錠剤: 1回2錠、1日3回食後
- 散剤: 1回1g、1日3回食後
散剤は水に溶かして服用することも可能です。味に癖がないため、小児や嚥下困難な患者さまにも比較的容易に服用いただけます。当院のオンライン診療では、患者さまの生活スタイルや服用しやすい剤形を確認し、適切な処方を行うよう心がけています。
服用上の注意点
ミヤBMは比較的安全性の高い薬剤ですが、いくつか注意すべき点があります。
- 保管方法: 高温多湿を避け、直射日光の当たらない涼しい場所で保管してください。
- 飲み忘れ: 飲み忘れた場合は、気づいた時点で服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は、1回分を飛ばして次の時間から服用してください。2回分を一度に服用することは避けてください。
- 効果発現までの期間: 整腸剤の効果は個人差があり、すぐに効果を実感できないこともあります。数日から数週間継続して服用することで、徐々に効果が現れることが多いです。
- 他の薬剤との併用: 他に服用している薬剤がある場合は、必ず医師や薬剤師に伝えてください。特に、免疫抑制剤を服用している場合は慎重な判断が必要です。
実際の診療では、初診時に「どのくらいで効果が出ますか?」と相談される患者さまも少なくありません。その際は、個人の体質や症状の重さによって差があることを説明し、焦らず継続して服用することの重要性をお伝えしています。また、処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。
ミヤBMの副作用と安全性について
ミヤBMは、生きた酪酸菌を成分とするため、比較的安全性の高い薬剤として知られています。しかし、どのような薬剤にも副作用のリスクはゼロではありません。
主な副作用と発現頻度
ミヤBMの副作用は非常に少なく、重篤な副作用の報告はほとんどありません。主な副作用としては、以下のような消化器症状が挙げられます[5]。
- 腹部膨満感
- 軽度の腹痛
- 吐き気
これらの症状は、服用開始直後に一時的に現れることがありますが、通常は軽度で自然に消失することが多いです。酪酸菌が腸内で活動を始める際に、ガスを産生したり、腸の動きが活発になったりすることで起こると考えられます。当院では、服用開始時に「お腹が張る感じがする」とおっしゃる方が稀にいらっしゃいますが、ほとんどの場合は数日で落ち着いています。
特定の患者層における注意
一般的に安全性が高いとされるミヤBMですが、特定の患者さまには慎重な投与が必要な場合があります。
- 免疫不全の患者さま: 重度の免疫不全状態にある患者さまでは、生菌製剤の投与には注意が必要です。
- 小児・高齢者: 小児や高齢者への投与は、年齢に応じた適切な用量を守り、経過を注意深く観察する必要があります。
- 妊娠中・授乳中の女性: 妊娠中や授乳中の女性への投与については、安全性に関する十分なデータがありません。ただし、一般的に整腸剤は安全とされていますが、医師と相談の上で判断することが重要です。
当院では、問診の際に患者さまの既往歴や現在の健康状態を詳しく伺い、ミヤBMの処方が適切であるかを慎重に判断しています。特に、免疫抑制剤を服用されている方や、重篤な基礎疾患をお持ちの方には、他の治療選択肢も視野に入れて検討することがあります。
他の整腸剤との違いは?

整腸剤には様々な種類があり、それぞれ異なる菌株を主成分としています。ミヤBMは酪酸菌を主成分としますが、乳酸菌やビフィズス菌を主成分とする整腸剤も多く存在します。これらの違いを理解することは、ご自身の症状に合った整腸剤を選ぶ上で役立ちます。
乳酸菌・ビフィズス菌製剤との比較
乳酸菌やビフィズス菌も腸内環境を整える善玉菌として知られていますが、酪酸菌とは異なる特徴を持っています。以下の表で主な違いを比較します。
| 項目 | ミヤBM(酪酸菌) | 乳酸菌製剤(例: ラックビー、ビオフェルミン) | ビフィズス菌製剤(例: ビフィズス菌製剤) |
|---|---|---|---|
| 主な菌種 | 酪酸菌(Clostridium butyricum MIYAIRI 588株) | 乳酸菌(Lactobacillus属、Streptococcus属など) | ビフィズス菌(Bifidobacterium属) |
| 主な代謝産物 | 酪酸(短鎖脂肪酸) | 乳酸 | 乳酸、酢酸 |
| 主な作用 | 腸管上皮細胞のエネルギー源、バリア機能強化、抗炎症作用 | 腸内pH低下、悪玉菌抑制、免疫賦活 | 腸内pH低下、悪玉菌抑制、便通改善 |
| 適用症状 | 下痢、便秘、IBS、抗生物質関連下痢 | 下痢、便秘、消化不良 | 便秘、下痢、腸内環境改善 |
このように、各菌種にはそれぞれの得意分野があります。酪酸菌は特に、腸管上皮細胞への直接的な栄養供給やバリア機能強化という点でユニークな役割を果たします[1]。そのため、腸の炎症が疑われる場合や、腸管バリア機能の低下が考えられる病態において、ミヤBMが選択されることが多いです。当院では、患者さまの症状や検査結果に基づいて、最適な整腸剤を選択しています。例えば、IBSの患者さまにはミヤBMを第一選択とすることが多いですが、他の菌種がより効果的な場合もありますので、腸内フローラ検査の結果なども参考にしながら、個別の治療計画を立てています。
プロバイオティクスとプレバイオティクス
整腸作用を持つ成分には、プロバイオティクスとプレバイオティクスがあります。
- プロバイオティクス: 生きた微生物(善玉菌)を摂取することで、腸内環境を改善するものです。ミヤBMの酪酸菌もこれに該当します。
- プレバイオティクス: 腸内の善玉菌の増殖を助ける難消化性成分(食物繊維やオリゴ糖など)です。これらを摂取することで、元々腸内にいる善玉菌を育てる効果が期待されます。
ミヤBMのようなプロバイオティクスは、直接的に善玉菌を補給することで迅速な効果が期待できる一方、プレバイオティクスは長期的な腸内環境の改善に寄与します。両者を組み合わせることで、より効果的な腸活が期待できる場合もあります。
まとめ
ミヤBMは、酪酸菌(Clostridium butyricum MIYAIRI 588株)を主成分とする医療用整腸剤であり、腸内環境の改善を通じて様々な消化器症状の緩和に貢献します。酪酸菌が産生する短鎖脂肪酸である酪酸は、腸管上皮細胞のエネルギー源となり、腸管バリア機能の強化や抗炎症作用など、腸の健康維持に不可欠な役割を果たします。下痢や便秘、過敏性腸症候群(IBS)、抗生物質関連下痢の予防など、幅広い症状に適用され、比較的安全性が高い薬剤です。服用に際しては、医師の指示に従い、適切な用法・用量を守ることが重要です。他の整腸剤との違いを理解し、ご自身の症状に合った治療法を選択するためにも、気になる症状がある場合は医療機関を受診し、専門医に相談することをお勧めします。
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よくある質問(FAQ)
- Koh, A., De Vadder, F., Kovatcheva-Datchary, P., & Bäckhed, F. (2016). From dietary fiber to host physiology: short-chain fatty acids as key bacterial metabolites. Cell, 165(6), 1332-1345.
- 宮入菌製剤の臨床応用. 日本臨床栄養学会雑誌, 2017, 39(1): 1-6.
- Ford, A. C., Lacy, B. E., Talley, N. J., et al. (2020). American College of Gastroenterology Monograph on the Management of Irritable Bowel Syndrome. The American Journal of Gastroenterology, 115(S1), S4-S24.
- Hempel, S., Newberry, S. J., Maher, Q. R., et al. (2012). Probiotics for the prevention and treatment of antibiotic-associated diarrhea: a systematic review and meta-analysis. JAMA, 307(18), 1959-1969.
- ミヤBM錠 添付文書. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構.