DUPIXENT PREGNANCY GUIDE

デュピクセントと妊娠・妊活・授乳
自己中止せず相談を

妊娠を考え始めた時、妊娠が分かった時、授乳を希望する時に、何を誰へ伝え、継続・変更をどう考えるかを整理します。

01

妊娠・妊活中のデュピクセント|最初にどうする?

「続けてよい」「すぐ中止」の二択ではなく、予定が分かった時点で情報をそろえます。

自己判断で中止せず、妊娠を考え始めた時点または妊娠判明時に、処方元と産婦人科へ相談してください。

日本の電子添文では、妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与するとされています。妊娠中の使用を一律に禁止する記載ではありませんが、誰にでも安全と断定できるほどの大規模データもまだありません。[1–3]

URGENT体調異常は産科へ

出血、強い腹痛、破水感、呼吸困難など妊娠・全身の緊急症状は、皮膚科の通常予約を待ちません。

CONTACT妊娠判明後は早めに連絡

最終投与日、妊娠週数、次回投与日、併用薬を処方元と産婦人科へ伝えます。

PLANNING妊活は予定段階で相談

皮膚症状が安定している時期に、継続・代替治療・外用薬を含む計画を立てます。

妊娠が分かったことだけを理由に、自己判断で永久中止しないでください

中止後にアトピーが再燃し、睡眠不足・掻破・感染・他薬の追加が必要になる場合があります。次回投与の判断は、処方元と産婦人科へ連絡したうえで個別に行います。

妊娠中のデュピクセント治療計画を皮膚科医と相談するイメージ
妊娠・妊活が分かったら、最終投与日と治療経過を確認し、皮膚科と産婦人科で継続可否を検討します。生成イメージであり、実在する患者さんの診療場面ではありません。

02

妊娠中の安全性はどこまで分かっている?

電子添文の正式な記載と、観察研究・系統的レビューを分けて読みます。

表は左右に動かして確認できます →

情報源 現在分かっていること 限界・診察での扱い
日本の電子添文 有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与。ヒトIgGは胎盤を通過することが知られています。 個別の妊娠週数、母体の疾患活動性、代替治療を確認します。
2025年メタ解析 観察研究115妊娠を解析し、流産・先天異常の明確な増加は示されませんでした。 症例数が限られ、研究間のばらつきが大きく、結論は確定的ではありません。
2025年比較コホート デュピルマブ曝露293例の比較で、母体の有害妊娠転帰増加は示されませんでした。 診療データを用いた後ろ向き研究で、因果関係を確定する研究ではありません。
2026年多施設研究 確認された曝露69妊娠で、全体の妊娠関連合併症の有意な増加は示されませんでした。 さらに大きい前向き研究と、出生後の長期追跡が必要です。
妊娠レジストリ 母体・出生児の転帰を比較する市販後研究が進められています。 研究完了や結果公表の時期を含め、情報は今後も更新されます。
「これまで重大なシグナルが明確でない」と「安全性が証明済み」は同じではありません
2025~2026年の研究は安心材料を増やしましたが、ランダム化比較試験ではなく、投与時期・基礎疾患・症例選択の影響を受けます。診察では研究結果だけでなく、治療を止めた場合の再燃、外用薬や他の全身治療へ変更した場合の負担も比較します。[5–8,16]
03

妊活を始める前に何を確認する?

休薬日だけを決めるのではなく、妊娠中も皮膚炎を管理できる計画を作ります。

DISEASE現在の重症度

皮疹、かゆみ、睡眠、感染、外用薬量、過去の中止時の再燃を確認します。

PLAN妊娠希望時期

いつ頃から妊活するか、不妊治療の予定、次回投与日を共有します。

MEDICINES全ての薬

外用薬、喘息薬、花粉症薬、市販薬、サプリメントを一緒に確認します。

TEAM連携先

産婦人科、喘息・鼻・眼の担当医と誰が治療全体を調整するか決めます。

日々診察を行う皮膚科医として、妊活相談では「薬を止める日」より先に再燃時の計画を確認します
患者さんから「何日前に止めれば安全ですか」と聞かれることがありますが、電子添文に一律の休薬期間は示されていません。まず、治療前の重症度、中止経験、外用薬で維持できる範囲、妊娠中に悪化した場合の受診先を確認し、妊娠してから治療が途切れないよう準備します。[11–14]
04

治療中に妊娠が分かったらどうする?

次回投与日だけでなく、妊娠週数・疾患活動性・併用薬を一緒に確認します。

STEP 1最終投与日を確認

用量、製剤、投与間隔、次回予定日を記録します。

STEP 2産婦人科へ共有

妊娠週数、出血・腹痛、既往妊娠、基礎疾患を確認します。

STEP 3皮膚症状を評価

皮疹、かゆみ、睡眠、感染、外用薬量を確認します。

STEP 4次回投与を判断

継続・延期・変更を処方元と産婦人科で個別に相談します。

出血、強い腹痛、破水感などは産婦人科の緊急相談を優先してください

妊娠に関する緊急症状は、皮膚科へ先に連絡することで対応が遅れないようにします。呼吸困難や重い過敏症など全身の緊急症状では救急要請を含めて判断してください。

05

妊娠中の継続・変更はどう判断する?

薬剤への曝露だけでなく、治療しないことの影響も比較します。

BENEFIT治療の利益

皮疹・かゆみ・睡眠・感染・喘息などがどの程度安定しているか。

UNCERTAINTY胎児への不確実性

妊娠中のデータ量、投与時期、胎盤移行を含めて説明します。

ALTERNATIVE代替治療

保湿、外用薬、光線療法などで管理可能か、過去の反応を確認します。

BURDEN変更の負担

再燃、追加受診、外用量、睡眠、感染、仕事・育児への影響を確認します。

ヒトIgGの胎盤通過は妊娠が進むほど増えることが知られますが、投与時期だけで継続可否を自動的に決めることはできません。母体の疾患コントロールと胎児への不確実性を同じ場で検討します。[2,5–10,17]

06

授乳中のデュピクセントはどう考える?

日本の電子添文と海外の授乳データを区別し、母体と赤ちゃんの両方を確認します。

LABEL日本の電子添文

治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮し、授乳継続または中止を検討します。ヒト乳汁への移行は不明です。

LACTMED海外データベース

分子が大きく乳汁移行と乳児の消化管吸収は少ないと推定され、少数の授乳例が報告されています。

CAUTIONより慎重に考える状況

出生直後、早産児、低出生体重児、赤ちゃんの体調不良、母体の他薬併用では小児科とも相談します。

授乳中の治療と母乳栄養について皮膚科医と相談するイメージ
授乳中は、母体の治療上の利益と母乳栄養の利益、赤ちゃんの月齢・早産の有無を合わせて検討します。生成イメージであり、実在する患者さんの診療場面ではありません。

授乳するか、治療するかの二者択一に急いでしないことが大切です
母乳栄養の希望、母体のアトピー重症度、睡眠と育児への影響、赤ちゃんの月齢・出生状況、他の治療選択肢を確認します。海外データは参考になりますが、日本の電子添文の「ヒト乳汁への移行は不明」という位置づけも明確に伝えます。[2,9,15]
07

男性のデュピクセント治療と妊活は?

男性側にも自己中止を求めるのではなく、データの限界と治療状況を共有します。

一律の休薬期間は記載なし

日本の電子添文に、男性側へ一律に求める休薬・避妊期間は記載されていません。

人でのデータは限定的

父親曝露を含む症例報告はありますが、妊孕性や出生児を評価する大規模研究ではありません。

別の原因も確認

妊娠しにくさは年齢、婦人科疾患、精液所見、生活習慣など複数要因を評価します。

妊活のために男性側が自己判断で治療を中断する必要があるとは限りません

処方元へ妊活予定を伝え、治療を止めた場合の再燃とデータの限界を共有してください。不妊の評価が必要な場合は、婦人科・泌尿器科の専門評価へつなぎます。[14]

08

出産後、赤ちゃんについて何を共有する?

出生後の小児科へ、薬剤名と妊娠中の投与時期を正確に伝えます。

妊娠中の最終投与日

投与時期と回数が分かる注射記録を産科・小児科へ共有します。

出生時の情報

在胎週数、出生体重、早産・低出生体重、出生後の体調を確認します。

授乳と母体治療

授乳希望、再開・継続時期、母体の他薬を小児科にも伝えます。

ワクチン予定

胎内曝露を共有し、種類と接種時期は小児科の判断に従います。

09

妊娠・妊活・授乳の相談で持参するもの

治療と妊娠の時系列が分かると、連携先で同じ情報を共有できます。

お薬手帳

外用薬、喘息薬、市販薬、サプリメントを含めて持参します。

注射記録

開始日、用量、投与間隔、最終投与日、次回予定日を確認します。

妊娠・妊活の予定

最終月経、妊娠週数、出産予定日、不妊治療の予定を共有します。

症状の記録

皮疹写真、かゆみ、睡眠、外用薬量、感染や喘息症状を伝えます。

診察で実際に確認している6項目
①妊娠希望時期または妊娠週数、②最終投与日と次回予定、③治療前・現在・中止時の重症度、④外用薬・喘息薬を含む全ての薬、⑤産婦人科・小児科へ共有できているか、⑥授乳希望と赤ちゃんの出生状況、を順番に確認します。日々診察を行う皮膚科医として、薬剤リスクだけでなく「治療を止めたときの負担」も同じ表で比較することを大切にしています。

予約はデュピクセントの継続・中止や特定の治療を保証するものではありません。産科的な緊急症状では通常予約を待たず、産婦人科・救急へ相談してください。

池袋サンシャイン通り皮膚科 院長 吉井恭平

MEDICAL SUPERVISOR

監修医師

吉井 恭平

池袋サンシャイン通り皮膚科 院長。デュピクセント治療中の妊娠・妊活・授乳相談では、治療前の重症度、最終投与日、外用薬・併用薬、産婦人科との共有状況を確認し、母体の疾患コントロールと妊娠・授乳に関する不確実性を一緒に整理します。

最終医学レビュー:2026年8月28日

10

デュピクセントと妊娠・妊活・授乳|よくある質問

継続・休薬、男性側、授乳、赤ちゃんへの共有について整理します。

妊娠中でもデュピクセントを使えますか?

日本の電子添文では、妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与するとされています。一律に継続・中止を決めず、皮膚症状、既治療、妊娠週数、代替治療を皮膚科と産婦人科で確認します。

治療中に妊娠が分かったら、次の注射を止めますか?

自己判断で永久中止や投与間隔変更をせず、処方元と産婦人科へ早めに連絡してください。最終投与日、妊娠週数、症状、外用薬・他科の薬を確認して次回投与を個別に判断します。

妊活を始める前にデュピクセントを中止する必要がありますか?

電子添文には妊活前の一律の休薬期間は記載されていません。一方、妊娠中の使用は利益と危険性の比較が必要です。妊娠を希望する時期が決まったら、治療が安定している段階で処方元へ相談してください。

デュピクセントには妊娠前の休薬期間がありますか?

日本の電子添文に、すべての患者さんへ適用する妊娠前の休薬期間は示されていません。薬の体内動態だけで機械的に決めず、アトピー再燃の可能性と妊娠計画を含めて医師と判断します。

デュピクセントは不妊の原因になりますか?

人で妊孕性への影響を十分に評価した大規模研究は限られます。現在の電子添文に不妊を代表的な副作用とする記載はありませんが、妊娠しにくさには年齢、婦人科疾患、男性側要因など多くの原因があるため、必要に応じて産婦人科・泌尿器科へ相談します。

男性がデュピクセント治療中でも妊活できますか?

電子添文には男性側に一律の休薬期間や避妊期間は記載されていません。ただし人でのデータは多くないため、治療状況と妊活予定を処方元へ伝え、自己判断で中断しないでください。

授乳中でもデュピクセントを使えますか?

電子添文では、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討するとされています。母乳への移行、赤ちゃんの月齢・早産の有無、母体の重症度を確認して判断します。

出産直後や早産児への授乳では注意が必要ですか?

新生児・早産児はより慎重な検討が必要です。国際的な授乳データベースでは母乳移行は少ないと推定されていますが、日本の電子添文ではヒト乳汁への移行は不明です。産科・小児科と処方元へ出産時期、最終投与日、授乳希望を共有してください。

胎内でデュピクセントに曝露した赤ちゃんのワクチンはどうしますか?

胎内曝露だけを理由に一律の接種延期が必要とは確立していませんが、妊娠中の最終投与日と出生後の状況を小児科へ必ず共有してください。接種可否や時期は、ワクチンの種類と赤ちゃんの状態を踏まえて小児科が判断します。

産婦人科には何を伝えればよいですか?

デュピクセントの適応疾患、製剤・用量、投与間隔、最終投与日、開始時期、アトピーの重症度、併用薬、喘息など他のアレルギー疾患を伝えます。お薬手帳や注射記録を持参すると共有しやすくなります。

中止してアトピーが悪化した場合はどうしますか?

保湿・外用薬の使用状況、感染や接触皮膚炎、睡眠への影響を再評価し、妊娠中に選択可能な治療を組み直します。自己判断で外用薬まで中止せず、皮膚科と産婦人科へ相談してください。

妊娠中も自己注射を続けてよいですか?

継続する方針となった場合も、投与日・部位・体調を記録し、妊娠経過と副作用を共有します。妊娠が分かった時点で一度処方元へ連絡し、次回投与の方針を確認してください。

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参考文献・公的資料

PMDAの2026年3月改訂電子添文、国内診療ガイドライン、2025~2026年の系統的レビュー・比較研究、授乳データベース、妊娠レジストリを確認しています。

  1. PMDA・医療用医薬品情報デュピクセント 医療用医薬品情報(電子添文・患者向医薬品ガイド)
  2. PMDA・電子添文デュピクセント皮下注 電子添文(2026年3月改訂・第14版)
  3. PMDA・患者向医薬品ガイドデュピクセント皮下注 患者向医薬品ガイド
  4. PubMed・国内診療ガイドラインSaeki H, et al. Clinical practice guidelines for the management of atopic dermatitis 2024. J Dermatol. 2025.
  5. PubMed・系統的レビュー/メタ解析Sánchez-García V, et al. Safety of Dupilumab Therapy for Atopic Dermatitis during Pregnancy. Acta Derm Venereol. 2025.
  6. PubMed・系統的レビューChopra CR, et al. Maternal, Fetal, and Labour Outcomes of Dupilumab Use During Pregnancy. J Cutan Med Surg. 2025.
  7. PubMed・比較コホートPreuß SL, et al. Dupilumab shows no elevated risk for maternal adverse pregnancy outcomes. JEADV. 2025.
  8. PubMed・多施設研究Safety of dupilumab use during pregnancy: A composite evaluation of pregnancy outcomes. 2026.
  9. PubMed・妊娠授乳症例集積Hong N, et al. Atopic dermatitis treated safely with dupilumab during pregnancy and lactation. Australas J Dermatol. 2024.
  10. PubMed・生物学的製剤レビューShakuntulla F, Chiarella SE. Safety of Biologics for Atopic Diseases During Pregnancy. J Allergy Clin Immunol Pract. 2022.
  11. PubMed・妊娠治療レビューImmunosuppressive and immunomodulating therapy for atopic dermatitis in pregnancy: an appraisal. 2024.
  12. PubMed・妊娠と妊孕性レビューAtopic Dermatitis: Fertility, Pregnancy, and Treatment Perspectives. 2023.
  13. PubMed・ETFADポジションペーパーEuropean Task Force on Atopic Dermatitis position paper: preconception, pregnancy and lactation. 2019.
  14. PubMed・父親/母親曝露症例集積Paternal and maternal use of dupilumab in patients with atopic dermatitis: a case series. 2021.
  15. NIH・LactMedDupilumab – Drugs and Lactation Database (LactMed), revised January 15, 2025.
  16. ClinicalTrials.gov・妊娠レジストリNCT04173442: Pregnancy and Infant Outcomes Following Dupilumab Exposure.
  17. FDA・添付文書DUPIXENT Prescribing Information, 2025.

本ページは一般的な医療情報であり、実際の診察、妊娠管理、個別の投与指示に代わるものではありません。自己判断で開始・休薬・中止・投与間隔変更をせず、皮膚科と産婦人科へ相談してください。